☤ 同伊(トンイ) 第3話 ☤

『父さん!兄さん!』

官軍に連行される父親と兄を見て叫ぶ同伊(トンイ)

父ヒョウォンと兄ドンジュは 同伊(トンイ)を巻き込みたくない一心で…

(来るな)

(同伊(トンイ)ダメだ!)

泣きながらついて行く同伊(トンイ)の口を封じたのは 旅の僧だ

『父親か ついて行ってはダメだ』

『放してください 私の父さんが…!兄さんが連れて行かれる!』

ソ・ヨンギもまた衝撃を受けていた

身分の差を超えて師匠と崇めてきたチェ・ヒョウォンが

父ソ・ジョンホを殺した犯人であり 剣契(コムゲ)の首長だったとは…

※剣契(コムゲ):賎民による秘密結社組織

なぜこんなことになったのか… ヨンギはヒョウォンに会って話したかった

しかし ヨンギもまた剣契(コムゲ)の首長を支援したとして捕らわれてしまう

オ・ユンは 叔父オ・テソクを前にし今回の成果を報告する

ユンはテソクに尋ねる

『初めから西人(ソイン)派に罪を着せた方が』

『権力を持った者が黙ってやられると思うか

煩わされたが世間も忘れるだろう 賎民を守る奴などいない

だからこそ いけにえに選んだのだ』

おおむね良しとしながらも テソクは同伊(トンイ)を確実に始末しろと命令する

唯一 大司憲(テサホン)チャン・イッコンの 死の真相を知っているからだった

駆け付けたチャ・チョンスの口から 父親と兄が 剣契(コムゲ)の一員であり

父ヒョウォンが首長であると知り 同伊(トンイ)は驚愕する

『まさか…偉い人を殺したのも…』

『いや濡れ衣だ はめられたのさ 剣契(コムゲ)は奴婢を助けてた

誰かがそれを利用し 罪を押しつけたのさ』

旅の僧は ある寺に身を寄せ 同伊(トンイ)とチョンスをかくまう

しかし間近に迫った官軍の情報が入り 密かに裏道から2人を逃がすのだった

(さらなる悲劇が始まる あの子の悲劇は始まってもいない)


『すべてはあの子の残酷な運命による 七殺(チルサル)と陽刃(ヤンイン)だ

賎民として生まれた挙句 すべてを奪われ何も残らないだろう』

※七殺(チルサル):七つの凶運

※陽刃(ヤンイン):鋭い凶運

嘆く師匠に弟子が尋ねる

『天乙貴人の相が見えたはずですが』

『殺印相生… 命を落とさずに生き残れるとしたら

地位や業績を残すことになるだろう

賎民の王は あの子の父親じゃない

あの子自身なのだ』

※天乙貴人:天の貴人により助けられる吉相

※殺印相生:災いが転じて福となる相

捕盗庁(ポドチョン)の従事官ソ・ヨンギは 取り調べの中でも

チェ・ヒョウォンをかばい続けた

しかし 父親を殺されてもかばうのなら同罪だと詰め寄られる

チョンスと共に逃げる同伊(トンイ)

2人は剣契(コムゲ)の隠れがである もう1つの洞窟に逃げ込んだ

一時的に追っ手から逃れた同伊(トンイ)は チョンスから詳しい事情を聞く

『そうとも知らず 絹の服を着たいから…

問安婢(ムナンビ)に反対する父さんを憎んだ』

そこへ ケドラの父親を先頭に 仲間の剣契(コムゲ)が合流する

首長の娘である同伊(トンイ)の無事を喜ぶ一同

十数人ではあったが 義禁府(ウイグンブ)を襲撃し救出しようと話し合う

『ダメだ!破獄には人数が足りない!』

『急がないと殺されてしまうぞ!』

『正月は禁殺日です 大逆罪人でも刑の執行はしないので

15日までは平気です』

※破獄:脱獄のために牢屋を壊すこと

※禁殺日:刑を執行しない祝日などの特定の日

死を覚悟で捕らわれた者たちを救出しようと息巻くケドラの父

チョンスは 冷静にそれを引き止め 策を講じるが…

『時間がない!!!』

背後からの声に驚く一同

それは 仲間を裏切り首長チョンスを告発したチャンだった

せめてもの罪滅ぼしに 不待時斬首が行われると知らせに来たのだ

※不待時斬首:日時を問わず重罪人を処刑すること

何としてもヒョウォンを信じたいソ・ヨンギだったが

剣契(コムゲ)の砦から見つかったという文書を見て驚愕する

明日の処刑の前に 仲間を救出したいチョンスたちだったが

祝いのための爆竹を買うと偽り爆竹を大量に購入したくても

賎民の身分ではそれもかなわない

そこで同伊(トンイ)が 問安婢(ムナンビ)の絹の服を着たままの自分が

両班(ヤンバン)の娘に成りすまして店に行くと申し出る

父と兄を助けるため 何かしたいと懇願するのだった

※両班(ヤンバン):朝鮮時代の上流階級

幼い同伊(トンイ)を危険にさらすとしても 今はその方法しかなかった

ソ・ヨンギは チェ・ヒョウォンと密かに会う

砦から見つかった文書には ヨンギの行動が詳しく記されていた

剣契(コムゲ)を追い続けていたヨンギから機密情報を得るため

近づいたのだろうと詰め寄るヨンギ

身分の差を超え 友として また師と仰ぎ接してきたヨンギにとって

計り知れない衝撃の真実だったことは無理もない

しかし この誤解を解くことは ヨンギを危機に追い込むことになる

ヒョウォンは ひと言の言い訳もせずヨンギの前から連行されていく

(従事官様に 犯した罪を生きて償うことは出来ないと分かってます

もう私のせいで苦しまないでください 何も失ってはいけません

それならむしろ 私の罪だと思うのです

そうやって… 今の苦しみを乗り切ってください)

真夜中 牢屋に忍び込んだチョンスは 同伊(トンイ)の兄ドンジュと会う

しかしドンジュは脱獄を固く拒否し 父ヒョウォンの伝言を伝える

“生き残れ これが最期の命令だぞ”

救出のために仲間が皆殺しになるのではなく

逃れた者は生き残り 剣契(コムゲ)を存続しろと…

『それから同伊(トンイ)… 妹を頼んだぞ チョンス!

何としてもだ 同伊(トンイ)を… 守ってくれ』

2人の間のやり取りを知らず 同伊(トンイ)は市場にいた

ケドラの父親を召使いに仕立て 爆薬を買いに行く

同伊(トンイ)の顔を見て どこかで見たことがあると言い出す店主

ケドラの父は同伊(トンイ)を外で待つように促す

通りを歩く人影に注意しながら同伊(トンイ)が待っていると

路地の端で両班(ヤンバン)の服を着た女性が

付き添う男に向かって話をしている

声は聞こえないが 手のひらを握ったり開いたりしているのを見て…

(あれは…!)

大司憲(テサホン)チャン・イッコンが 死の間際に示したのと同じだった

その手の動きの意味が分かれば 死の真相に近づけるのだ

ほどなくして立ち去る女性が 何かを落としていく

駆け寄って拾い上げると それは蝶をかたどった帯飾りだった

そこへ その女性が戻って来る

同伊(トンイ)は 拾った帯飾りを手渡す

さっきの手の動きの意味を聞きたかったが…

その直後 大勢の役人がその女性を迎えにやって来た

追われる身の同伊(トンイ)に緊張が走る…!

女性は咄嗟に同伊(トンイ)の前に立ちはだかり その身を隠し…

(早く行け 気づかれるぞ 尋ね人の子だな

その服でも分かる 気をつけるんだぞ)

無事に爆薬を手に入れて戻ったケドラの父親たちに

チョンスは 思い悩んだ末の結論を言い渡す

仲間たちは口々に そうしてまで生き永らえたくないと訴える

しかしチョンスは…

『そうすべきでしょう 生きるんです

罪悪感に苦しみながら今日を覚えなければ…

絶対に忘れてはいけません

首長様と仲間たちを殺した者に 命で罪を償わせます

血を吐く思いで生き抜き やるべきことです』

仲間たちは涙にくれ それぞれの場所に散っていく

チョンスは同伊(トンイ)を連れ 船着場に来ていた

捕盗庁(ポドチョン)の役人だったチャンの口利きで船に乗れるのだった

人相書きの影響を逃れるため 男の子の服を着せられた同伊(トンイ)は

問安婢(ムナンビ)で着た絹の服を チョンスに渡す

チョンスにとっては 同伊(トンイ)が着たこの絹の服が重要だった

『同伊(トンイ) 一緒に行け』

『え?1人で?チョンス兄さんは?』

『お父さんやドンジュと一緒に行く』

『本当に一緒に来てくれるの?』

『ああ もちろんさ 嘘をついたことが?』

『いいえ』

チョンスは 剣契(コムゲ)の印のある鉢巻きを同伊(トンイ)に渡す

『お前がこの印を残したら すぐに駆け付ける』

『……いつ来るの? 3日…それとも4日後かな』

『もう少し… かかるな』

『遅くなってもいい でも絶対に来てね』

裏切った罪滅ぼしとして 同伊(トンイ)を守り抜くと誓うチャン

チョンスは 不安そうな同伊(トンイ)を笑顔で見送った

チョンスと別れ 船が出るのを待っていると 乗り込んできた男たちが…

『剣契(コムゲ)が逃走したそうだぞ』

『斬首される前にか?』

『ああ 仲間たちが移送中を襲撃したんだ

崖の方へ逃げていったらしい』

一瞬にして なぜチョンスが一緒に乗り込まなかったかを知る同伊(トンイ)

父と兄が斬首されることも知らなかったのだ

同伊(トンイ)は慌てて 動き出す船から飛び降りた…!

崖の上に追い詰められた剣契(コムゲ)たちを 容赦なく弓隊が攻撃する

チェ・ドンジュが集中攻撃によって命を落とし 仲間たちも次々に射られ

チョンスは 負傷したヒョウォンを支えて逃げる

しかし 矢は無情にもヒョウォンをつらぬく…!

『首長様!最期の命令に逆らいました…』

『お前たちみんなと… 一緒にいられてとても幸せだったぞ…

よりよい世の中で… 再会しよう』

1人生き残ったチョンスは 必死に抵抗しながら 最後は崖下に転落する

 

降りしきる雨の中 崖に上りつめた同伊(トンイ)は 凄惨な光景を見る

父のために作った巾着が 泥にまみれて落ちていた

血の海を 激しい雨が洗い流していく

父と兄の亡骸はどこにもない

いつでも駆け付けて守ると約束してくれたチョンスの姿もなかった…

旅の僧キム・ファンは オ・テソクの屋敷に呼ばれていた

ある人物の相をみてもらいたいという

そこに現れたのは 昨夜同伊(トンイ)を救った女性だった

『チャン・オクチョンと申します』

『王室の側室にしようと思っている

両班(ヤンバン)ではないが 機知に富んだ才女だ』

※チャン・オクチョン:後の張禧嬪(チャン・ヒビン)

『めかけなどとはとんでもない!それ以上の器です

王印・王官・王財の天上三奇を備えた天乙貴人の相です』

※王印・王官・王財:智恵・官職・財物を得る相

『ですから 王室に入れると間違いなく一番上に登り詰めるはず』

屋敷を去るキム・ファンは オクチョンだけに話す

『もう1人います』

『何のことでしょう』

『宮女様のような貴人が ほかにもいます

あなたは立ち向かうでしょうが できれば避けてください』

『立ち向かうなと…

悟りを得た方が 正当ではない方法を取れと?』

『光影相随 陽引影 光と影は表裏一体ゆえ常に共にある

同じ運命を呼び寄せる宿命 それが宮女様なのです

あなたはすべてを得て 何不自由ないはず

もう1人の者は すべてを奪われ1から始めることに』

『では… その者が影なのですか?』

『いいえ… 影はあなたの方です』

『え?すべてを得た私が 何もない者の影だと?』

『そうです 宮女様ではその者の輝きにかなわないでしょう

ですから できれば最善を尽くして避けていただきたい』

失意に泣き叫びながら 同伊(トンイ)は崖から足を踏み外し気を失っていた

山中の茂みで意識を取り戻し 真夜中の自宅に舞い戻る

『父さん寒い… 怖い 私も連れてって 私も一緒に行きたい

父さんと兄さんがいる所へ… 私も行きたい チョンスさんの所に…』

泣きながら眠りにつく同伊(トンイ)の耳に 亡き父の声が聞こえる

その優しい手が 愛おしげに頭を撫でてくれるようだ…

(同伊(トンイ) すまない お前のことを1人にしてしまい…

この非情な世界で耐え抜くよう願う この父を許してくれ

嵐が吹くだろう 恐ろしい強風が… お前を苦しめることになる

だがな お前には美しい目と優しい心がある

その心が 非情な風に勝ることは分かっているんだ

だから同伊(トンイ) 早く目を覚ませ 生きねばならない 起きろ

生きなければダメだ 早く目を覚ましてくれ 起きるんだ同伊(トンイ)!)


☝ <ランキング参加中>

よろしければクリックお願いします