こんにちは、Sarahです。

大手住宅メーカー勤務の
インテリアコーディネーターです。

住空間を通して
人を幸せにすることが
インテリアコーディネーターの仕事です。

インテリアに興味があり
自宅をお洒落にしたいと思う方に
インテリアのプロとして
ちょっとしたコツを紹介していきます。

〜『光の館House of Light』
                                  (新潟県)〜



「光の館 House of Light」は光のアーティストである
ジェームズ・タレルの作品です。

タレルの作品は昨年、香川県の直島にある地中美術館で鑑賞しました。

「光の中にいる」ことを体感する「オープンスカイ」
大理石の椅子に腰掛けて、漆喰天井に綺麗に切り取られた空の色を楽しむ体験型のアート作品でした。

今回訪れた「光の館」は宿泊できる美術作品です。
タレルはこの作品を、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の中から見出したと言われています。

12.5畳の和室 『Outside in』
可動式の屋根を開けると空が天井に現れます。

綺麗に切り取られた青空。
11月の冷んやりとした風を受け止めながら
流れゆく雲を眺めることができます。

畳の上に横になり、天井を見上げます。
いぐさ畳の芳醇な香りに包まれて、
天井の中央にぽっかりと空いた青空を眺めながら
プログラムが始まるのを待ちます。

日没の16時38分、天井に映し出される色が
人間の知覚に作用し、空の色の変化をより印象的なものへと導いてくれる体験型プログラムが始まりました。
和室の天井が濃いピンク色に変化してきました。

私たちの脳は錯覚で色を認識してしまい、
本来青である空の色が緑やグレー、ゴールドなどに
次から次へと変換されていくという不思議な現象を
体験しました。



全て同じ空です。

人とは違って、カメラは錯覚することがないため、
正確に色を記録することはできませんでした。

すっかり日が暮れて星空を期待しましたが
分厚い雲に覆われたグレイッシュな空が現れました。
1時間半後、プログラムは終了しました。

右手が浴室です。
天井面に照明器具は一切ありません。


食事の後、一階にある浴室『Light Bath』に行きました。浴槽に仕込まれた光ファイバー照明が幻想的な雰囲気を醸し出しています。

暗闇の中で感覚が研ぎ澄まされ、本来見えないものが
見えてくると聞きましたが、私自身は慣れることができませんでした。

ただ、シャンプーとコンディショナー、ボディソープの判別が難しい浴室で髪を洗うことよりも大切なことはこの空間、この時間を楽しむことだと理解しました。
 
新月のため、月明かりもない浴室でのひと時、
のんびりと揺らめく水面を眺めながら
昔の人はこんな環境で多少の不自由も受け入れて
過ごしていたことに思いを馳せました。


紅葉が美しい新潟県十日町。
翌朝、日の出時間の5時18分再び屋根を開けました。
雨雲の隙間から青空がほんの少しだけ覗いています。
小雨が顔に当たったため、慌てて天井を閉じました。

『センス』とは『セオリー』を学ぶことだと思います。今回はジェームズタレルの作品から様々な光を
学びました。また谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』という
言葉の意味を体感することができました。

日本の住宅は過剰に明るく設えられていると感じます。足るを知ることも大切だと教えられました。

『陰翳礼讃』
あらためて奥深い言葉です。