【勝手に星付け@映画】

ポエトリー アグネスの詩 ★★★★

ー世界は決壊してから始まるー


とうとう観てしまった!!イ・チャンドン!結論、好き(•ө•)♡

まずあらすじサクッと。

→釜山で働く娘に代わり、中学生の孫を育てるミジャは、ある日、孫が同級生への集団強姦事件に関わっていたことを知る。
徐々にむき出しになる現実と孫とのすれ違いの中、ミジャは美しさを求め、詩を書こうとする。(以上)。


素晴らしいレビューは他の方々がお書きになってますので、わたくしは思ったことをつらつらと。

ミジャが嫌いだ。共有できる感情は一つもない。

表面上の形にだけ囚われ、目の前の現実からは常に目をそらす。他人から乖離し、逃げ、人をさげすみ、美しくないと貶す。

淡々と美しさを追い求める話なのに、ちっとも美しさなんて感じなかった。

だけど、ミジャはなんて美しい詩を書くのだろう。なんて澄んだ目で木々を見つめ、鳥の声に聴き入るのだろう。

彼女は無垢だ。正視なければならない醜い現実から逃げ続けるから、彼女は無垢でいられる。

そして、残酷なことにその無垢さはミジャが患うアルツハイマーからもたらされている。

残酷。……としか言いようがない。

波乱万丈の人生、娘との関係、孫とのすれ違い、夢にも思わなかった堕ちた人生。

小洒落た服や、化粧や、真っ白な下着は鎧だ。鎧をつけることで多い隠せた“現実”が事件によって丸裸になった。

生と性と死。詩。

人も自分も偽ってきたミジャがやっと心からの言葉を吐き出しても、次の瞬間、アルツハイマーを患う脳からその言葉は消えてなくなるのだ。

残酷。でも幸せなんだろう。痛みも怒りも哀しみもをすべて忘れてしまえるのは、きっと幸せなんだろう。

事件に関わった他の子供の親たちも、教師も、ミジャもひょっとすると被害者の家族も……外面を取り繕うことに必死だった。

息子たちの将来が!息子たちの将来が!息子たちの将来が!

では、被害者の……アグネスの将来は?希望は?夢はどこに?

記憶も思い出も、希望も夢もいつか消える。忘れる。失われる。

でもミジャが書いた詩は消えない。残る。

ミジャもミジャの取り巻く環境も、直面し美しいと思えなかった。取り繕った人よりも取り繕わない人の方が何倍も優しかった。

ほんとは何倍も優しかった。ミジャはただ本質を感じようとしなかっただけ。林檎は食べた方が美味しいのに。

ミジャの世界は広がった瞬間に、閉じていく。

儚くて痛ましくて残酷で、とても強い物語。

オススメはしないけども、一方で激しくオススメもしちゃう作品です。観るなら元気なときにね!