兵隊・抑留記(95) タバコの種火を保存するには
抑留後期 - その16
抑留者に嗜好品として《タバコ》が支給されるようになった時期については覚えていない。が、この《タバコ》「マホルカ」という。
「マホルカ」は、乾燥した煙草の葉のいい部分を取り除いた、葉脈部分を細かく刻んだものである。早く言えばタバコのかすである。これを細長く新聞紙などに包んで、紙の端を唾液で貼り付けて、タバコが完成するというわけだ。最初、慣れない内はいくら舐めてもうまく貼れず、タバコ一本にも苦労したものだ。
マッチなどないため、「火」は火打石からとることになる。
火打道具の構成は、火打金(三角形又は櫛形の鋼鉄・鉄片)火打石(石英の一種、火縄と火消し筒(親指位の茶筒状のもの・ブリキ製)である。
左手の親指の付け根に火縄を軽く挟む、次に火打石を親指と人差し指でしっかり保持する。鉄片を右手に持ち、石と打ちあわせ火を発生させる。火花には外側に線香花火みたいにぱちぱちとはねるものと、内側に太く2~3本孤状に走るものがある。この内側に走る火花を火縄の先端にうまく着床、着火といけば成功というわけである。が、火縄に問題がある。火縄の一端は火を付けた後、火消し筒に入れて、消しておかなければならない。火縄を火消し筒から引き出したとき、黒く焦げて炭化した上に白い灰状のものがある。この白い部分に火花が乗ると着火する。白い部分がなく黒い炭化部だけだと、うまく着火しないのである。
建設作業の最初の休憩時には火打道具でタバコの火を得るが、せっかく作った『火』は次の休憩まで持たせるために作業場付近の原に落ちている牛糞(ひと冬過ごした)に火を移しておくのである。牛糞はもぐさ状であり、臭いもなく便利であった。
つづく