この地方でも、桜の花が九分通り咲いて来ました。
 桜の頃は、お天気の移り変わりが激しくて、雨の後には決まって強い春風が吹き荒れて、桜を散らしてしまうのではと、ハラハラしてしまいます。

 桜の花が咲く景色は、日本の学校や仕事のスタートの時期と重なって、夢や希望を祝福するかのような優しさに溢れているようにも思えます。

 今日、お仕事をしている老人ホームで、ご病気が大変重篤な方がいらっしゃって、今年はお花見どころか中庭の桜もまだご覧になっていないので、お部屋に桜を活けて欲しいと、ホーム長からお話がありました。

 中庭の桜の木は、高さが5メートル以上に育っていて下の方の枝は既に満開になっていました。その枝では、お部屋は暖かいので直ぐに散ってしまいます。
 脚立を中庭に運び、傘を逆さに持って柄のカーブにひっかけて、高い場所にいくらか残っている、蕾を付けた枝を何本も切りました。

 桜の幹を思わせるような大ぶりの花瓶に活け終わったところに、ちょうどご家族が面会にいらっしゃってとても喜んで下さいました。
 「桜を活けて下さったのよ。見える?」と、ご家族がメガネを掛けて差し上げると、ご病人は、「…見える…見える。」と何度も頷かれました。
 桜の生気を戴いて、少しでも心安らかな時を過ごされますように、沙羅はお祈りしています。
 
 又…、意味のあるお仕事をさせて戴きました。
 感謝で…胸が…一杯です。