抑留と囲碁 | SAPPERの兵隊・抑留記

抑留と囲碁

 
 シベリア抑留中に「碁」を覚えた。
 
 『師匠』は兵隊仲間のSさんである。
 
 手頃な厚紙を46×42.5センチメ-トルの大きさに切り「碁盤」とした。罫線(縦横19路)の割りつけ、墨入れは俺がひきうけた。
 
 罫線引き用の直定規と碁石用木材は戦友T先輩(大工)作である。厚紙は安全カミソリの刃(両刃)で切断した。罫線の墨入れは「烏口」である。「碁石」は白樺で丸棒を作り、これを輪切りにした。個数は約400(正確には361)。
 
 半分は煤を水に溶かし飯盒で煮る。これが黒石、残り半分を白石とした。碁笥(ごけ)も用意した。
 
 この「囲碁用具1式」なかなか評判よく、碁盤など数面製作注文があったくらいだ。木製の碁石は、軽く不安定だったが、碁打ちは喜んで飛びつきゲ-ムを楽しんだのである。ところが、木の丸棒輪切りは、木口面に手垢・脂などで白石が汚れ、黒白の判別がしにくくなってしまった。
 
 そこで、白樺の板の巾を碁石の大きさ(少し大き目)とし、次に四角に切り落として碁石とする。この四角い碁石を四角より八角、八角より十六角煉瓦を代わりにして1個1個研ぎあげた。加えて厚みも丸み付けたのである。‥‥ 碁石らしくなり、汚れもつきにくくなった。
 
 この代用碁石、手間はかかったが評判は上々であった。さて、碁の手ほどきだが、素人の俺に対して、冒頭に記した『師匠』のSさんの薫陶(くんとう)を受けどうにか出来るようになった。有難いことです。以来『師匠Sさん』に感謝している次第です。
 
 あれから63年「碁歴」だけは長い。
 
 何「棋力?」いいこと問うてくれました。不肖の弟子未だ、ザル碁の域を出ておりません。
  
                   2008.9.3記
 
 
 
用語説明
 【烏口】(からすぐち)製図用具の一。くちばし状の部分にインクをいれ、線を引くもの。
 【碁笥】(ごけ)碁石を入れる、ふたのある丸い容器
 【木口】(こぐち)木材を横に切った断面。きぐち