20089月。



エコー検査で、


少しでも小さくするつもりの、

大きかった胸の腫瘍は、


画像には全く映らなくなっていた。


脇も同じく。


目に見える癌は全て消えていた。




予想外に、抗がん剤がとても良く効きましたね。



医師は驚いたように言ったが、



私は祈っていた通りの展開に、


驚くと同時に、やっぱり。とも思っていた。



さすがに、だから手術はなし、とはならないが。


あくまでも、目に見えるモノが消えたが、

細胞はどう散っているかわからないのだ。




しかし、春からここまで、私は強い強い思いで、絶対にがん細胞全てを消してみせる!と祈り続けてきた。



かなりの緊迫感と怯えの裏返しの祈りではあったが。何かにすがりたい思いを宇宙に向けていたようなものだ。



それでも、ここで踏ん張らなければどこでやる!

との思いで、私は短距離走なら走り抜けられる猛ダッシュ、要は勢いでここまできていた。



とにかく、とっとと勝ち抜けて、この恐怖感を終わらせたいという思いから、とにかく私が持てる気力は全てそこに使った。



多分その時私が持っていた恐れとは、

相当の重さだった。


そしてそれをエネルギーに変えて、前に進んでいた。



そう、私が忌み嫌い、消し去ろう消し去ろう、と躍起になって戦った、恐怖感。


それは、この後もずっとずっと、

影のように私に付き纏い続けた。



でも、恐怖感が、あの時の私を奮い立たせてくれた、とも考える。

 


そして、逃げて逃げて、逃げきれなくなって、

結局捕まるのなら、向き合ってやろう!


とヤケになってその中に飛び込んだ時、

何故かそれは消えたのだ。



理屈でなく、ある時からふいに

もう、役目は終わった、と言うように。

それは、この数年後の事になるのだが。




緊迫感は続いたが、私は一つ、自分の祈りを叶えたという事実に、確信を深めた。



私の思いは、繋がっているんだ、と。




10月初めに再び入院と手術が決まった。



今度は近くになった母の家と私達の家、

そして病院との三角エリアで、



主人と母は子供をパスするように助け合いながら、タッグを組んで協力し、私を守ってくれた。