抑留見聞記(1) キセル | SAPPERの兵隊・抑留記

抑留見聞記(1) キセル

 

 北は北海道から南は九州まで、敗戦、抑留、復員を共に生き抜いてきた戦友諸兄も、流石、戦後六十有余年も経つと、便りのある人も年々減少、淋しい限りでである
 
 兵隊抑留時代を想いだし二、三記してみる。
 
 
 
     キセル
 
 昭和の始め頃の話だろう。場所は関西。金持ち連中の間で、夫々思い思いに、純金のキセルの胴回りを「龍虎」「鶴亀」あるいは「七福神・宝船」などなど、金細工した美術工芸品の所持持を自慢した時があった。
 
 あるとき、それが話題になり、それらの美術品を一堂に集めた品評会が催された。いずれも凝った逸品であったが、なかに一つ普段キセルとしてしているのか雁首にあたり煙草盆を叩く(灰を落とす)ため、せっかくの彫刻も潰れ吸い口は強く噛むため歯形くっきりという品があった。
 
 品評会の審査結果だが、審査員の目は「普段柔らかい布に包まれ桐箱に収まっているキセル」ではなく、如何にも使い古したデコデコのキセルを『金賞』としたとのことである。曰く「ここまで使い込むとは、誰にでも出来ることではない」
 
 
             2008.12.2記
 
 
 
   用語解説
 
【キセル】(カンボジャ)
 
   ①刻みタバコを吸う道具。金属製のものや、竹の管(羅宇(ラウ))の両端に雁首(がんくび)と吸い口をつけた張り交ぜなどがある。
 
   ②〔①が途中は竹だが両端が金属(金(かね))であるところから〕鉄道に乗車区間のうち、乗降駅付近だけの乗車券や定期券を持ち、途中を只乗りすること。キセル乗り。〔「煙管」とも書く〕