まじかるクラウン 第71話 命懸けの出産 まじかるクラウン
 

パク・テスは 壮勇衛(チャンヨンウィ)中軍として指揮を執ることとなり
ソ・ジャンボとカン・ソッキも同じく中軍として部隊を率いる
王室と国の安全のため尽力する新たな精鋭部隊の誕生である

図画署(トファソ)の画員たちが任命儀式の記録画を描く
後に正祖(チョンジョ)王がこれを閲覧すると聞き 画員たちも張り切る

※図画署(トファソ):絵画制作を担う国の機関

『壮勇衛(チャンヨンウィ)は王様の親衛隊だからな
いずれ五軍営を凌ぐ部隊になる』
『優秀な武官を選抜しただけあって今日の守衛儀式も素敵だった!』
『あとは王子様が誕生すれば王室は安泰だな!チョビから何か聞いてないか?』

※五軍営:中央軍の五衛を改編して出来た部隊

図画署(トファソ)のみんなにとって元同僚の宣嬪(ウィビン)が懐妊したことは
我がことのような喜びであり誉れであった
ヤン尚宮からいち早く情報が入り その度に歓喜する一同

宣嬪(ウィビン)は臨月を迎え 大きなお腹で散歩もままならなかったが
それでも細心の注意を払って外の空気を吸いに出かける
そんな宣嬪(ウィビン)を気遣い 王妃が自ら菊花茶を届ける

『菊花茶には心を安定させる効果がある』
『恐れ入ります』

恵慶宮(ヘギョングン)は新たに設置された護産庁(ホサンチョン)に配属される
医官と内官の名簿を入念に確認していた
 

※護産庁(ホサンチョン):王族の出産を管轄する臨時の官庁

『王室の将来が懸かっている
無事に王子が生まれるよう全力を尽くすのだぞ!』

その頃ヤン尚宮は内医院(ネイウォン)に行き 薬を調達するが
いつもの薬が切れていると言われ 憤慨して居室に戻る

※内医院(ネイウォン):宮中の医療を受け持った官庁

『どうして薬材まで和嬪(ファビン)様が先なんですか!』
『和嬪(ファビン)様の護産庁(ホサンチョン)が設置されたからであろう』
 

『懐妊は宣嬪(ウィビン)様が先なのに!そんなのあんまりですわ!
恵慶宮(ヘギョングン)様の関心が移っただけでなく
皆が和嬪(ファワン)様のことばかり心配して…!』

宣嬪(ウィビン)は 王族として認められただけで満足であった
位階がはるかに上の和嬪(ファビン)が優遇されるのは 王室の掟であり
恵慶宮(ヘギョングン)が優しく接してくれるだけでも有難いことだと…

『こうなったら 何としても王子様を産まないと!
噂によると和嬪(ファビン)様のお腹のお子は男の子だとか』
『…なぜそれが分かる?』

恵慶宮(ヘギョングン)は 胎児の性別が分かるという助産師を呼び
和嬪(ファビン)を鑑定をさせ男の子であると告げられていた

『聞きましたか 御医(オイ)も助産師も同じ意見です
どうやら間違いなさそうです!』

※御医(オイ):王の主治医 侍医(シウィ)ともいう

宣嬪(ウィビン)は居室でひとり
自ら縫った産着を手に お腹の我が子に語りかける

『この母が作ったものです 王子に着せて胸に抱くことを思いながら…
どうか健康な体で生まれてきてください 母が願うのはそれだけです』

そこへ正祖(チョンジョ)王が訪ねて来て1冊の書を渡す
表紙には“千字文”と書かれている

『そなたが懐妊してから 毎日書きためていた
この本で我が子に字を教えたくてな 他にもある
武芸のために木刀と弓も準備した…!』
『王様…』
『父上も私にそうしてくださった 私も同じように我が子を育てる』

正祖(チョンジョ)王は宣嬪(ウィビン)が産む子を男児と決めつけている
しかし宣嬪(ウィビン)が産む子は誰もが女児だという
それが身分の低い宣嬪(ウィビン)にとっても 生まれくる子にとっても
幸いなことだと 願いにも似た気持ちであろうか…

『王様を失望させはしないかと心配です』
『失望とはどういうことだ』
『……』
『そなたに似た娘が生まれたら どんなに嬉しいことか…!』

世継ぎの誕生は 王のみならず国中の願いでもある
正祖(チョンジョ)王の言葉で 宣嬪(ウィビン)は救われる思いであった

『そなたこそ失望するかもしれぬ 私の愛を奪われたと』
『王様…』

まもなく和嬪(ファビン)と宣嬪(ウィビン)に子が生まれる
どちらが世継ぎを産むのかという関心事に 宮中はざわついているが
チェ・ソクチュは別の警戒心で大妃(テビ)殿を訪れていた

『密偵の報告によると 王様は新しい兵を組織し
壮勇衛(チャンヨンウィ)の兵士を都に置くそうです
守衛儀式は始まりに過ぎません
いずれ壮勇衛(チャンヨンウィ)は五軍営に取って代わります』

五軍営は 老論(ノロン)派が掌握している組織であり
だからこそ王は消滅させようとしているのだと ソクチュは訴える

『更に気になることがあります
チョン・ヤギョンが濬川司(チュンチョンサ)で何やら調べているそうです』

 

※濬川司(チュンチョンサ):河川を補修する官庁

ヤギョンは 濬川司(チュンチョンサ)に引きこもったままで
他の誰にも何をしているのかさっぱり分からない
しかしそれで 正祖(チョンジョ)王は満足であった

ヤギョンの食事を用意する官吏は辟易していた
もう2ヶ月も ろくに食べもせず呼んでも返事すらしない
これで倒れられでもしたら自分たちが責められると…!

その日の夜遅く 珍しく寝所で休む王のもとへナム・サチョが入り
チョン・ヤギョンが早急に謁見を求めていると報告する

『お申し付けのものが完成しました!
数千人が漢江(ハンガン)を渡る方法を見つけたのです…!
少しでも早く王様にお見せしたくて』

それのどこが緊急なんだと言わんばかりに ナム・サチョが憤る
就寝中の王を起こしてまで執務室に来させながら…
サチョにとっては 明朝でも十分だと思える報告の内容であった

『申し訳ありません そんな時間とは知らず…』
 

夢中になると 食事を摂ることも寝ることも 今が何時かも忘れてしまうヤギョン
正祖(チョンジョ)王は 完成したらすぐに見せろと言ったのは自分だと笑う
連れ立って濬川司(チュンチョンサ)へ移動する2人!

完成品は布で覆われていた
ヤギョンによれば あまり驚かせてもいけないという配慮からだという

『自分で言うのもなんですが これほど早く安全に
大勢が川を渡る方法は他にな無いでしょう!』

興奮して布を剥ぎ取るヤギョンだが
大きな木型に水をはり 川に見立てた中に何艘かの舟が浮かんでいるだけだった
もっと斬新なものを想像していた正祖(チョンジョ)王は これだけか?と問う
 

するとヤギョンは その舟の連なりに板の棒を渡す

『これが私の発見です 舟に乗るのではなく舟で橋を作るのです
舟を連結し固定して上に頑丈な板を置けば 数千人が容易に川を渡れます』

『…そうか 舟の橋は「詩経」にも登場する
本当にこれで漢江(ハンガン)を渡れるのか?
人の重みに耐えかねて沈んでしまうのではないか?』

ヤギョンは 絶対にあり得ないと答える
漢江(ハンガン)の最も狭い地点に設置すれば
水の浮力によって重さの問題も解決すると!

『舟1艘と36艘の浮力には 大きな差があります
重さがどこかに偏らない限り決して舟は沈みません!』

正祖(チョンジョ)王は
月末までの20日間で橋を作れと命じ ヤギョンは承知した

『難しい要求をしても 慌てないな』
『困難なことほど やる気が出るのです』

満足そうに微笑む王に そろそろ話してほしいと願い出るヤギョン
漢江(ハンガン)を渡る目的は 方法を考え付いた時に教えるとの約束だが
正祖(チョンジョ)王は『明日になればすべて分かる』というだけだった

翌朝 正祖(チョンジョ)王は
亡き父思悼(サド)王世子の墓に出向き祈りを捧げた

(父上 ついにこの時が来ました
もうすぐ すべてが一新されます
先代の王と父上の遺志を継ぎ この国の朝廷を改革するつもりです!
見守ってください 志を現実に出来るよう どうかお守りください)

王が永祐園(ヨンウウォン)に参拝したと聞き チャン・テウは血相を変える
政務を無視して思悼(サド)王世子の墓に行くとは 何かあるに違いないと…!
これまで正祖(チョンジョ)王は 亡き父の墓には行幸以外に立ち寄ったことが無い
だからこそ これを知った大妃(テビ)も動揺するのであった

『何かある 即位して以来 王は慎重な姿勢を崩さず
思悼(サド)王世子の件を口にしたことは無かった』

そこへ カン尚宮が駆けつけ王が宮殿に戻ったと報告する
正祖(チョンジョ)王は直ちに重臣を召集するよう命じ
そこで『永祐園(ヨンウウォン)を他の場所に移す』と明言したのであった

『以前 拜峰(ペボン)山の地形が良くないとの上奏があった
綿密な調査の結果 移転すべきだと判断した
新しい墓所は水原府(スウォンブ)の花山(ファサン)だ
工事には舟の橋を利用する
陵名も顯隆園(ヒョンリュンウォン)と改める』

これは即位した瞬間から心に秘めていたことであり 決定事項であるとして
誰の意見を聞くつもりも無いという正祖(チョンジョ)王!
チャン・テウは 正に機が熟したと王が考えているからであろうという

『王様はこう言っていた “即位した瞬間から考えていた”と
つまり時機を待っていたのだ 即位して以来この日に備えていたのだ…!
思悼(サド)王世子の死に関して王は誰も処罰しなかった
内心は耐え忍んでいたのだ
親衛隊を養成し自らを支える重臣を登用しながら…準備を整えていた!』

つまり 墓を移すのを手始めに関係者を罰するつもりなのかと?!
大妃(テビ)もまた思悼(サド)王世子が持ち出され 王の言葉を思い出す

「二度と朝廷に関わろうとなさらぬことです!
最後の警告です 私は…先代の王の遺言を預かっています!
それだけは実行したくありません」

(どうする気だ… どうやって私の首を絞める気だ!)

その夜 カン・ソッキは王の執務室の警備を強化させた
正祖(チョンジョ)王とチェ・ジェゴンの密談が交わされるためである

 

執務室では正祖(チョンジョ)王が
先王より預かった小箱を前に考え込んでいる
 

「私の死後に備え用意しておいた
だが 今必要と思うなら 自分の判断を信じ躊躇なく使うがいい
今後は王座に就くべく足場を固めよ
謀反を企てた罪人を断罪し 政敵を一掃するのだ!
彼らに いかなる同情も抱いてはならぬ」

執務室の外では ソッキに命じられた兵士の前に別の兵士が現れ
ジャンボから当番を交代するよう命じられたと申し出ている

『武官様は 進善門の警備につけとのことです』

見張りを代わった男は顔にアザのある男で ミン・ジュシクの手の者だった
間者が警護についているとも知らず ジェゴンが執務室に入っていく…!

『王様 これは先代王が遺された遺書ではありませんか』
『そうだ 今こそその内容をそなたにも知らせようと思う』

進善門では
執務室担当の兵士がいることに パク・テスが気づく
ここで初めて 命令を受けずに兵が移動していると知るテス…!

間者に立ち聞きされているとも知らず 王とジェゴンの密談は続く

『大妃(テビ)様は勿論 父上を陥れた者の断罪を容認された
これは その者たちが署名した連判状だ』
『王様…!』

『先代の王の遺言と 謀反の証拠が揃っている
私はいつでも彼らを断罪出来るのだ
父上の復讐をしようというのではない 目的は朝廷を一新することだ
既得権を握り続け朝廷を食い物にした老論(ノロン)派を弾劾するのだ
墓所の移転はその第一歩になる これを機に国を一新するつもりだ
老論(ノロン)派が妨害した時はこの遺言を使い追放する…!』

間者の口から 直ちに王の言葉が伝えられた大妃(テビ)は…

『先代王は私を殺してもよいとの遺言を残された
以前 宮殿の外に家を用意せよと命じたが…覚えているか?』

チェ・ソクチュは すべてを察してはいたが
用意しておいた屋敷に同志を召集すれば
王の監視の目が厳しく光る今 危険極まりないことだと進言する
 

『どの道 私の命はない!!!
王は決して我々を許しはしないだろう
そういうことなら こちらも受けて立つ!
おとなしく命を差し出しはせぬ…!!!』

パク・テスは 任務の合間を縫って 宣嬪(ウィビン)のために産着を用意した
宮中では 和嬪(ファビン)の出産の準備が進んでいるが
王の寵愛を一身に受けているとはいえ 実家のない宣嬪(ウィビン)が
頼るところもなく 心細い気持ちではないかと気遣うテスだった
タルホと女将も 予定日を過ぎた宣嬪(ウィビン)を心配していた

『確か15日の筈だが 陣痛もまだらしいぞ』
『俺も日を数えているんだが…』

初産は予定通りにはいかないものだと 男たちの心配を一蹴する女将

宮中では 予定日を10日も過ぎたことを心配し
恵慶宮(ヘギョングン)が御医(オイ)を呼びつけ問いただしている
いくら和嬪(ファビン)に関心が移ったとはいえ
宣嬪(ウィビン)の子も按じているのだ

宣嬪(ウィビン)のもとへは医官と医女が来て 何やら慌てた様子だ
破水があったのに 陣痛を感じないとはあり得ないことであった
立ち合う王妃が 何が起きているのか説明せよ!と急き立てる
 

『恐れながら私の見立てでは…
お腹の御子様は深刻な状態のようです…!』

医官により 宣嬪(ウィビン)に“羊水過少症”という診断が下された
王妃の口から 涙ながらに王へと報告され
御医(オイ)から恵慶宮(ヘギョングン)にも報告された

3日以内に陣痛が無ければ死産は明らかだという
そればかりか宣嬪(ウィビン)の命さえ危うくなるのだと…!

さめざめと泣くヤン尚宮を前に 宣嬪(ウィビン)は気丈に振る舞い
きっと御子は無事に生まれると自分に言い聞かせていた
そこへ正祖(チョンジョ)王が現れると 緊張の糸が途切れそうになる

正祖(チョンジョ)王は 内医院(ネイウォン)の総力を上げ
宣嬪(ウィビン)とお腹の子を守るようにと命じた
 

この事態は図画署(トファソ)にも聞こえ
イ・チョンら画員と茶母(タモ)たちが深刻な様子で心配する
2日めの夜になっても宣嬪(ウィビン)に陣痛の兆しは無く
正祖(チョンジョ)王は執務室にこもり 御医(オイ)を呼べ!と怒鳴る
 

恵慶宮(ヘギョングン)も宣嬪(ウィビン)を按じ 居室の外に現れた
万が一 御子を失ったとしても宣嬪(ウィビン)は救わねばならぬと…!

破水が続く中 陣痛が起きないまま時が過ぎていく
宣嬪(ウィビン)は お腹の子に語りかけながら静かに“その時”を待っていた
必ず守ると言った王の言葉に勇気づけられ 自分もまた子を守ろうと必死に祈る

そして3日目の朝になった
依然として変化が無いことをキム尚宮が王妃に伝える
そして皮肉なことに 和嬪(ファビン)の陣痛が始まったというのだ…!

『あんまりです!
天と地に神がいながら宣嬪(ウィビン)様だけが辛い目に…!』

陣痛が来なければならないのはこっちなのにと 大泣きするヤン尚宮に
キム尚宮は慰めの言葉も無かった

絶望して居室に戻ると 何やら慌ただしく医女たちが動いている
ついに… 宣嬪(ウィビン)にも陣痛が始まったというのだ…!!!
和嬪(ファビン)の居室から宣嬪(ウィビン)のもとへ急ぐ恵慶宮(ヘギョングン)
宮殿広しといえど出産を経験している者は少ない
王妃に子が無いまま 2人の側室が陣痛の痛みに耐えていた…!

尚門タルホは 合間を縫って任務中のテスのもとへ経過の報告に走った
陣痛が起きない危機的な状況を思えば あとは生まれるだけであっても
テスは何より宣嬪(ウィビン)の身を按じていた

『人間は現金なものです
命が危ない時はひたすら無事を祈ったのに
無事と分かると更に欲が出てくる』

タルホは 是非とも宣嬪(ウィビン)に王子が生まれてほしいと願っていた
その思いは図画署(トファソ)の一同も同じであったが
医女たちは 和嬪(ファビン)が王子 宣嬪(ウィビン)が王女を産むと噂していた

『バカを言うな!生まれてもいないのに何が分かる! 王子だ!!!』

やがて夜になり どちらの側室にも生まれたという報告が無く
正祖(チョンジョ)王は 落ち着かないまま執務室を歩き回っている

『父になるとはこういうことか 気になって居ても立ってもいられない…!』

なぜこれほど時間がかかるのかと 王妃自ら中に入ろうとしたその時…!
高らかな産声が辺りに響き渡った…!!!
そして和嬪(ファビン)の居室でも…同じように産声が上がる

『お祝い申し上げます 和嬪(ファビン)様が王女様を出産されました!』
『…王女だったのか』
『さようです』

御医(オイ)も助産師も王子だと断言していたのに 和嬪(ファビン)は王女を産んだ
そして出産を終えた宣嬪(ウィビン)の傍らには…

『お見えになりますか? 王子様でございます!』
『お祝い申し上げます!』

王妃は 大役を終えた宣嬪(ウィビン)に声をかける

『王子を産んでくれて ありがとう
そなたのおかげで ようやく心の荷を降ろすことが出来た
ありがとう 本当にありがとう…!』
『王妃様…』

絶対的な信頼で結ばれている王と王妃
しかし王妃は 正祖(チョンジョ)王のために子を産むことが出来なかった
王妃が最も信頼し王が最も寵愛する宣嬪(ウィビン)が それを成し遂げてくれたのだ

『宣嬪(ウィビン)が王子を産んだと?!!!』
『はい王様 たった今知らせが届きました 和嬪(ファビン)様は王女様を
宣嬪(ウィビン)様は王子様を出産されたそうです
王室に これ以上の慶事はございません!!!』

恵慶宮(ヘギョングン)は王子を抱き上げ 愛おしそうに見つめる
その光景を見る宣嬪(ウィビン)の目には感激の涙が滲む

『ついに生まれました 私が生涯待ち続けた王子です』
『恵慶宮(ヘギョングン)様…』
『ご苦労だった 王様とこの国のために大事を成し遂げた』
『恐れ入ります…』

王女を産んだ和嬪(ファビン)の居所には
医女が2人付き添っているだけだった
歓喜の声で賑わうことも 労う者の姿もない

そこへ正祖(チョンジョ)王が来たと知らせる声が響く
起き上がろうとする和嬪(ファビン)を制し 傍に寄り添う正祖(チョンジョ)王

『ご苦労だった それが言いたくて来た』
『申し訳ありません 王子を産むことが出来ず…』
『何を申すのだ 王女でも王子でも私には大切な子だ
私は王女を誰よりも可愛がる 無用な心配をせず弱った体を癒すのだ よいな』
『恐れ入ります』

正祖(チョンジョ)王は翌日になっても宣嬪(ウィビン)のもとに現れない
王子を産んだのはこっちなのに…!と悔しがるヤン尚宮
そこへようやく王様が来たとの知らせが入る…!

正祖(チョンジョ)王は 壊れ物でも触るように頬を撫で愛おしく王子を見つめた

『この子なのだな この子が 待ちに待った私の息子だ
胸がいっぱいで言葉が見つからぬ! 何を話せばいいのか分からない』
『王様…』
『忘れるなソンヨン この子を…王世子にする
よいな 私はこの子を誰が何と言おうと王世子に据える!
そしていつか私の跡を継ぐ王となるのだ!』

 

☝よろしければクリックお願いします