アラカンの大阪人にとっては、まさにリアルタイムで見てきた芸能人のひとり。訃報の報道では作曲家キダ・タロー「浪花のモーツァルト」として紹介されていてるのが多いけれど、私らにしたらもっと身近なタレント性の強い存在かな。

 

「フレッシュ九時半キダタローです」は長らく続いた朝のラジオ番組。好きでよく聞いていた。他に、ヤンリクの「ミキサー完備スタジオ貸します」は深夜ラジオの人気コーナーだった。アマチュアミュージシャンが応募し、キダ・タロー氏の前でパフォーマンスを評価してもらう公開録音のコーナー。今ウィキペディアで調べたら、デビュー前の河島英五や庄野真代が出演したらしい。

 

その「ミキサー完備スタジオ貸します」にわが夫も若かりしころ出演している。ギター一本で自作の曲を披露。キダ先生から結構なお褒めのコトバをもらっていた。私と知り合う前の話で、付き合うようになってから録音テープで聴かせてもらった。ちなみに一緒に出演したもう一組の女性デュオには辛辣なコメントだった。

 

当時私たちは数ヶ月に一回会えるかどうかの、いわゆる遠距離恋愛中だった。昭和の家電☎︎しかない時代、電話代は距離が遠いほどかさむので、そうそう長話はできない。しばらくかかってこないと不安になってこちらからかける。受話器の向こうから聞こえる声に胸ときめかせ、離れた場所にいる人とつながりを感じることができる貴重な時間だった。録音テープに入っていた彼の曲は、まさしくそんな電話にまつわる切ない想いを歌ったものだった。

 

キダ・タローさんの訃報にふれ、かつての自分たちを懐かしく思い出した。