先日、夜10時過ぎに代表番号でない方の電話が鳴りました。重症のペットを抱えている飼主さんのみに教えている内輪の電話番号です。何か急患かなと思い電話に出てみると、慌てているのか名前がよく聞き取れませんでした。何度か聞き直してみると、パートで来てくれているトリマーさんでした。

 

自宅のペットが目の前で「ホウ酸団子」を食べてしまったとの事。何個か入ったうちの一つで包装は噛み砕いたが、取り上げる間も無く飲み込んでしまったとの事。院長が包装の表示の濃度を調べるように言うも、今一つ要領を得ません。一応中毒の本も調べると、相当量を食べなければ少々脱水をする程度で問題ないとの事。ペットの様子も問題無いとの事なので、水分を取らせるよう指示し様子を見ることにしました。翌日「元気にしています」とペットを連れて誤食した残りの包装を持って来ました。成分を見ると、何とホウ酸ではなく動物病院でもノミ駆除剤に使用している成分でした。「何でホウ酸と思ったの?」と聞くと、「ゴキブリ駆除剤だからそう思った。」との事。幸い節足動物以外ではあまり毒性の少ない成分であり、ペット本人も元気にしていて検査でも問題ありませんでしたからよかったのですが。もし直ぐに対処しなければならない毒性の強いものであったら…と思うと、ぞっとしました。診療に慣れた動物看護士さんではないとはいえ、ペットを扱うトリマーさんでさえ慌てるとこの状況です。普通の飼主さんからきちんと情報を聞き出すことがいかに大切で難しいかということを思い知らされた日でした。

 

市販の物はこういう状況を想定しているのか、薬用量も成分も比較的安全にしてあるかもしれません。しかしゴキブリや蟻駆除製品には害虫を引き付けるため、糖や穀物などいかにもペットも好みそうなものが含まれています。どうぞ十分にお気を付けください。そして何か事故があった時は、できるだけ落ち着いて正確な情報を動物病院に教えて下さるようご協力ください。