最近よんだ本にバイオリンのニスの話が出てきて 少し考えてみました


ストラディバリウスは秘伝のニスを使っていた なーんて伝説がありますが どうなんでしょうね?


木材を乾燥させるとこの写真のように細胞壁の残骸のスカスカなマトリックスになりますね


針葉樹の水分は50%くらいだそうですから、完全に水分が飛んでしまえば空隙率は50%ということです


でも 細胞壁の成分はセルロースでセルロースのような多糖類は水酸基がたくさんあって


結合水と呼ばれるなかなか「離れない」水が残留します。


実験室のバイオリン弾き  (乾燥した木材の電子顕微鏡写真)



下塗りするニスはこの写真にみえる細孔に浸透してセルロースとなじむと考えられます。


音の固体中の伝搬にはその固体の密度が深くかかわります。バイオリンのように一様連続体ではないものは


音の伝搬挙動は極めて複雑でしょうね・・ でも ざっくり言うと、カラカラに乾いた木材に最初に塗りこむ


下地のニスの特性・物性がバイオリンの音質に大きく影響するのではないかなと予想されます。先ほど


触れた「結合水」も結構重要な役割を果たしているように思います。 なんてったって「水」は極めて


特殊な物質ですからね・・・


この下地には松ヤニを少し溶かしこむということも書いてありました


松ヤニは所謂天然樹脂でこれがセルロースと何らかの相互作用する可能性は高いと思います。


例えば パン生地に油脂を練りこむことで、小麦粉でんぷんの老化を防止して柔らかい食感になります


これは多糖類(アミロース)と脂質の相互作用によりアミロースの再結晶化が阻害された結果です


木材のセルロースも結晶化しているわけですが、その結晶構造は水分の多寡で変化するでしょう


また松ヤニとの相互作用で結晶状態が変化することも考えられます。


また経過時変化も重要でしょう 松ヤニに含まれる樹脂は結晶化というよりはガラス状態にあると思われます


ガラスってのはその物性を把握するのが非常に厄介で極めて長い時間をかけて力学的に緩和します


バイオリンを弾くことで力学的なストレスを受けた木材(樹脂をふくむ)はその力学的ストレスを緩和させますが


その緩和速度がめちゃ長い・・緩和しきらないうちに次のストレス・・また次・・という具合に


積み重なっていくことで「ある一定の定常状態」になるのかな とぼんやり考えています。



それでは 化学合成樹脂を使ってオールドバイオリンを再現できるか? というところが興味深いですが


それはおそらく不可能でしょう  天然の素材というのはとてつもなく奥が深いものです。とても人間の


浅知恵(科学)では制御はできません



例えば塗料 ラッカーと言われるあれは硝化セルロースを有機溶剤に溶かしたものに色剤を分散させた


ものですが、こんな所謂「綿」からできたラッカーを凌駕する化学合成塗料はなかなかできないのです


ネールエナメルも原料はセルロースです。いろいろな化学合成樹脂が試されてきましたが、セルロースの


ネールエナメルに勝てるモノはまだ出現していないでしょう



可能であればオールドバイオリンの欠片でも手に入れば、いろいろ分析してみたいなーって思ってますが・・


デルジェスやストラドを少し削りとらせてくれる奇特な人はいませんよね~(笑)