7月17日は守り人の活動日でした。

ちょうどこの日、気象庁より「梅雨明けしたとみられる」という発表がされました。よく晴れて暑いですが、危険な暑さというほどでもなく、ときおり風が吹いて、気持ちの良い活動日となりました。

 

参加者は、守り人18名(関西学院大学の学生さん2名含む)。

草刈りのご協力で地元の農会の方6名が参加してくださいました。

 

 

また、兵庫県立人と自然の博物館の石田先生にもお越しいただき、昨年からのイノシシ被害の様子や保全の状況の確認とともに、アドバイスなども伺いました。

 

 

さらにこの日は、視察と交流を兼ねて、松尾湿原で活動されている「宝塚エコネット」さん14名の訪問がありました。

三田市などの担当者5名も含めると総勢40名超えとなりました。

 

本日の守り人の活動は、数名ずつに分かれて、各湿原や草原、観察路などの、伸び放題になっているササ類の刈取りを行います。

 

 

視察に来られた方々は、石田先生とベテラン守り人のトラタニさん、セキモトさんとともに、各湿原を見学していただきました。

石田先生の詳しい解説を、関学のソメヤ君、コバタケ君も一緒に聴くことができたので、湿原の成り立ちや湿原特有の生きもののことなど、いろいろ知ってもらう良い機会になりました。

 

 

まだサギソウの季節ではなく、初夏の花々は咲き終わったものも多いため、タチカモメヅルやカザグルマなど希少な植物は、ツルや葉っぱだけ観察していただきました。

湿生林は、サクラバハンノキとハンノキが混生していますが、「樹皮が異なるので(サクラバハンノキは割れ目がなく平滑)、すぐに見分けがつきますよ。」と、石田先生。

 

 

多様性草原で植栽した植物の周りを手刈り中の守り人さんたち。

その横を通って、B湿原へ向かいます。

 

 

B湿原はイノシシの掘り返しがかなりひどかった場所ですが、ずいぶん回復して、ほぼ見た目は元通りです。

手前で作業する守り人のナカザワさん。草刈り機では刈るのが難しい杭の足元を手刈りしています。

 

 

ハヤシさんも、同じ作業です。ササ類がかなり繁茂していますね。

 

 

こんなふうに、きれいに刈ってもらったおかげで、草刈り機作業はとても楽でした。いつもながら、丁寧な仕事です。

 

 

G湿原もイノシシ被害が大きかった場所ですが、湿原はモウセンゴケに覆われて、ケシンジュガヤも普通にたくさん生えています。

 

 

谷すじに、サワギキョウがたくさん生えていましたが、花の季節はまだ先なので、このような花が咲きますよ、とセキモトさんがスマホで花の写真をみなさんに見せながら解説されていました。

名前にキキョウと付いていますが、色は同じような青紫色でも、花の形はキキョウとは全く異なります(開花の様子は、またこのブログでご紹介します)。

 

 

ヤマドリゼンマイは氷河期の遺存植物といわれて、普通はもっと標高の高い明るい場所に生育しています。

このような環境(標高は高くなく、ちょっと暗め)で見られるのはとても珍しいと石田先生はいつもおっしゃいます。

 

 

一番広い面積のA湿原を見渡せる場所でひと休み。

 

 

その横で、草刈り作業に汗だくで勤しむ守り人のミオさん。

 

 

A湿原のため池近くまで行き、熱心に写真を撮り続ける石田先生。

イノシシ被害のひどかった場所も、かなり回復しているようです。

 

 

エコネットさんから「湿原の中の草刈りは全くしないのですか?」との質問がありました。

湿原の中央部以外、周縁部のヌマガヤや侵入した樹木については、秋の管理作業時に守り人さんたちが刈り取っています。

「昔は、集落の人が、里山林の木を伐採して燃料にしたり、定期的に湿原の草を刈り取って肥料にするなど、生活の中で利用していました。湿原を適切に保全するには、人の手で管理することが欠かせないのです。」と石田先生。

 

 

お昼のあとは、宝塚エコネットさんとの交流会となりました。

本日の感想や、取り組みのお話を聴かせていただきました。

松尾湿原は小さな湿原ですが、継続的に熱心な保全活動をされています。今月(7月)のハッチョウトンボの観察会では500匹を超える数を確認されたとのことです。ほかにも、いろいろな活動をされています。

詳しくは、宝塚エコネットさんのブログでぜひご確認ください。

 

 

宝塚エコネットさん、本日はお疲れ様でした。

湿原保全グループの仲間として、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

午後は石田先生への質問タイム。

気になる植物の疑問などを話すフジイさん。

 

 

J2での作業の経過や現在の様子を確認してもらい、今後の管理方法などのアドバイスをもらうヤマムラさん。

 

 

湿生林などで植物の観察もしました。

 

 

B湿原の回復力に感心しながら、何枚も写真を撮る石田先生。

 

 

午後のメインの活動は、ロープの張り直しです。

こんがらがったロープをきれいに整えてくれているのは、市の担当のムラモトさん。

 

 

キノコに覆われてしまった杭で、じっと動かないカナヘビ。

まるでフィギアのようです。

「まぁ、せっかくやし、撮っとこか。」とカメラを向ける人が何人も。

 

 

そんなキノコが生えて腐ってしまった杭は取り替えました。

 

 

草の生えている場所にロープを張って、道づくりをする守り人さんたち。

あえてラクではない、しんどいほうを選ぶなんて、かっこいい大人です。

 

 

スムーズに見学しやすい観察路となりました。

 

 

観察路に白いものがいますね。

もののけ姫に出てくる「こだま」のようなのは、何でしょうか。

 

 

シロオニタケ(?)のようです。

高いの、細いの、太っちょなど、みんなちがって面白いです。

 

 

ため池法面はきれいに刈り取られてました。

農会のみなさま、ご協力ありがとうございました!

 

 

多様性草原に、キキョウが陽を浴びて美しく咲いていました。

キキョウは、日当たりのいい草原に生える多年草ですが、草原という環境が減るとともに見られなくなって、環境省のレッドデータでは絶滅危惧種Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。

草原は人の手が入らないと樹木が侵入して林になってしまいます。

つまり、草刈りなど、人が手を加えることで維持されている場所、湿原と同じく草原も、いつも市の担当オカノさんがいうところの「半自然」という環境です。

 

右の花は雌しべ(花の中心)が開いていますが、左の花は閉じているのが分かりますか?これは自家受粉を避けるための仕組みで、雄しべが枯れてから雌しべが開くようになっています。

 

 

J 湿原のササ類も守り人さんらによって刈り取られてスッキリと、広々しました。

これで、観察会シーズンに向けて、準備はほぼ整いましたね。

 

本日、参加してくださったみなさま、お疲れ様でした!

盛りだくさんの内容でしたが、お陰さまで、充実した活動となりました。

多様性豊かなこの環境を、今後も協力しながら継続的に保全していきたいと思います。

守り人のみなさま、来月も、この場所でお待ちしております!