こんにちは、Sarahです。

住空間を通して
人を幸せにする職業
インテリアコーディネーターです。

インテリアに興味があり
自宅をお洒落にしたいと思う方に
インテリアのプロとして
ちょっとしたコツをご紹介していきます。

インテリアはセオリーを理解する
時にはプロレベルの成果を得ることができます。
難しく考えないで、まずは私がご紹介する
理論に沿って実践してみてください。

〜ミュージアム探訪〜
         KHギャラリー芦屋(旧小篠邸)


きっかけは昨年、新国立美術館で開かれた
建築家 安藤忠雄『挑戦』展でした。

彼の初期作品の一つに個人住宅『小篠邸』があります。ファッションデザイナー コシノ ヒロコさんの
自宅です。
『自然の中で感覚を研ぎ澄まし、四季を感じながら
クリエーションしたい。』 コシノ ヒロコさんの理念が基本コンセプトのアトリエ兼住宅です。

『小篠邸』
1981年竣工
建設地:兵庫県芦屋市
敷地面積:1141㎡(350坪)
延床面積:284㎡

インテリアコーディネーターとして仕事を始めた頃、
心を大きく揺さぶられた一枚のモノクローム写真。
それが『小篠邸』のリビングだと知ったのは
何年も後のことでした。
今でも私のコーディネートの原点はその写真にあります。
 
個人邸のため、内部空間の見学は出来ないと
昨年の『挑戦』展に行くまで思い込んでいました。
会場で住宅模型や設計図、写真を飽きることなく眺め、最後に『小篠邸』は『KHギャラリー芦屋』として2015年4月から一般公開されていることを知りました。

ギャラリーの見学予約から10ヶ月後、
憧れの安藤建築『小篠邸』出発です。

JR芦屋駅からバスで奥池まで向かいます。

路線バス(阪急バス)は芦屋の街を通過して坂道を
走って行きます。
途中フランク・ロイド・ライトの『ヨドコウ迎賓館』脇も通過して行きます。
今回、残念なことに 『ヨドコウ迎賓館』は2019年まで保存修理中の為、シートに覆われ外観も見ることはできません。
住宅街を抜け、さらに芦有ドライブウェイを経由して山道をぐんぐん登って行きます。

バスの中は山登り用のリュックを抱えた少年二人組と
同じくリュック姿の外国人二人組と私達、あとは
買い物帰りの地元の方々が数名だけの静かな空間です。

閑静な住宅街です。
マンションなどの集合住宅はなく、
基本は1戸建て住宅。
1宅地が1000㎡だそうです。
いわゆるレジデンス(豪邸)が立ち並ぶ街です。
ただ、緑が多くてほとんど家が見えません。
そして何より静かです。
私達も静かにギャラリーを訪問します。
奥池バス停から階段を登って徒歩2分
KHギャラリー芦屋に到着しました。

同じバス停で登山客以外のほとんどの方が
降りました。
挨拶を交わされている言葉遣いが美しくて、
聞き入ってしまいました。
『今日も暑うございますね。』と何気なくたおやかで
しなやかな言葉を話しながら、皆階段を足取り軽く登って行きました。
華奢なのに健脚でもあるのです。

リビングとして使用していた空間
安藤建築のスタイルであるコンクリート打ちっ放しの
壁と天井、大きく綺麗に切りとられた窓と
間口いっぱいに広がる正面の地窓。
2つの窓からは自然光と豊かな緑が目に入ります。
天井に細長く開けられスリットからも同じくらい
たっぷりと光が入ってきます。

艶のあるコンクリートの表面を舐めるように
光が落ちてきます。

人工光であるダウンライト(埋め込み灯)の数も
きわめて少なめにおさえられています。

コシノヒロコさんの作品
『白のファンタジー』2014年
絵画にも布の形とリズム感を取り入れた作品です。
手作業で皺(しわ)と襞(ひだ)を作りレリーフ状に
固めてつくられています。

バレリーナの姿の妖精やさまざまな動物や
植物が描かれています。

色数が抑えられていて白からグレーの色幅だけで
構成されています。
ただキャンバスにのせられているのが絵の具だけでは
なく、立体感のある布を使っているところが
この絵画の特徴だと思います。

地窓と天井のスリット窓からの光で構成された
美しい佇まいの和室。

和室の中央に置かれているのは
エトリ ケンジ氏の立体作品です。
金網に人体を当てて型を取り造形を加えた『人型』
です。
 旧リビングを和室側から見下ろした画です。
模型の展示もありました。
全体像がよくわかります。


旧ダイニングルームには薪ストーブがありました。

エトリ ケンジ氏の作品は屋外にも展示されています。
旧寝室
エトリ ケンジ氏の人型にコシノヒロコさんが
洋服を纏わせて展示されています。

アートとファッションの競演です。
バスの時間に合わせて来た道を戻ります。

奥池バス停では
薄いグリーンのギンガムチェックのシャツを
着たおしゃれなおじいさまと
小学生の男の子がバスを待っていました。
バスに乗ると小さな男の子はおじいさまに
もたれ、寝てしまいました。
微笑ましい光景に癒される車中でした。

KHギャラリー芦屋のスタッフの方に
お薦めいただいた芦屋の街歩き本です。
今は暑くて難しいですが、もう少し歩きやすい季節に
備えて、芦屋駅の本屋さんで買って帰りました。

発売からあまり日が経っていないせいでしょうか、
本屋さんの正面にたくさん平積みしていました。

予約してから10ヶ月、その存在に感銘を受けて
30年近くの時が流れました。
インテリアコーディネーターとして目標としてきた
作品に直に触れることができ、言葉では言い表すことのできない尊いものを受け取ることができました。

陰翳礼讃シンプルを超えた存在感

私の考えるインテリアの軸はこれからも
ぶれることはないと強く思いました。