第72話 王位の継承 ![]()
正祖(チョンジョ)王と宣嬪(ウィビン)の間に生まれた王子は成長し
尚宮たちと楽しく遊ぶまでになった
そこへ正祖(チョンジョ)王が現れ 目隠しをした王子を抱き上げる
『鬼ごっこか?』
『はい父上! 父上を捕まえました!』
『では今度は私が鬼になる番だな』
共に楽しく遊びながら 正祖(チョンジョ)王は教育にも熱心だった
『“身体髪膚 父母に受く” どういう意味か分かるか?』
『体は父母からの授かりものという意味です』
『そのとおりだ 読みも解釈も完璧だ!』
王子の教育を担当しているのは チェ・ジェゴンである
幼いながらも既に「千字文」と「孝経」を読み すべて覚えているという
※孝経:孔子が曾子に孝について述べたもの
たどたどしいながらも王子は筆を握り 半紙に“父母”と書いた
それを見た正祖(チョンジョ)王は大喜びで
奎章閣(キュジャンガク)の検書官たちにも自慢せねば!という
※奎章閣(キュジャンガク):朝鮮の歴史的記録物の重要な所蔵庫
我が子を絶賛する姿は 親バカ以外の何ものでもないが
手放しで我が子を可愛がる喜びを 心から味わっていた
幼い日 米櫃の中で苦しむ父に一滴の水だけでもと手を差し伸べた
こうした父子の語らいを 誰に遠慮することなく溺愛する喜びを
これまでどんなに夢見たことか…
『王子様が聡明なのも 王様の徳のおかげでしょう』
『民や朝廷にとっても喜ばしいことだ この子はいずれ王になるのだからな』
その頃 恵慶宮(ヘギョングン)の居所には茶菓が届いていた
『松花(ソンファ)の菓子も入れたか? 王子の大好物なのだ
王子はいつ来るのか 様子を見に行ってくれ』
宣嬪(ウィビン)を拒絶し頑なに心を閉ざしていた恵慶宮(ヘギョングン)は
今ではすっかり王子の虜であった
こうして毎日 王子の訪問を楽しみにしている
宣嬪(ウィビン)の居所には王妃が迎えに来ていた
こうして連れ立って恵慶宮(ヘギョングン)を訪ねるのが日課になっている
恵慶宮(ヘギョングン)は王子を膝に抱き もう字を書けるのかと感嘆する
『最近も 王様自ら字を教えているのか?』
『はい 忙しい中で時間を割いてくださいます』
父親ぶりを発揮する息子に 恵慶宮(ヘギョングン)は満足そうである
それに応えるように 賢い王子も心から愛おしく可愛かった
『王子は実に立派です なぜそんなに賢いのです?』
『王世子になれるよう多くを学べと 父上が仰いました』
幼い王子が屈託なく答えた言葉に 恵慶宮(ヘギョングン)と王妃は戸惑い
宣嬪(ウィビン)も どういう反応をしていいのか分からずに黙り込む
『王様が王子に 王世子になれと言ったのですね?』
『はい お祖母様』
王子の処遇を巡り重臣の上奏が絶えない状況を心配し
世継ぎの決定にはまだ早いのでは…という宣嬪(ウィビン)
しかし王妃は 重臣たちが何と騒ぎ立てようと
王様の血を引くあの子が王世子になるべきだと主張する
『心を強く持て あの子には世継ぎとしての資格があるのだ』
その頃チョン・ヤギョンは とある場所の地形を調査していた
散らかし放題の執務室に戻ると サチョを伴い正祖(チョンジョ)王が訪ねて来ていた
『これではまるで豚小屋だな』
『私なりに分類を… 手前にあるのは水原府(スウォンブ)に関する資料で
あちらには築城に関する計画書と設計図 向こうは商業に関する資料です』
『計画は着実に進んでいるということか』
『さようです』
ヤギョンは これまでに調査した結果を順序立てて説明し始める
『八達(パリタル)山の南側の 柳川(ユチョン)という所です
3方角に開けた平地に右は全州(チョンジュ)
左は安東(アンドン)に通ずる道が交差する 最高の土地です』
顯隆園(ヒョンリュンウォン)の整備については パク・チェガらが説明する
参拝のための機関を水原府(スウォンブ)の役所に設置し
本来の役所は近隣の寺を使いながら 新たな役所の建設も早急に進めていくという
まずは 柳川(ユチョン)の土地の所有者に会うという正祖(チョンジョ)王
『すべて買い上げるおつもりですか? 役所の移転地にしては広過ぎるのでは?』
『役所が動けば民もまた動く そのための土地だ』
『200反といえば漢陽(ハニャン)の半分の大きさです なぜそんな広大な土地を?』
『足りぬかもしれぬぞ』
王命により様々な調査をする検書官たちは まだ王の真意を知らない
『都の南側に通じる新たな道を作り 都の民もここに移住させるつもりだ
漢陽(ハニャン)に代わる新たな都を作るのだ』
パク・チェガとチョン・ヤギョンは驚いて顔を見合わせる
何か壮大な計画になりそうだと思ってはいたが
永祐園(ヨンウウォン)を移し顯隆園(ヒョンリュンウォン)とするだけだと
ただ参拝の道を整備するだけなのだと思っていたのだ
しかし漢陽(ハニャン)に代わる…となれば これは“遷都”であった!!!
遷都となれば 漢陽(ハニャン)を基盤に利権を得てきた両班(ヤンバン)が
反発することは目に見えている
※両班(ヤンバン):貴族的特権階級
『まさにそれこそが私の狙いだ
水原(スウォン)に城を築き商業と農業が共存する新都を作る
父上の墓を移したのはそのためだ ここを拠点に国の改革を始めるのだ』
壮大な計画である
検書官らの表情は険しく 王の展望にはまだついていけないのが正直なところだ
これを実現するために どれほどの難題が降りかかり騒ぎになるのかと…!
足繁く水原(スウォン)に出かけていく王の行動を
大妃(テビ)に報告するミン・ジュシク
王がお忍びで行くのと並行し 検書官らも頻繁に足を運んでいるという
墓の移転だけではなく 何らかの計画があるようだというチェ・ソクチュ
『何にしろ我々にとって喜ばしいこととは思えぬ
申したであろう 思悼(サド)王世子の墓を移したのは始まりに過ぎぬと』
その時!
屋敷の外の見張り兵が飛び込んで来て身を隠すように!と言う
この状況で密会場所が暴かれてはならない
大妃(テビ)は話し合いを中断して宮殿に戻る…!
『夜中に外出ですか?』
尾行をまき無事に大妃(テビ)殿の前に着いたところで
暗闇から声をかけてきたのは正祖(チョンジョ)王であった…!
大妃(テビ)は必死に平静を装い こんな夜中に何の用かと聞く
『先に 私の質問に答えてください
私が大妃(テビ)様を訪ねることより
大妃(テビ)様が宮殿を出ることの方が不自然では?』
『叔父の病が重いと聞き実家に行って来ました
大殿(テジョン)にもそのように知らせた筈ですが』
※大殿(テジョン):王が住む宮殿
『でしたら校洞(キョドン)方面の筈 門番の話では別の方角に向かわれたとか
北村(プクチョン)に向かう道だそうですが』
正祖(チョンジョ)王は事細かに詰問していく
大妃(テビ)は動揺をひた隠して ひとつひとつの質問に丁寧に答えていく
北村(プクチョン)へは薬屋に寄ったのだと答え なぜ聞くのかと
『まさか良からぬ企みのため外出したとでも?』
大妃(テビ)の答えを細かに裏付け調査していくテスたち
確かに薬屋に寄ったことは間違いなかったが その薬屋が妙だった
ここ最近その薬屋には 老論(ノロン)派の重臣らが通い詰めているというのだ
『きっと何かあるはずだ 綿密に調べよ!』
今回は言い逃れられたが 大妃(テビ)は焦り始める
こうまで疑われ監視されていたとは思ってもいなかった
宮殿を出る時刻から 向かう方向まで監視されている…!
『手をこまねいてはいられない 例の者たちを宮殿に送り込むのだ!』
『まさか以前お話になった 大殿(テジョン)襲撃を実行されるのですか?!』
大妃(テビ)に従うソクチュだが 危険極まりない賭けになると進言する…!
『宮殿の警備も厳しいですし もう少し様子を…』
『いつまで待てば気が済む?これ以上愚弄されてなるものか…!
今度こそ何としても王が握っている物を奪うのだ!』
一方 宣嬪(ウィビン)は 久しぶりに会う和嬪(ファビン)の様子に戸惑う
もともと 宣嬪(ウィビン)に対しては敵意を見せなかったが
以前にもまして冷静過ぎるほどの態度で接し 自らの感情を見せなくなった
『姫様を病で亡くされて以来 あの様子です』
『我が子を亡くしたのだ 無理もない』
『次の懐妊に懸けるようですが こればかりは1人では…』
『ヤン尚宮!』
その夜
パク・テスは当直の任務であり ジャンボとソッキは酒場に行くという
王の親衛隊としての任務を担う壮勇衛(チャンヨンウィ)を指揮し
それぞれの持ち場をしっかり警備するようにと命じるテス
この中に間者が紛れているとは夢にも思っていない
宮殿内に黒装束の賊が侵入し 騒ぎにならないよう間者が導き入れていく…!
そして顔にアザのある男が 王の執務室に侵入し“例の物”を探し始めた
すると外に警備の様子を巡回しに テスが現れた
『もう1人はどこに行った?』
『…周辺の見回りに』
そうかと納得し 巡回を続けようとするテス
しかし先ほど命じていく時の 執務室担当の兵士と顔が違うように感じる…!
『ここの担当か?』
『事情があり 代わりました』
『誰が代わっていいと言った? 勝手な真似をするな!』
お前は誰だと 名前を確認しようとするテス
間者は 正体がバレそうになり剣に手を…!
『誰だ!!!』
その時 遠くの方で騒ぎが起こりテスが走っていく!
襲われた兵士の遺体が見つかり 賊が侵入したことが明らかになった
執務室で物色していた間者は目的の物を見つけられず 持ち場に戻るしかない
刺客が侵入したとの報告に 正祖(チョンジョ)王は慌てて執務室に向かう…!
見張りの間者は既に逃げ ミン・ジュシクのもとへ向かっていた
計画が失敗に終わったことを知り激怒するジュシク!
刺客の賊は注意を引き付けるためのもので
あくまでも “例の物”の捜索が目的であったのだ
荒らされた執務室を見て 正祖(チョンジョ)王はすぐに行灯の中を確認する
先王の遺言書が入った小箱は 行灯の中に隠してあり無事だった…!
初めて見る小箱に 同行したテスは…
『それは何です?』
『連中の狙いは 恐らくこれだ』
この小箱の存在を知るのは 王の他にはチェ・ジェゴンだけであった
それを狙う者がいるとは 正祖(チョンジョ)王にも想定外の事態である
『一体… 誰です?』
『おそらく… 大妃(テビ)様だ』
『では執務室を荒らしたのも…!』
騒動が収まり 襲われた兵士を別にしても2名の兵士の行方が分からない
報告を受けたテスは 執務室の前での不審なやり取りを思い出す…!
『都中をひっくり返してでも奴らを捕えよ!!!』
一夜明け
計画の失敗を知った大妃(テビ)は 激怒してソクチュを怒鳴りつける!
執務室を荒らしたとなれば その目的を知られ疑われることは必至であった
だからこそ失敗は許されないことだったのに…!
『王の手の内さえ分からないようでは 策の講じようがない!!!』
今の宮殿に侵入するのは危険だと ソクチュは進言していたのだ
失敗は起こるべくして起こったのだと…
『先代の王の遺言など ただの脅しでは?』
『そんな筈はない!さもなくば ああも大きく出る筈が無い!』
正祖(チョンジョ)王は
唐突に王子を王世子にすると言い出し ジェゴンを驚かせる
そして 清へ奏請使を送れと命じていく
まだ幼子の王子様を冊立するのは時期尚早だと進言するジェゴンだが…
※奏請使:属国の朝鮮が清国に許しを請う使い
※冊立:詔により王世子を定めること
王子が幼いことも事実だが それ以外にも問題はある
王位継承については 宣嬪(ウィビン)の出自が再び問題視されるのは必至であり
遷都の問題と王位継承の問題を 同時に抱えることは出来れば避けたいジェゴン
『私も王子の成長を待つつもりであったが 今回の事件を受けて考えを改めた
王室の威厳を高めるためにも 事を急ぐ必要がある』
王世子冊立の知らせは ヤン尚宮から宣嬪(ウィビン)へと伝えられる
王子の言動で王の意向を承知してはいたが こうも早い時期とは思わなかった
宣嬪(ウィビン)は血相を変えて王のもとへ!
そして王命を取り下げてくれるようにと懇願する
『ソンヨン』
『王子はまだ幼いのです 何も急がなくとも…』
『そんなことはない 景宗(キョンジョン)大王も幼くして王世子になられた』
※景宗(キョンジョン):粛宗(スクチョン)と張禧嬪(チャンヒビン)の長子
正祖(チョンジョ)王は 反対する本当の理由は何だと詰め寄る
ジェゴンも宣嬪(ウィビン)も 幼過ぎるとしか言わないが
2人が反対する真意は知っている
それを声高に言えないということも…
『そなたが図画署(トファソ)の茶母(タモ)だったからか?
重臣が言うように 自分が卑しい人間だと思うのか?!
だから王子は王世子になれないと?!!!』
※図画署(トファソ):絵画制作を担う国の機関
※茶母(タモ):各官庁に仕える下働き
いつになく厳しい口調の正祖(チョンジョ)王であった
この上なく宣嬪(ウィビン)を寵愛してはいるが
宣嬪(ウィビン)が自らを卑下することは決して許さなかった
『事実ではありませんか 私の身分が卑しいのは
変えることの出来ない明白な事実です』
それを承知で入宮したのだ いずれこんな日が来ると覚悟していた
王室の長子として我が子を授かったが
まだ若い王妃と和嬪(ファビン)の存在がある
世継ぎは今後も生まれる可能性があるのだと…
『至らぬ母のせいで幼い王子が傷つかぬよう ご配慮ください』
王子は幼くとも 実に聡明である
聡明であるということは 朝廷の動きや宮中の噂にも敏感だということであり
いずれは自分が置かれた立場や 母親の出自について知ることになるのだ
心穏やかでないのは 和嬪(ファビン)の父ユン・チャユンである
世継ぎをと望まれて入宮した和嬪(ファビン)は ようやく授かった娘を亡くしたが
まだ若く 今後も世継ぎを産むことは十分に出来るのにと…!
大妃(テビ)は このチャユンに肩入れするよう重臣たちに命じた
王世子が定まらないよう画策しなければ ますます王権が固まってしまうのだ
『今の王子に資格が無いことと 幼過ぎることは誰もが承知している
老論(ノロン)派をあげて抵抗するのだ…!』
王世子冊立反対の抗議行動が激しくなり
王妃は 恵慶宮(ヘギョングン)を訪ねる
『今こそ恵慶宮(ヘギョングン)様のお力が必要です!
宣嬪(ウィビン)に力添えしてやってください 可愛い王子のためです!』
王子は毎日のように母宣嬪(ウィビン)の居所を訪れ 絵を習っていたのだが
ある日突然 もう絵は習いたくないと言い出す
『恐れながら 心無い女官たちの噂話が耳に入ったようです』
それは ヤン尚宮の口からは言えないような内容であった
母親のことは大好きなのに 幼い王子もまた心を傷めていた
そんな王子を見かけ 絵を習う時間ではないか?と声をかける正祖(チョンジョ)王
『父上…卑しいとはどういう意味ですか?
絵を描くことは卑しいことですか?』
『…誰がそんなことを言った?父上が叱ってやらねば
卑しいとはそんな意味ではない
卑しさや貴さが何か 私が教えてやろう』
きっと王子は 誰かの口から母親について聞かされたのだろう
正祖(チョンジョ)王は 今こそしっかりと教える必要があると察した
『飼っていた鳥が死んでしまった時 王子はどうした?』
『とても悲しくて 土に埋めてあげました』
『ある女官が 誤って王子の顔に傷をつけた時は?』
『その女官が叱られないように なぜケガをしたのか誰にも言いませんでした』
正祖(チョンジョ)王は そのような心を持つ人は貴い人だと言う
しかし卑しい者は弱い者を見下し イジメるような心無い人間だと
『王子はどちらだろうか? 貴い者か? 卑しい者か?』
『貴い者です!』
『そうだ王子は貴い者だ それは私の息子だからではない
お前が母親の優しい心を譲り受けたからだ 父の言うことが分かるか?』
『はい 父上!』
父と息子の会話を 宣嬪(ウィビン)が聞いていた
居所に戻った宣嬪(ウィビン)は 先王から託された指輪を取り出す
「これは私の生母である淑嬪(スクピン)チェ氏の形見の指輪だ
貴重な絵を描いてくれた礼に どうかもらってほしい」
「こんな貴重な物を 私ごときが…」
「いいのだ そなたはサンの古くからの友だと聞いた 受け取れ」
英祖(ヨンジョ)王の母である淑嬪(スクピン)チェ氏は
“宮女の下人”と称されるほど身分の低い女性であった
将来 王位に就くであろう孫が 心を寄せたソンヨンに対し
格別の思いで 生母の形見を託してくれたのだった
「父を失ったあの子を支えてくれたとは 本当にありがたい
これからもそうしてくれ その澄んだ心で
いつまでもあの子のことを見守ってやってくれ」
宣嬪(ウィビン)は この指輪だけはいつも自分で磨いてきた
身につけることは無かったが 時折取り出しては丁寧に磨いていた
しかし今回は 針房(チムバン)に言って
首飾りにさせよと命じる宣嬪(ウィビン)
それでも自ら身につけることはなく 王世子となる息子の首にさげてやる
生母の身分を恥じることなく この指輪を託してくれた先王に報いるためにも
是非そうしたいと思った宣嬪(ウィビン)であった
『これは先代の王様が下さったものです 失くさないよう大切にするのですよ』
『はい 母上!』
(何の力にもなれない母ですが 忘れないでください
威厳に満ちていた先代の王様が王子の傍にいます
先代の王様が いつも王子の傍で見守ってくださいます)
王子は いつものように恵慶宮(ヘギョングン)の居所を訪ねる
しかし恵慶宮(ヘギョングン)は 今は王子に会いたくなかった
王子を可愛いと思う気持ちと…
王世子にはさせられないという思いが交差している
そんな祖母に渡してほしいと 王子は千字文の句を書いた紙を尚宮に渡す
一生懸命に書いた孫の書を見つめ 恵慶宮(ヘギョングン)はたまらなくなる…!
そこへ 護衛の制止も聞かず王子が入って来ようとする!
途端に祖母としての優しさを取り戻し 王子を招き入れようとする
『王子 何か首にかけているようだが…』
『母上が下さったものです』
『…そなたの母親が下さったのか?』
その指輪は 恵慶宮(ヘギョングン)にも見覚えがあるのだ
王子の口から先代の王様が遺されたものだと聞き さらに驚く…!
恵慶宮(ヘギョングン)は 宣嬪(ウィビン)を呼びつけることはせず
自ら居室を訪ねて行き 王子から預かった指輪を差し出す
『これは 淑嬪(スクピン)チェ氏の形見だ
先代の王が肌身離さずお持ちだった 王室の者なら誰もが知っている
この指輪が持つ意味を 皆 分かっているのだ
いつ どこで授かったのか話してくれ…!』
同じ時 正祖(チョンジョ)王は
政務報告を前にして チェ・ジェゴンから最後の進言を受けていた
王世子冊立を強行すれば 他の政策にも影響しかねないと…!
そこへ突然 恵慶宮(ヘギョングン)がやって来て 大事な話があるという
話し合いの後 正祖(チョンジョ)王は政務報告の場で
王世子冊立の宣旨(せんじ)を読み上げさせた
当然のごとく ご再考を!という声が上がる
『妙ではないか
完豊(ワンプン)君の王世子冊立は急げと言っていたのに
今度は早過ぎると反対する 皆の主張はどちらなのだ』
時期の問題だけで反対しているのではないと チェ・ソクチュが口火を切る
『王世子の座は国の顔とも言えます 中殿様もまだお若い
王子様の生母は身分が低いため 尊敬を受けられずにいます
そんな王子様を なぜ今 王世子に冊立するのですか
これは道理に反したことです』
『右議政(ウイジョン)はその場に起立を』
『……』
『起立をせよと言ったのだぞ!』
なぜこの場で立たされるのか… ソクチュは戸惑いながら立ち上がる
するとソクチュの目の前に小箱が掲げられ 中を見たソクチュはハッとする…!
『先代の王に仕えたそなたには それが何か分かるな』
王の側近でなければ知り得ないことであり ほかの重臣らは何が何やら分からない
それを察したように この指輪の重要性の説明を始める正祖(チョンジョ)王
『先代の王が崩御されてから 指輪はなくなったと思っていたがそうではなかった
先代の王は生前 これを宣嬪(ウィビン)に下賜し
今まで宣嬪(ウィビン)が大切に保管していた
意見があれば申してみよ!
先代の王の遺志に反して宣嬪(ウィビン)を軽んじ
その子を王世子に認めぬというなら そう申すがよい!』
こうして重臣らを黙らせ
宣嬪(ウィビン)を格上げし 王子を王世子にするという知らせに
王妃はこの上なく喜んだが 当の本人である宣嬪(ウィビン)は戸惑う
本当に喜んでもいいのだろうかと まずは王子のもとへ…
王子の傍には既に正祖(チョンジョ)王が来て遊んでいる
『ソンヨン』
『王様…』
『なぜ泣くのだ めでたい日だというのに』
『母上 泣かないでください』
母上は 嬉しくて泣いているのだと言う正祖(チョンジョ)王
しかし幼い王子には そうした心の機微は理解出来ず心配そうに見つめている
宣嬪(ウィビン)は そんな我が子をしっかりと抱きしめた
王世子冊立の儀式を前に 再び図画署(トファソ)は慌ただしくなる
イ・チョンは 画員人生を懸けてでも素晴らしい記録画を描くと豪語する
王世子冊立に画員人生を懸けてどうする!と笑うタク・チス
成人の儀も 婚礼の儀も 王子の成長に伴い記録画はずっと書き続けねばと…!
酒場では パク・タルホが
今日は全員タダだと言って大盤振る舞いしている
姪のように可愛がってきたソンヨンが側室になり
そのソンヨンが産んだ子が王世子になるのだ…!
女将も上機嫌でタダは嘘じゃないよ!と 大声で客を呼び込んでいる
パク・テスは
壮勇衛(チャンヨンウィ)の中軍として 宣嬪(ウィビン)に挨拶する
『王世子様の護衛は私にお任せください!
忠誠を尽くし 命を懸けてお守りします!』
『テス…』
幼い頃 王世孫イ・サンと友情を誓い合ったテスとソンヨン
ソンヨンがイ・サンの側室になり 生まれた子が王世子となって世継ぎになる
それをテスが命を懸けて守れるなら 2人にとってこれ以上の幸せは無かった
冊立の儀式を前に 王世子の衣をまとった我が子を見つめる宣嬪(ウィビン)
『大礼服は苦しくありませんか』
『平気でございます』
『王子はこの国の王世子になるのです その意味が分かりますか』
『はい母上 上は王様を支え下は民を慈しまなければなりません』
『そのとおりです 王室の方々にはどう接しますか?』
『礼と孝を尽くします』
『そうです 正しい心で万事を見極め 大志を心に刻み強く生きていくのですよ』
『はい母上 承知いたしました!』
『母はこれ以上何も望みません どうか健やかで
父上のような立派な王になってください』
そして厳かに 王世子冊立の儀式が執り行われた
『王世子は国の根本であり これを定めることは国に安泰をもたらす
よって甲辰年乙卯の日 礼法に則り王子を王世子に冊立し
その責務を任せる旨 万民と宗廟(チョンミョ)の前で宣言する』
※宗廟(チョンミョ):朝鮮時代の歴代王と王妃 功臣を祀る祠堂
『万民を思いやる聖君になるのだぞ』
『はい 父上!』
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