抑留見聞記(2) 花札
抑留中、厚紙を切って何組かの花札の台紙を作った話は前にも記した。花札は1月(松)~12月(桐)の48枚が一組であるが、俺が関係したのは賭博用、一組(松~もみじ)の40枚である。
花札
時代は明治か大正か、せいぜい昭和の始め頃だろう。場所は関西。全国各地の賭場渡り歩く一人の博徒が居た。
この男或るとき、京都の名の通った花札製作所にに現れ、大量の花札を注文した。ただの品ではない、(札の裏を見れば表が分かる細工をした)「イカサマ花札」である。
口止め料を含め料と称し、破格の現金を積まれ、番頭は仕事を引き受けた。納期は1年。一年経ったら俺自身が受取に来る。それまで保管していてくれ。番頭との密約である。
「渡り鳥の俺には、住所はない」と名も告げずに立ち去った。
そして一年経ったが、店にくだんの博徒現れない。なにか故障でもあるのかと二年が過ぎ、三年目に入る。あの人亡くなったのかもしれない。店の製品倉庫の一角を占めているくだんの花札、そろそろ邪魔になりだした。
かくして五年‥‥‥。
こちらは博徒。丹念に地方の賭場を廻っている。
五年になるもまだ出てこない‥‥‥。
七年を経てようやく地方の賭場に待望の花札が出てきたのである。彼は札の裏を見れば表が透視できるのである。儲からないわけがない。巨万の富を得た。
その後、花札と縁を切り、出生地、関西の某県某市の名士となったそうな。市の図書館は彼の寄付によるものだとか。
2008.12.4記
用語解説
【花札】(はなふだ)
花合わせに用いる札。松、梅、桜、藤、あやめ(かきつばた)、
牡丹、萩、すすき(坊主)、
菊、紅葉、柳(雨)、桐の12種を描いた札を1~12月に当て、
それぞれ4枚ずつ合わせて48枚の札にしたもの、またそれを
使った遊び。