人はなにかしら欠けている いびつで歪んでいるから人間だからこそ私は私マイウェイ runas-fountain

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sarai runas-fountain最新作「炎の巫女/阿修羅王」そしてまた、どこかの時代で 全国書店・Amazon・楽天で発売中!

誰でも行ける!とらわれた世界から一歩踏み出すと新しい世界で新しい自分に会えるよ!sarai runas-fountain

『著作権は放棄しておりません。すべて「水月あす薫」に帰属します。
掲載の作品・記事等の転載・転用を禁じます』

 

あとがき

真田大八を主人公に物語を紡ぐ
しかし、徳川に知られないために、かえって残っているものがなく、かなり調べましたが、実際のところが、全くわかりませんでした

 

 

なぜ、伊達政宗は真田幸村の子供たちを助けたのか(どのような経緯で、助けることになったのか)

なぜ、片倉小十郎重綱は、大八を匿いながら、梅を継室にしたのか
(梅のことは史実にあり、他の子供らを匿っている、と、疑われるとは、思わはなかったのか)

大八は、ほんとうに幸村の忘れ形見なのか

八女は(名前は、わからない)なんで亡くなったのか
亡くなって当信寺に葬られたはずなのに、なぜ、墓石がないのか
(今は、どこにあるのか、わからない)

 

全く、史実として残っていないのです

「おもしろくない」「おもしろくできない」
ずっと思って来ました

 

この作品は2019~2021年頃に書いたのを、そのままアップしてみました

 

八女が、名前もわからず、亡くなったというだけ
これをどう表現すれば良いのか

 

その時、長女菊 五女梅 九女菖蒲だけが、わかっているので、まず名前をつけました

 

菊・桐・葵・千草・梅・桃・蘭・桜・菖蒲

(梅がいたら、桃と桜は、いるでしょう・・・的に)

 

その時、うかんだのです
「散るさくら咲くさくら」という題名

そして、

 

 

「大八 そなたは生きよ われは逝く だが墓はいらぬ 名もいらぬ

われは 大八の中に生きる 真田の名を 大八と共に守る

われはそなた そなたはわれなり 生きよ 大八 」

 

 

という桜の声が聞こえました

 

そして、亡くなった八女は「桜」とし
さらに桜は・・・

 

今、読んでみると、まだまだ習作です


でも、これって、主人公は、「左介(桜)」じゃない??

 

一代目左介~三代目左介まで、彼らの見た真田の子らの物語??

 

最初は、六女桃と、九女菖蒲の、語りにしようか、とも思っていたんですが・・・・

まだまだ、ですね

 

この先、また、考え直してみます

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました<m(__)m>

 

 

 

 

散るさくら 咲くさくら #51はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/n38fb4a73bc63


①登場人物1、こちら
https://note.com/mizukiasuka/n/n144672b274cd

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散るさくら 咲くさくら  最初からこちらから
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虹を紡ぐ人びと・千に咲く・白龍抄・ミチビキビトⅠ逝導師佐鴈・ミチビキビトⅡヒカリオン・駒草コマクサ・炎の巫女阿修羅王

 

 

 

 

 

かあさん、僕が帰らなくても何もなかったかのように生きていってね

 

 

伊達騒動が収束すると、辰信は江戸詰めの仕事も増えるようになった。
伊達家の江戸屋敷での仕事だ。

 

 

それは伊達家が、徳川の家臣を伊達屋敷に招いた時のことだ。
辰信は主の伊達忠宗から六文銭の裃をつけるよう言い渡された。

 

 

その日の客人は真田幸道。幸村の兄・信之の孫であり、現真田家当主であった。

幸道は居並ぶ伊達家の家臣たちの中に、六文銭の裃を見つけた。

 


幸道が驚いて伊達忠宗を見ると、忠宗はにやりと笑った。
そのまま、六文銭を身に着けた若者の前に腰を落とした。

 

「その紋、六文銭とお見受けいたした。わが真田家は代々六文銭を我が紋としている。そなたの家も、六文銭なのか」

辰信は震えた。忠宗様は知っていて六文銭の裃を身に着けさせたのだ。
今この時のために。

 

 

辰信は顔をあげた。
「片倉辰信(かたくらときのぶ)と申します。父は片倉守信。叔母に、片倉重長様の正室・梅がおります」

「梅様というのは、祖父・真田信之の弟、真田幸村殿の娘御であったな」

「はい」

 

 

「叔母ということは、そなたは幸村殿の忘れ形見か」
「はい。孫にございます」

真田幸道は大きくうなずいた。


「わたしは、幸村殿の兄の孫。であれば、われらは同じ真田の子孫ということか」

幸道は、辰信の手を取った。
「おじいさまも、こうして弟と手を取り合いたかったであろうな」
「幸道様」

 

「辰信殿。よう生きていてくださりました。
きっと祖父・信之も、そなたの祖父・幸村殿も、草葉の陰で喜んでおろうな」
「はい!」

幸道はそう言いながら、一筋の涙を流した。


辰信も胸が熱くなり、その涙に答えるように、いつのまにか自身の頬も濡れていた。

 

辰信は己が思い詰めていた真田復姓に、さらなる強い決意をかためるのだった。

 ーーーー

 

大八の悲願だった真田復姓。
それが叶ったのは、大八が真田から片倉に改めてから七十二年後。辰信が五十七歳の時だった。
まさに幸村没後九十七年もの時が過ぎていた。

 

 

「辰信様、真田復姓、恐悦至極に存じます」
「左介。長きに渡り大儀。そなたの父が逝って何年になる?」

 

 

「はい。もう二十年になります」
「そうか。二代目にも此度のことを知らせたかったな」

 

 

 左介は三代目となり、今なお、辰信を、仙台真田を支え続けていた。 

 

 おわり

 

散るさくら 咲くさくら #52  あとがき こちら

散るさくら 咲くさくら #50はこちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

 

 

また、蔵王町矢附と曲竹に領地を与えられ、三百六十石を治めることとなった。大八は矢附に屋敷を構え、伊達家を支える家臣団の一人となった。

 

蔵王町は白石城にも近く、姉・梅とも、その夫・重綱とも交流しやすい場所だったので、姉弟は生涯お互いを思いあい、支えあって生き抜くことができた。


その嫡男であった辰信(ときのぶ)は、幼名を片倉沖之介(おきのすけ)という。

沖之介は、両親はもちろん、主筋の片倉家でも二代目正室・梅の甥ということもあり、大切に育てられた。沖之介が左介を知るのも、まだ幼い子供の頃であった。

 


真田の忍びは、かつては真田家を支えるために多数いたらしい。
しかし関ヶ原の合戦以降、徳川についた幸村の兄・信之のもとに残った者と、九度山に配流される真田昌幸・幸村親子についていった者に別れた。

 

そして、大坂の陣の後は、左介一人になったという。
その左介は、幸村と同い年だったらしいが、今は二代目左介に受け継がれて、沖之介いや、片倉辰信を常に密かに支えている。

 

幸村から連綿と連なる真田の忍びは、今も主家を守っているのだ。
 
守信は、後に伊達騒動と呼ばれる伊達藩をゆるがす事件とかかわっていた。収束させるべく尽力していたのだ。

 

しかし、解決する前に亡くなった。そして、結果、伊達家の代々の家臣、原田甲斐は、江戸で伊達家の重臣を殺して、自らも果てた。

江戸でのことはすでに仙台まで伝わっているであろう。
仙台城内の混乱は必至。

 

辰信はその渦中に登城せねばならない。ふっと力が抜けて、ついため息がもれた。


父が亡くなってすぐの大役。大事件だ。
若い自分がどこまでできるのだろう。梅様に相談したら、何かいい知恵を授けてくれるだろうか。


「梅様に言っても、ご自分で考えるよう言われるだけでございますよ」
「左介?声が出ていたか」


「いえ、心細い時は、つい梅様を頼りたくなります。父上が亡くなったばかりですから、よくわかります」


左介、心を読んだか。なぜだろう。子供の頃から、沖之介だった時から、左介にはお見通しだ。なんでも見抜かれる。

「それは、かいかぶりでございます。わからない時もございます」
「左介、何も言っておらぬ」


「失礼いたしました。沖之介様が幼い時からご一緒におりますので、ついつい、わかってしまう時もあるのでございます」
こいつ・・・と思い、辰信は思い直した。

 

左介は忠実で手堅い。決して表に現れることもなく、ただひたすら忠義をつくしてくれる。
誰にほめられるわけでもなく、誰に認められるわけでもないのに、ただ尽くしてくれる。

 

亡き父・守信や叔母の梅も全幅の信頼を寄せていた。
裏切らないと、確信できる。

 

もともと白石にいたわけでもなく、もともと伊達家の家臣でもなく、もともと片倉家の親戚筋でもない。
その辰信が、絶対の信頼を寄せられるのは、もしかしたら左介ひとりかもしれない。


「左介、明日の登城の準備がある。屋敷に帰る」
「は」

 


散るさくら 咲くさくら#51へ続く

散るさくら 咲くさくら #49こちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

片倉辰信(ときのぶ) 後の話

片倉辰信は領地の蔵王町矢附に戻ると、早速自分の領地の見分に出かけた。江戸に長く滞在したので、領地を回るのは久しぶりだった。

 

朝早くから馬に乗り、あちこちと足を運び、やがて青麻(あおそ)山を臨む広々とした田畑の途中で馬を降りた。
「よい」

供の者を抑えて、足を進ませ眺める。さわさわと草が動いた。
「左介か」
「は」
「仙台の様子は」
明日は登城せねばならない。まだ仙台は混乱の中にあるだろう。

 

ーーーー
 
辰信は先般、父・片倉守信を失った。大坂の陣の戦いから幼い時に遠く奥州まで逃げてきた父・守信は、とうとう真田を名乗ることはできなかった。

 

亡くなった父から、そして叔母でもあり白石城主だった先代片倉小十郎重長室の梅から、真田幸村の直系の子孫であることは、何度となく聞いていた。

(重綱は後年「片倉小十郎重長」を名乗っている。四代将軍徳川家綱をはばかって、「綱」という字を変えて「重長」とした。)


辰信には祖父にあたる幸村の人間らしい温かい人柄も、勇猛果敢に戦った大坂の陣の雄姿も、耳にこびりつくほど聞かされた。


そして、伊達家と片倉家から受け続けている大恩も、忘れてはいけないことだった。

 

守信の悲願であった真田の姓。偽りの家系図を作ってでも真田を名乗りたいという強い思い、それを受け継ぎ守っていかなければならない。
 
ーー


 父・真田大八は、白石城主片倉小十郎重綱に助けられ、白石城外で片倉粂之助と名を変えて養育された。


長じて片倉守信を名乗り、政宗の死後、二代目伊達忠宗に召し抱えられた。その時、真田守信を名乗るはずだった。

はずだった、というのは徳川幕府より、幸村の遺児ではないかと疑われたからだ。

 


伊達家は以前から用意していたニセの家系図を幕府に提出した。

その家系図では、大八は真田信伊の孫、信伊の息子・政信の息子ということになっていた。

 
真田信伊は幸村の父・真田昌幸の弟。つまり、大八は幸村の叔父の孫、ということになる。

そのニセの家系図で幕府は納得しなかった。そのため、大八は片倉姓にもどり、片倉守信として伊達家に仕えることになった。

ーーーー
 


また、蔵王町矢附と曲竹に領地を与えられ、三百六十石を治めることとなった。
大八は矢附に屋敷を構え、伊達家を支える家臣団の一人となった。

 

蔵王町は白石城にも近く、姉・梅とも、その夫・重綱とも交流しやすい場所だったので、姉弟は生涯お互いを思いあい、支えあって生き抜くことができた。


その嫡男であった辰信(ときのぶ)は、幼名を片倉沖之介(おきのすけ)という。

 

 

散るさくら 咲くさくら#50へ続く

散るさくら 咲くさくら #48こちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

 

笑わなくていいです

 

もう頑張らないで

 

頑張らなくていいです

by鳥飼


母を失った真琴へ

 

「終幕のロンドー二度と会えないあなたへー」

 

 

 

 

痛みを抱えていない人間など、存在しない

人それぞれ、他人(ひと)にはわからない痛みがある

 

失ったことでつらい思いを抱える人びと

 

その物語も、もうすぐ終幕を迎える

 

 

 

それにしても、草彅は、こういうのを演じさせたら、天下一品だなぁ

 

彼の演技力を疑う者はいないが、これからも、ドラマに限らず、
映画・舞台と、彼にしかできない芝居を観せてほしい

 

歌も踊りもOKなんだから、ミュージカルも、やってほしいなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

「大八には苦労をかけた。私の力不足であったな」
「梅様。それは違います。時が、時が満ちていなかったのです。
すべてはご公儀次第。伊達様も、ご公儀の動きを見ながら、慎重に動いていらしたのでしょう。
真田幸村の血筋とわかれば、元も子もありませんから」


「思えばわれら、やはり運がよかったのじゃな。あの大坂からの逃避行。
我妻佐渡も西村孫之進も命がけで守ってくれた。
重綱様も、伊達様も、危ない橋を渡っても、われらをかくまい、守り続けてくれた」
「ありがたいことでございます」


「私は子は生めなかった。それでも重綱様のおかげで、景長を育てることができた。
そして、妹も弟も、見守りながらこの白石で生き続けることができた」
「すべての妹弟が、梅様にありがたく思っております」

梅が遠い目をしてうなずくと、影の口調が変わった。。
「梅様。いえ、梅姉上。本日何十年かぶりに姉と呼ばせていただけるなら、姉上にお伝えしたいことがあります。
大八が亡くなった時のことでございます」

 

ーーーーー
 
 
 晩年、片倉守信は伊達騒動に巻き込まれ、その始末に尽力するが、それらがすべて終息する前に姉・梅より早くこの世を去ることになる。

最期の時、守信の近くには左介がいた。
「左介、おまえは誰だ。途中で入れ替わっただろう」
「ご存知でしたか。わたしは左介の息子です。父から全てを受け継いだ二代目です」

「桜・・・だろう」
 影はためらっているのか動かない。
「最期だ。話せ」

 「・・・わたしは左介に命を救われ、男として命をかけられるものを受け継ぎました。
大八を守ることは真田を守ること」

 「入れ替わったと感じた時から、影であった左介が、より近く分身のように感じていた。
そのようなこと双子の桜しかできない・・・

 

桜の分も生きられただろうか。わたしは真田を名乗れなかった」

「それはご公儀から真田の血を守るため。辰信様がおります。梅姉上も。
そして、わたしは辰信様の影となります。
この命を賭して生きるものがある。わたしもわたしを生きられた」 
 
守信は微笑み、静かに眼を閉じた。

ーーー
 
 
「そうか、大八が。やはり双子じゃのう」
梅は微笑み、そっと目頭をぬぐった。

 

散るさくら 咲くさくら#49へ続く

散るさくら 咲くさくら #47こちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

思えば大八の元服も士官も、人よりずっと遅かった。あの頃は焦っていた。重綱に何度も待てと言われた。

ーーーー

梅は、影と、二代目左介(八女桜)と話している。

 「桜、昔語りをできるのはそなただけじゃ。
あの大坂から逃げてきた時、泣いてばかりの大八に、大八の身代わりになると言った桜。重綱様は桜の度胸に感服しておった」

 「大八は、追ってくる者に気づいて泣いていたのですよ。
あれは、父の初代左介が護衛のためについてきていたのです」
 「大八が気づいていたと。桜、そなたは」

 「私は初代左介であることを知っていました。
幼い時から九度山で遊んでもらっていたので、左介の気配を感じていたのです」
 「大八が・・・。そうであったか。
桜、そなたは左介とはずっとなじみであったか」
 「はい」
 
ーーーーー

 桜がヤヒロと呼ばれ初代左介からの修行が始まった頃であった。
イノシシに襲われた農民の娘を助けたことがあった。

山での修行中、時折見かける娘と話すようになった。


やがて娘は武家屋敷に奉公に行くという。
 「農民には名誉なことだ。家では米をもらえて、自分も飢えない」
 という娘だったが、

たまたま一緒にいた幼い弟が「なぐさみものになるから助けて!」と桜にすがった。


しかし、桜には何もできなかった。貧しい者を、娘を止めても貧しさは増すだけ、何もできない無力な自分を憂えた。

 

ーーーーー
 「お鈴といったな、あの娘」
 その思いが、後年三代目左介となる少年を助けることへとつながっていった。


 初代左介に思いを語ると、左介は桜の気持ちを受け止めてくれた。
その桜の思いは、いつか左介の心に留まった。

 

やがて、なかなか元服できない、仕官できない大八に、初代左介は貧しい少女の話を語ることとなる。
運命を呪いたくなることもあるだろう。しかし生きるためにはどうしようもない。助けられないのだ。



 「人はいろいろだな。わたしなぞ、まだいいほうかもしれない。
まだまだ忍耐が足りないようだ」
 大八は心を入れ替え、いつか元服し仕官するために、勉学にいそしむのだった。
 
ーーーー

「そうか。左介がのう。大八も焦っておったか。それはそうだ。
私たちに心配かけまいと我慢しておったのだの。しかし、お鈴とは」

「はい、あのお鈴でございます。
その時は大八のところに奉公に行ったとは知らなかったのです。

 

父・左介がたとえ話で大八に話したのですが、かなり心にしみたのか、それからは愚痴ることも、荒れることもなくなったと聞いております」

 

散るさくら 咲くさくら#48へ続く

散るさくら 咲くさくら #46こちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

五女 梅 片倉小十郎重綱継室

片倉小十郎重綱室・梅。
真田幸村五女・梅は、妹の幸村九女菖蒲(あやめ)と供に、田村家墓所を訪れていた。


菖蒲の嫁ぎ先の墓所に名を刻まぬ墓石を建てて、父・幸村の墓としたのだ。梅も月心院という寺を作り、幸村を弔っていた。

 

姉妹で、父を弔えるのはありがたいことだ。
それもこれも、夫・重綱、そして主家の伊達家のおかげだ。

「われらこうして生き抜いて、今があるのは片倉、伊達の両家のおかげじゃ。ゆめゆめ忘れてはならぬぞ」
「はい、姉上」


西村孫之進が、「大八が京の石打ちで死んだ」という噂を流す旅路で、菖蒲を見つけて連れてきてくれた。
もう会えないと思っていた妹に会えた。こんなうれしいことはない。

 

 

しかし、一緒にいた母の竹林院、姉の千草は一緒に来なかった。
もう、母には二度と会えないだろう。

せめて、母と一緒にいた菖蒲から話が聞ける、母の大坂の陣の後の様子が少しでもわかるだけでも、ありがたいと思った。

 

ーーーー

それにしてもわれら兄妹。それぞれ生き延びることができた。
亡くなったのは大坂城で逝った兄・大助、早世した者もいるが。
兄妹ほとんどが生き延びることができた。

 

 

その中でも一男五女を助けてくれた片倉家、そして伊達家は命の恩人だ。
伊達家には大恩を感じている。 
 
どうして伊達家が助けてくれたのか、夫婦となった後、夫・重綱から話を聞いた。
それでも、その時の短い会話で複数の子供を、さらに大助亡き後、跡取りとなる大八まで助けてくれるために、ニセの家系図を作ってまで守ってくれるとは。


ーーー

 

そのニセ家系図には少し物語もついていた。

幸村の叔父信伊(のぶただ)の息子・真田政信は、長兄が家を継いだ後いったん他家に仕官した。

 


大八はその時に生まれた子供だが、故あって大八の代で仕官した家から出ることとなり、旅に出た。

噂でみちのく伊達藩に親戚の幸村の娘がいると聞いて、片倉家を頼ってきた。


片倉家では梅が正室となっていたので、梅のまた従兄弟ということで、縁を大切にする重綱が、大八の仕官を許し、片倉守信という名を与えた、と。


ーーーー


この家系図を幕府に提出して、片倉守信が『真田』を名乗れないか、幕府と交渉した。
信伊の孫としてであっても、真田を名乗らせたい。強い思いがあった。 

しかし、結果として幕府に幸村の忘れ形見が生きているのではないか、との疑念をもたせることとなった。
真田を名乗りたいが無理は禁物。


生きてさえいれば、また機会はめぐって来る。

重綱は大八に言い聞かせ、片倉守信のまま伊達家で仕えることとなった。


伊達や片倉に、真田にそこまでの義理があるとは思えなかった。

しかも、その危ない橋を、主家の命令とはいえ、貫き助けてくれた重綱。
いずれこの伊達者には驚かされる。
 

逃げている時は、生きることが父の遺言であり、父の恩義に報いることだと思っていた。
しかし、今は、自分たちの気持ちばかりでなく、
約束を守った伊達家、その約束を遂行し成し遂げた重綱に、
今なお守り続けてくれている伊達家と片倉家に、感謝と驚きを禁じ得ない。

 

 

散るさくら 咲くさくら#47へ続く

散るさくら 咲くさくら #45こちら
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

 

 

「大八、すまぬことをした。重綱様がそなたの気持ちも聞かずに」
 梅が所用と称して城を抜け出し、大八の屋敷に来たのは、それから何日か後だった。


「結局、重綱様がそなたに贈った女たちは、そのまま帰してしまったそうだな」
「はい。お心遣いに答えられず、申し訳ありませんでした」

 頭を下げた大八の後ろから、障子の戸が開いて、お鈴が入ってきた。そして梅にお茶を差し出した。
「そなた、名は何という」
 「鈴と申します」

 「姉上、お鈴はここに来て、そろそろ十年になります。何もかもわかって世話をしてくれるので、とても助かります」
 お鈴は恥ずかしそうに顔を赤らめると、大八は優しく笑った。


「ほほう」
 梅は二人を交互に見て、悟ったようにうなずいた。
 「これは重綱様も、余計なことだったな。うまく、話しておこう」
 
ーーーーーーー


真田大八が片倉粂之助から元服して片倉守信となる時が来た。

今なお我妻佐渡が常に大八を守り、西村孫之進は全国をまわって噂を流し続けている。
大八は、京都の石打ちで誤って石つぶてにあたり亡くなった
と。


そんな大八に伊達家として召し抱えると、二代目伊達忠宗のお達しがあったのだ。
政宗が保護した真田幸村の忘れ形見を、忠宗はきちんと受け継いでいたのだ。

その時、あらかじめ用意していた大八のニセの家系図を幕府に提出した。

幸村の父・真田昌幸には真田信伊(のぶただ)という弟がいた。
歳も離れ側室の子であったためか、信伊は早くから徳川の家臣となっていた。

当然関ヶ原の合戦も、大坂の陣も、徳川方となり、幸村と対峙している。

さらに大坂の陣の際、信伊は幸村を徳川方に抜けさせるため、大坂城まで出向いて幸村の説得をしている。

しかし、幸村の決意は固かった。それが大坂の陣の結果と繋がった。


その信伊(のぶただ)を家系図上で利用させてもらうことにした。

信伊には男子が二人いるが、これを三人とし、もうひとり真田政信(さなだまさのぶ)という息子がいることにした。

大八は政信(まさのぶ)の子供、つまり大八は真田信伊(のぶただ)の孫とした。

信伊が昌幸の弟、信伊は幸村の叔父(信伊の息子・政信は幸村のいとこ)。
したがって、大八は幸村の叔父の孫とした、系図だった。

 

 

散るさくら 咲くさくら#46へ続く

散るさくら 咲くさくら #44こちら
https://note.com/mizukiasuka/n/n54e25ca2c98b




①登場人物1、こちら
https://note.com/mizukiasuka/n/n144672b274cd

②登場人物2こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nbad6d4943ce3

散るさくら 咲くさくら  最初からこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nd308ef4b0d89

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない

 

 

 

 

 

「重綱様、梅姉上。お元気でなによりでございます」
久しぶりの白石城。父のように慕う重綱も、母代わりの梅も、いつも会えるわけではない。だからこそ、たまの登城は心がはずむ。

「大八、久しいのう。姉はいつも大八を思うておったぞ」
梅は満面の笑みを浮かべている。

「大八、元気そうじゃの。そろそろ元服をせねばいかんが、いかんせん。
士官がかなわぬではどうにもならん。
大坂の陣からやっと十五年じゃ。時間をくれないか」
重綱の問いに大きくうなずき、返事をする大八。


「ありがとうございます。重綱様のご厚情、常日頃より深く感謝しております。このうえは、いつまでなりとお待ちしましょう」
「すまぬのう。
士官と元服はさておき、大八も大人なのじゃから、娶るのはまだとしても、このままではいかんのう」

「重綱様、大八はまだ子供でございます」
「何を言う、梅。そなたとて十九の歳には嫁いできたではないか」

「それはそうですが、元服もせず、そのようなことばかり」
「梅、男と女は違うのじゃ」
大八は、重綱・梅夫婦が何を言ってるのか、はかりかねた。

「大八、そなた好きな女子はおらんのか」
「は?何をおおせです」
「そちに好きな女子がいるのであらば・・」
「重綱様、お待ちください。元服前には早うございます」

重綱と梅のちぐはぐな会話。
それから屋敷に戻ってしばらくして、重綱の贈り物と称して、酒と馳走と、美しき女子たちが届けられた。

 

酒はたしなむ程度と教えられて育った大八だったが、初めての深酒は大八の意識を失わせた。
「目が覚めましたか」
 酒席でひときわ美しく、大八に酌をしていた女が床の傍らにいた。

「何をしている」
「お目覚め、お待ちしておりました」
女はそう言うとしなだれかかってきた。

「なにを!」 
 大八は女から逃げて屋敷の庭の井戸のそばでうずくまっていた。

そこに、井戸から水を汲み、柄杓を差し出す者があった。
大八はその水をごくごく飲みほした。顔を上げるとお鈴がいた。

「お鈴」
「く・・・粂之助・・・様?」
大八は先ほどの女がそうしたように、お鈴を抱きしめるとそのまま自分の激情に身を任せた。

 

 

散るさくら 咲くさくら#45へ続く

散るさくら 咲くさくら #43こちら
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①登場人物1、こちら
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②登場人物2こちらから
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私は泣いていない。
理屈で納得していても感情では納得していない