道場はお盆休みです。

 

年を取るほど、「恩師」のありがたさって感じますよね。

 

♪歌の恩師

私は元々が文系一筋、

合唱部にもいました。

中学・高校の合唱教育に熱心だったS先生の元、

NHKの合唱コンクール(Nコン)にも出る勢いがあり、

恰幅の良い、トドみたいな(失礼)S先生の指揮で、

放課後、歌うことが楽しくて楽しくて。

転校さえなければ、卒業後も歌っていたと思います。

 

ここ十年ほどは、

S先生が主宰される、卒業生中心の合唱団の定期演奏会に、

毎年行くことが何よりの楽しみでした。

コロナ情勢で途切れかけても、また昨年開催されました。

先生はもはやトドどころか、

年々お体が小さくなられ、やがて団員の手を借りられ、

90歳を越えて車椅子で出て来られ…。

それでも、指揮棒を振れば団員も客席も意識が締まる。

昨年もマイクで、変わらぬ熱い語りを聞かせて下さいました。

昔から不敵な、食えないオヤジ感までも変わらずw

 

今年はその定期演奏会がないみたい…です。

もう一つ、先生が長年主宰された別の団のHPでは、

「ご高齢により引退された」とあります。

恐らく、そういう事なのでしょう。

毎年<一期一会>だと覚悟しながら、

客席から「大地讃頌」「河口」を歌っていました。

 

中学での転校後、二度と歌えない筈でした。

年に一度でも昔のように歌う幸せがあって、

十年以上、それが張り合いとなり、彩となり、

きっと私のような元生徒は他にもいます。

先生の指揮棒は無数の生徒の声を集め、

先生の愛した「河口」のように、

豊かに膨らみ流れ続けている。

壇上じゃなくても、時折そっと先生は指揮をされている、

そんな気がして小声でソプラノパートを歌います。

ラストの部分はもう喉がダメで出ないけれど。

 

◆国語の恩師

高校の時、

「現代国語」を担当されたM先生は、

それまでの先生とは熱量が違っていました。

 

手製のレジュメをどんどん配布し、

教科書は書き込みが増え、あるキーワードが重視され、

テキパキと、早口でどんどん進める授業は、

もはや文学の講義でした。それもハイレベルな。

 

国語大好きだった私、

「今日は現国がある!」

と他の教科そっちのけで熱中しました。

放課後は質問にも行きましたし、

学校誌編集長だったので、M先生特集を盾に、

何かと「取材」の真似事もしたり。

実際、「熱血先生」と人気者だったので、

特集は当然という空気でした。

生徒思いで、問題ある生徒を補習され、

運動部の顧問も引き受けられ、

職員室きっての働き者だった先生ですが、

机の上の整理整頓はピシッ!といつも綺麗。

(真似できない…)

 

先生は今に色々活動されるだろう、

と友人ともよく言っていましたが、

その後、数々の学校で校長、

大学の客員教授などを歴任され続け、

ご定年後も現役で走り続けておられます。

そして、一般への公開講座も持たれたので、

6月に参加する事ができました。●十年ぶりです。

来月も行く予定です。

 

6月の教材は立松和平「海のいのち」

でしたが、

水底に、敵である若者を迎えて静かな大魚は、

生きるに値する場所を得て腰を据えているんだな、

と感じました。

私が高校で見た若きM先生は、

明らかに狭い生け簀か浅い川にいるような、

どうにも窮屈そうな翳を持ちつつ、

やたらと泳ぎ回っておられました。

作中の、人を水に引きずり込む魚のように、

ある種の人達には厄介な存在にも見えました。

私の卒業と同時に先生も辞められたと聞きましたが、

別の県に移られ、文字通り水を得た魚となられたのかも。

 

70代でまだまだ好奇心と、

ちょっと早口で大きな声と、フットワークと、

変わらぬ熱量を発散されつつ、

少し如才ない柔らかさも身につけられて、

何より、難病を感じさせないお元気さ。

<授業って、何てエキサイティングだろう>

<文学って底知れない世界だ>

先生をうならせる、切り口を、

次こそ提示したい!

もはや戦い、いやスパーリングですね。

宮澤賢治は私の卒論のテーマでしたし、

負けられません。

しっかり次の講座に備えて読み込もう!

 

ちなみに、このM先生が、

「武道は一生に一度はきっちりやるべきだ」

とおっしゃった事こそ、

文系一筋でひょろひょろだった私が、

空手道部に入り込んでしまうきっかけでした。

 

さらにさらに、

どうも今の師範と、声とか語り口、せっかちさ、

熱量の高さが酷似している気がする…炎

 

          コスモス

師範に(本当にやっとでしたが)

初段をお許しいただいたこと。

 

もう教わる事もできないと、

諦めていた昔の恩師たちに、

また学ばせていただけたこと。

ご引退をされても、お元気を心底願っていること。

 

<師>達との、

ご縁を特に恵まれた、不思議な年だと思います。

 

年頭に、武道の神社でいただいたお御籤に、

西行法師の有名な歌が書かれていまして。

 

年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山

私も、ですけれど、
師がご自分の道を命の限り大事に進まれていて、
ご健在なればこそ、ですよね。
一期一会とは言え、教われる機会は多いと嬉しい。
もう本当に、先生って幾つになっても先生ですから!
生きていて良かった~って思わせてくれる存在ですから!