こんにちは。精力高め太郎です。
前回、オナ禁は何日でテストステロンが上がるのかを調べて、「日数の線引きは存在しない」という、われながら身も蓋もない結論に着地しました。
そのとき最後に、こう書いたんです。オナ禁で動くかもしれない量より、睡眠を削って確実に失う量のほうがずっと大きい、と。
じゃあ、その睡眠のほうをどうにかしろよ、という話ですよね。
というわけで今回は、寝つきのサプリとしてすっかり定番になったマグネシウムを調べました。検索すると、やたらと「500mg」という数字が出てきます。
正直に言うと、この数字の出どころが気になって、また死ぬほど調べてしまいました。
先に結論を書きます。500mgは「効く量」ではなく、「便秘薬の量」でした。
目次
結論:500mgという数字に、たしかな根拠はありません
先に言ってしまいます。
「マグネシウムは500mg」という数字は、たった1本の、しかもかなり弱い研究から広まったものです。
しかもその500mgは、「マグネシウムそのものが500mg」という意味ですらありません。ここがまず、ややこしいところでして。
そもそも「酸化マグネシウム500mg」とは何なのか
日本で「酸化マグネシウム500mg」といえば、まず出てくるのはマグミット錠のような便秘薬です。私も昔、胃腸科でもらったことがあります。
酸化マグネシウムという物質は、重さの約6割がマグネシウムです。つまり酸化マグネシウム500mgに入っているマグネシウムは、およそ300mg。
一方、日本人の食事摂取基準では、30〜49歳男性のマグネシウム推奨量が1日380mg、50〜64歳で370mg。
そしてサプリメントなど食事以外から摂る分の上限は、成人で1日350mgと決められています。この上限が何を目安に決まったかというと、下痢なんです。1日360mgあたりからお腹がゆるくなる、と。
もうお分かりだと思いますが、酸化マグネシウムが便秘薬として売られているのは、まさにそういう理由です。
胃腸が弱い私にとっては、けっこう他人事じゃありません。
いちばん新しくて大きい研究は、たしかにプラスでした
2025年8月に出たばかりの試験があります(Nature and Science of Sleep)。
眠りの質に不満のある18〜65歳の155人を、グリシン酸マグネシウム(マグネシウムとして250mg)と偽薬に分けた、二重盲検のランダム化試験です。就寝の30〜60分前に2粒。
4週間後、不眠重症度スコアの下がり幅はマグネシウム群−3.9、偽薬群−2.3、p=0.049。
一応、勝ちました。
ただ、正直に書きます。効果量(Cohen's d)は0.2。統計の世界で「小さい」に分類される大きさです。
しかもp値は0.049。ギリギリで滑り込んだ形です。
ところが、この論文の“おまけ”の分析が面白かった
探索的な分析として、こう書かれていました。
食事からのマグネシウム摂取が少なかった人ほど、効き方が大きかった。
……これ、どこかで見た形ですよね。
ビタミンDの記事で紹介した3本セットです。不足している人が1年補うと総テストステロンが上がる(Pilz 2011)。足りている人が同じ量を飲んでも変わらない(Lerchbaum 2017)。
亜鉛30mgの記事でも同じでした。欠乏した年配男性は上がる(Prasad 1996)。運動習慣のある健康な男性は上がらない(Koehler 2009)。
ビタミンDはテストステロン、亜鉛もテストステロン、そしてマグネシウムは睡眠。測っているものが違うのに、出てくる形が全部同じなんです。
足りない人が埋めると戻る。足りている人が足しても、そこからは伸びない。
私が「ダイエタリーエイド=守りのサプリ」と呼んでいるものの正体は、たぶんこれです。3つ目のデータが同じ形で出てきたとき、正直ちょっと鳥肌が立ちました。
で、「500mg」の出どころですが
追いかけたら、Abbasi 2012という研究に行き着きました。
不眠のある高齢者46人に、酸化マグネシウム500mgか偽薬を8週間。結果は、不眠スコア・睡眠時間・睡眠効率・寝つきまでの時間・早朝覚醒、すべて改善。メラトニンが上がり、コルチゾールが下がった。
数字だけ見れば、文句のつけようがありません。ネット上の「マグネシウム500mg」は、ほぼこの1本が出どころだと思っていいと思います。
ただ、この論文には後年、かなり厳しい評価がついています。割り付けを隠したかどうかの記載がない。主要評価項目がどれか分からない(結果に8〜10個の項目が並んでいる)。試験登録もされていない。結果がp値だけで、平均の差が書かれていない。偽薬が何だったのかの説明もない。
2021年のメタ分析(BMC Complementary Medicine and Therapies)は、この研究を含む3本・151人をまとめて、寝つきまでの時間は約17分短縮(p=0.0006)、総睡眠時間は約16分増えたが有意差なしと報告しました。そして全体の証拠の質を「低い〜非常に低い」と結論しています。著者の言葉を借りれば、「医師が十分な情報にもとづいて推奨するには水準以下」。
前回のオナ禁の記事で、「7日で1.5倍」の出どころが撤回済みの28人の研究1本だった、という話を書きました。
いやぁ、ホントに、また同じことが起きていました。小さくて弱い1本から、数字だけが切り取られて一人歩きする。 これはもう、サプリの世界の風土病みたいなものかもしれません。
テストステロンを直接上げてくれるのか?
ここも調べました。期待していた方には申し訳ないのですが、弱いです。
Cinar 2011:体重1kgあたり10mgのマグネシウムを4週間。運動していない人もテコンドー選手も、遊離・総テストステロンが上昇。運動している人のほうが上がり幅は大きかった。
ただしこれは偽薬の群がなく、人数も各群10人前後。そして体重70kgなら1日700mg——さっきの上限350mgの、ちょうど倍です。真似する話ではありません。
Maggio 2011:65歳以上の男性399人で、血中マグネシウムが高い人ほど総テストステロンも高かった。ただし観察研究なので、「関係がある」までです。
つまりマグネシウムは、テストステロンを直接押し上げてくれる“攻め”のサプリではない。効くとしたら、睡眠を通した遠回りのルートです。
そしてその遠回りの先に、あの論文があります。1週間の睡眠制限で、若い男性のテストステロンが10〜15%落ちた。10歳分の老化に相当する(Leproult 2011)。 証拠の強さでいえば、今日出てきたどの研究よりも格上です。
寝つきが17分早くなることに意味があるとしたら、そこ経由なんです。
私ならこうします
まず、便秘薬の酸化マグネシウムを睡眠目的で飲むのは、私はやりません。目的が違いますし、私の胃腸では、効く前にまずお腹が来ます。
飲むなら、研究で実際に使われているグリシン酸マグネシウム(マグネシウムとして200〜250mgくらい)を、寝る30〜60分前に。上限350mgの内側に収まりますし、155人の試験が使った形そのものです。
そして何より、食事で足りているかを先に疑う。豆腐、納豆、海藻、ナッツ、そば。このあたりが食卓に出ていない日が続いているなら、埋める価値はあります。逆に足りている人が飲んでも、たぶん何も起きません。
私はスパルトT5を続けているので、そちらに入っている亜鉛と合わせて、「守り」が重複していないかは毎回見るようにしています。攻めのサプリと守りのサプリでは、お小遣いの使いどころが違うんです。
なお、お薬を飲んでいる方は自己判断せず、かかりつけの先生に相談してください。マグネシウムは飲み合わせで気をつけたい薬がいくつかあります。
まとめ:500mgは「効く量」ではなく「便秘薬の量」でした
- 酸化マグネシウム500mg=マグネシウムとしては約300mg。日本ではこれは便秘薬の規格で、サプリからの上限は1日350mg(超えると下痢)
- 「500mg」の出どころは46人・質の低い研究1本(Abbasi 2012)。メタ分析での評価は「低い〜非常に低い」
- いちばん新しい155人の試験ではプラスだったが、効果量は小さい(d=0.2)
- ただし食事からの摂取が少ない人ほど効いた=ビタミンD・亜鉛とまったく同じ形。守りのサプリの法則
- テストステロンへの直接作用の証拠は弱い。効くとしたら睡眠経由
数字が大きいと、なんとなく効きそうに見えるんですよね。
でも500mgという数字が答えていたのは、「どれだけ眠れるか」ではなく、「どれだけお腹に来るか」のほうでした。
40を過ぎても男盛りは諦めない。ただ、諦めない先はたいてい、こういう地味なところにあります。
参考にした論文・資料
- Magnesium Bisglycinate Supplementation in Healthy Adults Reporting Poor Sleep: A Randomized, Placebo-Controlled Trial. Nature and Science of Sleep, 2025.
- Mah J, Pitre T. Oral magnesium supplementation for insomnia in older adults: a Systematic Review & Meta-Analysis. BMC Complement Med Ther, 2021;21:125.
- Abbasi B, et al. The effect of magnesium supplementation on primary insomnia in elderly. J Res Med Sci, 2012;17(12):1161-1169.
- Çinar V, et al. Effects of Magnesium Supplementation on Testosterone Levels of Athletes and Sedentary Subjects. Biol Trace Elem Res, 2011;140(1):18-23.
- Maggio M, et al. Magnesium and anabolic hormones in older men. Int J Androl, 2011.
- Leproult R, Van Cauter E. Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men. JAMA, 2011;305(21):2173-2174.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」/健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」/マグミット錠 患者向医薬品ガイド(丸石製薬)