第23話 王妃の陰謀 ![]()
キム・ギジュが ウノン君とウンジョン君を連れ歩いていると
王世孫イ・サンが通りかかる
突然現れた王妃の兄に 戸惑いを隠せないサン
2人の王子は 兄君を差し置いて王妃に会いに行くことが知られ怯えている
王妃は 2人の王子に宮房田の証文を差し出した
母方の実家で暮らす身では不便だろうと “小遣い”を差し出され戸惑う2人
年長のウノン君が丁重に辞退すると キム・ギジュが厳しく諌めた
王妃もまた “祖母からの小遣い”として断れぬくさびを打つ
※官房田:王族に与えられる田畑
王子たちが下がると 貞純(チョンスン)王后は 兄を厳しく叱責した
2人を同時に連れてくるなど 目立ち過ぎると…!
この“計画”は 完全に準備が整うまで誰にも知られてはならないと!
ウノン君を推す王妃に対し ギジュは まだ幼く外戚も弱いウンジョン君の方が
後見人として権力を握りやすいと示唆する
摂政が撤回されたという情報は テスたち護衛兵をも動揺させる
さらにテスを驚かせたのは 持平ホン・グギョンが
司憲府(サホンブ)を辞職したという事実だった
※司憲府(サホンブ):不正の摘発・法的処置を行う司法権を持つ官庁
東宮殿に ホン・グギョンの姿があった
権力を得るためには手段を選ばないが 手にした権力は手段を選んで使うと
そう言っていたグギョンだったのに…と問い詰める王世孫
グギョンは弁明をしなかった
自分をかばい 苦境に立たされた王世孫を前に
こうして生きていることすら恥ずかしいと…
職を辞すというグギョンを サンは引き止めない
グギョンは 2人の同志の名を口にした
司憲府(サホンブ)ハン・ジョンミョンと
弘文館(ホンムングァン)オ・インチョルを使ってほしいと
※弘文館(ホンムングァン):公文書の処理と王の諮問に応じる官庁
その頃 宮廷の一角で チョン・フギョムが キム・ギジュとすれ違う
宮廷の綱紀を正すと息巻くギジュに フギョムは不快感を示す
困った時は訪ねて来いと話すギジュに
丁重に挨拶はしたが 微かに苦笑するフギョム
するとそこへ ホン・グギョンが通りかかる
ギジュは グギョンに向かって “王世孫様に取り入るゴロツキ”と言い放った
『他人の威を借りる奴がもっとも許せない!』
『ならば鏡をご覧になってはいかがです?
あなた様は 中殿様の威を借りて官職に就かれたのでは?』
『何っ?!』
『私はもう宮廷を去りますので 私に目を光らせる必要はありません』
『この野郎!!!』
ギジュは グギョンを滅多打ちに殴りつけた
殴られるままになり血だらけになりながら グギョンは倒れ込んだ
ボロボロになって ようやく立ち上がったグギョン
そこへ パク・テスが駆け付けた
グギョンは 笑いながら去ろうとする
必死に引き止めるテス あれは罠だったと 王世孫様に言えばいいと!
『王世孫様は きっと私を守ろうとなさり
重臣らにとっては 王世孫様を退ける絶好の機会になってしまう』
グギョンの本意を知り テスは泣きそうになる
その頃 ファワン翁主(オンジュ)は 養子であるフギョムを褒めちぎり
ようやく 王妃や吏曹判書(イジョパンソ)に要求出来る立場になったと…
※翁主(オンジュ):側室から生まれた王女 正室から生まれた王女は公主
※吏曹判書(イジョパンソ):任官や人事考課などを行う機関
しかし フギョムは楽観してはいなかった
王世孫がこれで終わるとは どうしても思えないのだ
キム・ギジュが宮廷に戻ったことも気がかりであった
これを知ったファワンも 絶対に何かあると考える
計算無しには行動しない王妃を 熟知している2人であった
恵嬪(ヘビン)ホン氏のもとへ
左議政ホン・ボンハンと 刑曹判書(ヒョンジョパンソ)ホン・イナンがやって来た
王世孫が再び王に呼ばれたことで どうにも落ち着かないのだった
※左議政(チャイジョン):領議政の次にあたる正一品の官僚
※刑曹判書(ヒョンジョパンソ):法や刑罰を司る官庁の長官
『これではまるで王世子様の時と同じでは?!摂政の最中に王様のお怒りを…!』
ホン氏は 2人を叱りつける
亡き夫の時も 心配して騒ぐだけで何もしなかったと!
英祖(ヨンジョ)は王世孫イ・サンに 幼き日のことを持ち出す
11歳のサンに 王がすべきことは何かと聞いた
サンは すでに行動を起こしながらも正解を答えることが出来なかった
その答えは何かを 今こそ聞かせてやろうというのだ
最も大事なことは“民を慈しむ心”
良い者も悪い者も 強い者も弱い者も 全ての民を包み込むのだと
頭では 十分に分かっているつもりの王世孫イ・サンだった
英祖(ヨンジョ)は分かりやすく 今回の一件に照らし合わせて説いた
『専売商人共は確かにけしからんが そのような専売商人もこの国の民だ
賢いが性根の曲がった子供に親がすべきことは?
短所を正し長所を伸ばすべきなのに そなたはどちらも潰そうとした』
うなだれるサン
英祖(ヨンジョ)はさらに その後のことについて触れた
自分の過ちを収拾しようと民に手をあげたと…!
『改革によって害を被る者のために 何か準備したか?
そなたは改革だ何だと騒いだだけであろう! だから全権を取り上げた』
言葉もなかった…
今さらながら 自らの未熟さを思い知るサンだった
テスは 悔しくてたまらなかった
手柄を立てたホン・グギョンが なぜ宮廷を去らねばならないのかと!
テスの怒りでサンの窮地を知るソンヨンだが ただ心配するしか出来ない
ひたすらに考え込むサンを 嬪宮(ピングン)孝懿(ヒョイ)王后もまた
見守ることしか出来ないのであった
一方イチョンは パク・タルホに会いに行く途中
春画の依頼人が捕えられる場面に遭遇する
このところ取り締まりが厳しく 春画が思うように売れないイ・チョン
タルホは その顔の青アザを見て驚く
聞けば 稼ぎが悪いことで女房に殴られたと
一緒に金儲けを考えようと言うイ・チョン このままでは女房に殺されると…!
図画署(トファソ)では…
別提パク・ヨンムンが 画員タク・チスを褒めている
画材が不足な中 記録画を仕上げたのは タク・チスただ1人だったのだ
しかし それはチスが ソンヨンに丸投げした記録画だった
※図画署(トファソ):絵画制作を担う国の機関
仕事の合間を見て ソンヨンは 茶母(タモ)たちに絵の描き方を教えていた
忌々しく睨みつける男たちだが やめさせることは出来ない
※茶母(タモ):各官庁に仕える下働き
『あの女は記録画も描けるのか!』
『何か欠点を見つけないと 追い出せないぞ』
憤慨する副別提カン・ドゥチだが タク・チスは気弱になる
ことごとく感心することばかりで 次第にソンヨンを認め始めていた
ソンヨンは パク・ヨンムンに命じられ 完成した屏風絵を届けに行く
嬪宮(ピングン)孝懿(ヒョイ)王后は 見事な出来栄えを大いに喜ぶ
『画員の講義は順調か? ちゃんと受けられているのか?』
『はい 毎日欠かさず講義を受けています』
王世孫の改革が 次々に取り消されている今の状況ではと
ソンヨンの立場を気遣う 孝懿(ヒョイ)王后だった
王世孫が 何日も書庫にこもっていると話すキム尚宮
ソンヨンはどうしても気になり 護衛官の訓練場へ行き
テスに会って小さな包みを渡した
今のソンヨンに出来るのは こんなことくらいだった
テスは さっそく包みを持ってサンに会いに行く
サンは ひとり 絵を描いていた
自分はまるで役に立たないダメな人間だと
何をしても問題ばかり起こすと いっそ何もしない方が…
と卑屈になっているサンに
テスは ソンヨンから渡された包みを差し出す
それは茶母(タモ)たちが描いた絵だった
これが ソンヨンからの伝言だった
図画署(トファソ)だけではない
護衛官も 毎日が充実していると話す
サンが改革したことは ちゃんと成果を上げていると伝えたかったのだ
『何もしない方がよかっただなんて…
恐ろしい宮中で 必ず生き延びると約束された筈です
そんな王世孫様が これしきのことで弱気になるのですか?!』
図画署(トファソ)で孤軍奮闘しているソンヨンを思い
自暴自棄になっていた自分を思い直すサン
一方 チョン・フギョムは
王妃が裏で何を画策しているのか突き止めつつあった
やはり キム・ギジュが大っぴらに2人の王子を連れ歩いたことで
容易にその背後を調べることが出来たのだ
2人の王子のどちらかを王位継承者に
王妃がその後見人になろうとしているのだとしたら…
父王の命を救い王世孫を退けたのは自分なのに! 完全に無視された
ファワンの怒りは頂点に達していた
王妃が摂政するとなれば 必ず自分も追い出されるに違いないと…!
交泰殿(キョテジョン)では
キム・ギジュとチェ・ソクチュが 今後の相談をしていた
ウンジョン君の後見を説得しているというギジュ
ソクチュは 王世孫が廃位にもなっていないのに…と苦言を呈す
※交泰殿(キョテジョン):王妃の寝殿
計画に水を差すのかと激昂するギジュ!
しかし 認めざるを得ない現実だった
今も 王世孫に対する英祖(ヨンジョ)の信頼は 実に厚いものだった
『ひと思いに消しては?!!!』
何とも考えなしに進言する兄を ギロリと睨む王妃!
チョン・フギョムは 街中でバッタリ ホン・グギョンに会う
豪邸を引き払い もとのあばら家に戻ったグギョンは
汚い格好で 肥集めの仕事をしていた
『まさに今の私にはピッタリの仕事でしょう 臥薪嘗胆といいます
越の勾践(こうせん)は 屈辱を忘れぬよう毎日肝を舐めました
私も肝を舐めるべきですが… 代わりに肥の臭いを嗅いでいます』
気が変わったら訪ねて来いと言い フギョムは去っていく
フギョムの誘いも 王世孫のことも 聞く気はなかった
グギョンは 今でも王世孫を信じていた
サンは 6日目にしてようやく書庫を出た
そして民の暮らしを見て廻るため 宮外へ行くと言い出す
ソ・ジャンボ カン・ソッキ そしてパク・テスが護衛を務めることに
以前のように活気を取り戻した市場を見て廻るサン
テスから話を聞いていたソンヨンは 離れた場所からそっと見守る
その時!
またしても専売商人が 違法商人の店を叩き壊していく
騒ぎに巻き込まれないよう 護衛の3人がサンを守る!
飛び出して行こうとするテスを サンが止める
一時的に暴力でこの騒ぎを止めても 何の解決にもならないのだ
サンは 近くの酒場に立ち寄り酒とつまみを注文する
隣の席に両班の客が2人座って 王世孫の噂話を始めた
『じきに廃位されるとか』
『滅多なことを言うな!』
『だって事実だろ』
『そうだそうだ!若造が出しゃばるからこういうことになる』
2人の両班の間に サンが自ら割って入った
王世孫本人だとは夢にも思わず 男たちは話を続ける
男たちは 貴重な品物が焼かれて損をしたという
それを受けてサンは 一緒になって“王世孫”の批判を…
我慢ならず立ち上がるテス
サンは(動くな!)と目配せしこれを制す
聞くに堪えない話になってきたところへ ひとりの老人が…
『目障りで聞いてられん!この国をこの有様にしたのは誰だ!!!
お前ら専売商人と老論(ノロン)派ではないか!!!』
老人に掴みかかろうとする両班を テスが必死に止める
それでも老人の口は止まらない
『専売商人と老論(ノロン)派はこの国から一掃せねばならん!』
言いたいことを言い放ち 奴婢の老人は行ってしまった
サンは テスに尾行させた
その夜 キム・ギジュが チェ・ソクチュの屋敷を訪ね
見せたいものがあると言い 山中へ案内する
ギジュの手下が何やら準備している 火薬のようだ
数日後の儺礼戯(ナレヒ)の宴で
花火と見せかけ王世孫を亡き者にしようというのである
※儺礼戯(ナレヒ):悪鬼を払う儀式
失敗すれば大逆罪になる
ソクチュは ギジュの気迫に戸惑いを見せる
一方 奴婢の老人を尾行したテスの報告によれば
老人は 滅多にすることはないが 百発百中の占いをするという
関心を持ったテスは 老人の家を訪ねてみることにした
部屋に老人はいなかったが 入ってみると中は本で埋め尽くされている
奴婢の老人が まるで学者のように…
壁一面に貼られた書物を読むサン
どれもこれも見慣れない書物ばかりだ
そこへ老人が帰って来た 書物は全て自分が書いたものだという
王世孫の身分を明かそうとするテスを止め 老人と向き合う
そして占いをしてほしいと頼むのだった
『私は占い師ではない』
『では野心を抱く逆徒で?』
『野心だと?!』
『そうでもなければ こんなにも王室を否定する文だけを書く筈がない』
『どこのお方か知らんが 生涯死を友として生きてきたようだな
せっかくだからひとこと…
気をつけられよ 今度こそその旧友と連れ立ちあの世に行くかもしれぬ』

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