「家族に言われたんです。

上級帯ばかりの所へ、白帯の私が入ったら、

迷惑になってしまうだろうと」

 

年配黒帯紳士クラスで、

最近入った女性が、ぽつりと言った。

「そんなことはないよ」

「道場とはそういう所だよ?」

と紳士達。

私も「それは、ない!」

ああ、もっとうまい言葉はないかしら。

「けど、自分も白帯だった頃は、

同じように思いましたから、気持ちはわかります」

 

思えば、入門前。

見学に行って、T先生に不安を述べた記憶がある。

「強い男性ばかりの所へ、

こんな若くもなく運動神経も悪い私が入って、

きっとご迷惑になることもあるかと…」

その時の先生には、

「後ろ向きになるな!」

と一喝されたなぁ。

「師範は、老若男女が長く稽古をして欲しい、

という思いが人一倍強いのだから」とも。

 

私もそうだったし、この女性もたぶん、

「極真系の道場は、バチバチやりたい元気な男子が、

中心になっている」

イメージが強いんですね。

 

空手バカ一代の時代ならともかく、

今はフルコン系の空手道場も中高年の比率が上がり、

まず現状、無茶はできなくなっていると思います。

多くの人は仕事や家庭があるわけですし。

 

そしてわが師範は、

かつて、全盛期の極真でも指折りの強豪、

体力勝負でも真っ向から勝ち抜いた人ですが、

そうした戦いにお若いころから、疑問を感じておられたそうです。

なので、ただ勝てばいいんだ、という空手ではなく、

相手との「対話(組手)」を説かれます。

…だからこそ、私がまだ昇段できないんです…(泣

とにかく勝ち星欲しさに、一方的な試合をしていたので、

保留中となっています。勝っても内容が悪いのだと。

 

女性や力の弱い者、帯が下の相手と練習する時は、

ケガをさせるな、わざと強打したら破門する、ともおっしゃいます。

 

でも、師範や師範代が説いても、

元々がっつり殴り合いたくて入ってきた人達だと、

やっぱり、微妙に加減が違うんですよねぇ。

 

相手が色帯で女だって関係ない、って感じで、

こっちが少し力を入れたら倍返しなんて、

しょっちゅうでしたよ。N整形外科に何度駆け込んだことか。

 

そういう人たちも含めて、

やっぱり黒帯の男性同士でスパーしているのを見ると、

(イキイキしているなぁ。ハァ…。

私なんか相手の時は、合わせるだけで面白くもないよね)

と感じずにはいられません。

 

かなり、そのコンプレックスが積もって、

こじらせてしまい、余計に力んで倍々返しされ、

N整形外科で手当てされ、あちこちボロボロ。

ここ数年、気持ちもボロボロでした。

 

けど。

例えば、子供と合同稽古でスパーする時、

つまらないと思うでしょうか?

私は凄く楽しいと思っています。

壊れ物を扱う気持ちで丁寧に丁寧に、

そして上手に受けて返さないといけない、

難易度は高い、なので日ごろの雑な組手を反省する、

絶好の機会だからです。

 

どんなに小さく弱い相手でも、

気を抜くと不思議なもので、隙を突かれます。

ダメージはなくても、それは立派な技ありです。

 

まして、おじさん(すみません)ばかりのクラスに、

白帯さんがいてくれるだけで、

新しい空気が入った感じになります。

わかってくれないかなぁ? この「大歓迎♪」の空気。お願い

 

そして、私は個人的にも「大大大歓迎」

この方は年齢も近いし、キック経験もあるので、

特に下段が上手なのです。

(絶好のスパー相手、来たぁ~~合格

そのうち、試合が近くなったりしたら、

稽古後にぜひ、軽い練習相手をお願いしたい!

男性の先輩にはさすがに遠慮するしかなくて。

やっと、女性で体力的にちょうどいい人が現れた。

日頃お参りしている、道場近くの武道神社の、

ご利益かしら。

 

数いる道場生の中には(女か。つまらん)

と思う人もいるのかもしれません。

が、少なくともここ年配紳士軍団には、

そんな人、いないと思えてならない。

 

もしそんな人がいるなら、

どうぞどうぞ、稽古の後で自主練として、

元気な人同士でバッチバチキラキラにスパーしなさい。

と言いたいです。

数Rくらいなら、どの指導員の先生でも、

ダメとは言わないはずです。10分もかかりません。

 

紳士組総帥・Y先生はおケガでご指導をお休み。

最近、先生方のケガやご病気が続いて、

心配です。

 

師範の目

師範や師範代の稽古に出ても、

あまりスパーで見てもらえていないな、

と感じることも多々ありました。

(やっぱり、ダメなのかなあ)

(伸びしろが一番ない人間だから。

誰だって、、素質ある若い方へ期待するしなあ)

          不安

ただでさえボコボコになっている心が、

隙間風に吹き込まれていました。

 

でも先日の講習会では、

師範直々に「力んではいけない」

と親身にお叱りいただいて、

ありがたくって仕方なかったです。

 

「僕はね、普段は雑な人間だけれど、

空手だけは負けたくないんですよ」

真正面から、師範の目が真剣にこちらをご覧になります。

少し老いて柔らかくなられた目。

(お前は、もっと真剣になれるか?)

と問われている気がしました。

 

純一で、少し悲しみも感じる、茶色な光。

やっぱり、この方に真の入門の証である、

黒帯を認められたいです。

誰よりも伸びしろのない弱者ですが、

師範はちゃんと、皆を見ておられるのです。

 

「感情的になったり、力任せで結果だけで、

勝った!なんて組手はするな!」

 

「下」に力を落とせ

先日は組手巧者の先輩が、ご指導番でした。

「下半身をしっかり主導させる。

緊張した時ほど胆力を落として動く。

力むと手から先に振り回して、威力もないし、居着く」

とミットも含めて、スムーズに動く練習を重視。

ランダムに的を動かして的確に追う練習とか、

ラリー形式で受け返したりとか。

いい練習でした。

うまい人は威力があるのに加減も完璧。

 

そういえば、先日中学生男子が遠慮なく来るので、

ついボカンとやり返したものの、

「一発もらうと、途端に上へカーッと意識が上がって、

ガチガチになっていますね。確かに」

「そうなんだよね」

師範のおっしゃる力んだ状態って、コレだな。

息ばかり上がって、体がうまく動かなかった。

年のせいだと思っていたけど。