4月15日は守り人の活動日でした。
今年度最初の活動日は、ほぼ終日雨でした。参加者7名(うち2名は午後から参加)。
4月と5月の守り人の活動日に合わせて、関西学院大学理工学部 藤先生の授業の一環で「海外理工学プログラム~SDGs Workshop~」を履修する学生さんが参加されることになり、この日は、先生と大学生 22名の参加がありました。
午前中は、守り人は5名でしたが、学生さんの参加で賑やかな2023年度のスタートとなりました。
まず、里山のまちづくり課の三谷課長から年度初めの挨拶がありました。
次に、藤先生にこの授業の目的などをお話しいただき、その後、学生さんに自己紹介をしていただきました。
お名前と、今ハマっていること、「里山」と聞いて思い浮かべるイメージも一言ずつお願いしました。
そもそも里山には行ったことがない、という学生さんが約10名。里山は、緑が多い、自然豊か、動植物がたくさんいる、懐かしい、静かで癒してくれる、日本昔ばなしに出てくるような自然などのイメージが半数以上でしたが、複数の方が、人が適度に手入れをしている、人と自然が共生しているというイメージを持たれていることから、「里山」について予習されてきていることも窺われました。
守り人さんには、学生さんに向けて、「皿池湿原や里山はこんなところ」という紹介と、今年度の活動で「やってみたいこと」などを発表してもらいました。
皿池湿原とその周辺では、他で見られない植物を見ることができること、それを楽しみに参加していることを話すフジイさん、ヨシダさん。ウエノさんもいろいろな生き物の名前を調べたり、間近で写真撮るのが楽しみだ、とのこと。マルさんはナンバンギセルの群生地をつくりたいと語られていました。
ヤマムラさんは、「いつもいろいろな発見があるけれど、生き物の名前だけ覚えることにはあまり意味がないと思っていて、それにまつわるエピソードも覚えると良い。例えば、この植物が好きなのはどんな虫であるとか。」という話に加えて、「里山には危険もある。マムシやスズメバチ、マダニもいる。」という注意喚起もされていました。
雨の日にはあまり見かけないスズメバチやマムシですが、晴れた日は、少なからず遭遇することがありますね。
人数が多いので、2班に分かれて、交代で行動しました。
一つの班はため池堰堤などの観察で、もう一つの班は、セトウチサンショウウオの産卵場所の観察です。
館を出てすぐの園路で、ヌルデの解説を始めたヤマムラさん。
「ヌルデはウルシ科の植物ですが、よほど敏感な人でないとかぶれることはないです。実はかぶれないので、食べることができて、しょっぱいので塩の代わりになります。」と、いきなり実を採ってパクリと味見。
「あまり味がせんな。実が古いからかな?」とのことでしたが、数人の学生さんが味見をして、「少ししょっぱい。」と話していました。
とはいえ、野生の植物は、毒のあるものもあるので、知識のある人や種類が確実に分かる場合のみ口にしてくださいね。
両生類が産卵場所に使用している水たまりは、昨年は干上がってしまい、産卵は観察できませんでした。
今年はいい感じの水たまりになっていて、セトウチサンショウウオの卵嚢(らんのう)が見つかりました。
卵嚢は透明なゼリー状の長細い袋になっています。よく見ると中の卵から孵った幼生を確認することができました。幼生はとても小さいけれど、すでにサンショウウオの姿をしています。
興味しんしん、スマホで写真を撮っている学生さんに「卵嚢をトレイに載せて、もっとよく観察しますか?」と守り人さんが尋ねましたが、「水から出すと可哀想。」という声が多数で、自然の状態のままで観察しました。
雨の中を移動して、ため池の堰堤へ。
ため池の堰堤には、オミナエシやワレモコウなど、多様な草原生の植物が生育しています。
集落の人たちが、草刈りや火入れなどをしているのは、ため池の水漏れなどを発見しやすいようにというのがありますが、その手入れがあるからこそ保たれている自然でもあります。何もしなければ、セイタカアワダチソウなどの背の高い草にたちまち覆われて、丈の低い植物が生長できなくなり、景観も悪くなります。
地面をよく見ると、ヒメハギが咲いていました。
毎年、たくさんワラビが生えてくるのも、草刈りのお陰ですね。
ウワミズザクラが咲いていました。
みなさんがよく知っているソメイヨシノなどのサクラとは見た目がずいぶん違いますが、これもサクラの仲間です。
午前の活動はここまで。
お昼休憩の後は、人と自然の博物館の石田先生の座学VTRを視聴する班と、湿原で木を伐る班に分かれて交代で活動しました。
雨雲の下で、コバノミツバツツジのピンクの花がひときわ映えます。
標柱のヒメタイコウチくんが、せっかく学生さんたちが訪ねて来てくれたのに、このお天気はとても残念だね、と言っているような…。
樹木の伐採班です。
湿原の植物にあまりダメージを与えないように、前の人の踏んだ後を歩いて行くので、一列になって入場行進のようです。
湿原の保全管理では、被陰や乾燥化を防ぐためにも、湿原内に侵入した樹木は伐採しています。
最初の1本は、斜めに生えた木で、枯れているので伐り易いはず、ということで、ノコギリで木を伐った経験がありますと、進んで手を挙げたお一人に伐ってもらいました。
伐った木はこんなふうに枝を払って、短く切って、目立たない場所に積んでおきますと、守り人さん。
もう1本も交代で伐ります。
角度をよく見て、上手くノコギリを入れないと、刃が挟まってだんだん伐りづらくなります。
伐った木は、湿原にできるだけダメージを与えない場所に運んで。
短く切ります。
守り人さんが、下に木を噛ませると切り易いですよ、とアドバイス。
片付けが終わったら、戻りましょう!
館に戻ったら、伐採してきた班がVTRを視聴します。
心地よい疲れで、眠くなりそうですが、そこは我慢です。
交代で、湿原に向かう学生のみなさん。
雨が小止みになっているうちに、作業を始めましょう。
途中、午後から参加のワタナベさんが、ため池に網をガサガサ入れて水生生物の調査をしていました。
一列行進で、湿原にやって来ました。
ちょっと太めのこの木を伐ります。
倒したい方向へ、ロープを張ってあります。
チョークで伐る場所をマーキングしますね。
まずは、倒したい側に切れ込み(「追い口」)を作ります。
ノコギリを真っすぐにあてて、斜めにならないように伐ってください。
疲れたら、交代しましょう。
ちょっと斜めになってないですか。
なかなか伐れませんね。
交代しましょう。
だいぶん伐れていますよ。
みんな頑張ってるね、とアマガエルくん。
藤先生にも汗をかきかき作業していただきました。
追い口ができたら、反対側から伐ります。
あともう少し。
倒れますよ~。
ミシミシ、ギィー、ドサッ。
うまく倒れました。
処理しやすい所へ運んで、
みんなで並んで玉切りしました。
目立たない場所へ運ぶのは、湿原の景観に配慮しているためでもあります。
本日の作業は終了です。
このように湿原や周辺の里山林の保全管理作業をすればするほど、そのぶん間伐材がたくさん積み上がっていきます。
間伐材は、杭やベンチ、木道づくりに利用していますが、学生さんたちには、もっと大量に上手く活用できる方法を考えて、ぜひ提案してください、とお願いしました。みなさんの多様な視点で、ユニークな、好循環が生まれるようなアイデアをお待ちしています!
藤先生、学生のみなさん、あいにくのお天気の中、慣れない初めての作業、お疲れ様でした。
守り人のみなさん、サポートをありがとうございました!
次回5月の活動日も、引き続き学生さんと一緒に湿原の観察や整備を行います。
学生さんたちが、どんなことを感じて、どんなふうにSDGsに繋げていかれるのか、楽しみですね。
守り人のみなさん、学生さんとお話するせっかくの機会ですので、ぜひご参加ください!お待ちしております。