兵隊・抑留記(102) 執拗なアクチブ
抑留後期~帰還まで - その7
さて、「アクチブ」(労働貴族)はしつこい。
ある日、こともあろうに〔“俺”の作業状況〕査察のため、わざわざ炭坑内にやって来た。
そして曰く、「反動分子」が「リカボーイ」みたいな軽作業とは怪しからん。と、直ちに「ナワラダボイシュク(運炭夫)」にまわされたのである。
“俺”は平気だ。どんな作業に回されてもそれなりにこなす自信と体力がある。ただ必要以上のことはやらない。兎に角、体力温存である。
「リカボーイ」の作業を説明しよう。
まず、コンベアーから出てくる石炭をトロッコを少しずつずらしながら平均に積む。次に、“石炭満載のトロッコ(実車)”に“空車”をぶつけて前方に押し出すのである(無論、コンベアーは運転したまま)。
ところが、作業途中、下手をして“実車”が一旦停車してしまうと、一人では頑として動いてくれないのである。何処で力を入れ、何処で力を抜くか、たかが“トロッコ押し”だが、なかなかのくせ者であり、コツがいるのである。
作業は労力的には楽だが、“トロッコの実車と空車の関係”“線路の傾斜”“線路のくせ(段差‥‥)”など十分知悉してないと、うまく作業が進まないのである。
「リカボーイ」を“俺”と交代した“奴”はそれを知らないから、石炭はトロッコに入らず、線路に落ちコンベアを止める始末、「監督」は「アクチブ」に食ってかかり、“俺”は「リカボーイ」に復帰した。
つづく