ぼた山 (前編) | SAPPERの兵隊・抑留記

ぼた山 (前編)

 

 列車はシベリア本線を西へ向かう。チタ地区に入ってから本線と別れ支線を北上。終点のブカチャチャ(Букачача)下車。
 
 一番先に目に飛び込んできたのは、ぼた山である。
 
 この地には三ヵ所の抑留者収容所(第一第二と山の分所)があった。
 
 俺は敗戦の年(1945)10月に第二分所に収容された。炭鉱夫要員だ。
 
 伏せたすり鉢状のぼた山は炭坑の表徴である。
 
 入坑当初、黒っぽくこまんじりしたぼた山も、石炭の増産に伴い、気がつけば“ぼた山”は大きく成長し、山のあちこから白っぽい煙が立つようになった。自然発火である。夜間などあちこち赤い炎が見えるようになった。白い噴煙は、我々がこの地を去るまで消えることはなかった。
 
 シベリアの厳冬、零下30度の夜である。一日の炭坑作業を終え、夕食を済ませて少しホッとしかけたとき、緊急応援に駆り出された。炭積(貨車に石炭を積む)作業だ。
 
 
 
つづく
 
 
 
用語解説
【ぼた】石炭採掘の際、混じって出てく岩石や質の悪い石 炭塊。ずり。
【ぼた山】ぼたを捨ててできた山。ずり山。