兵隊・抑留記(91) 過酷なコンクリート運搬作業
抑留後期 - その12
さて、共同住宅建設の話を補足しよう。
宿舎の外壁厚は60Cm位あった。兎に角コンクリートのボリュームがあり過ぎる。いくら打設しても工事は遅々として進まない。それでも、布基礎(ぬのぎそ)など低いときはまだいい。が、だんだん高くなり、登り桟橋を重力に逆らって登るコンクリート運搬はいやが上にも疲労困憊(ひろうこんぱい)する。
そこで、少しでも労力を削減する方法はないかと考えた。
骨材やコンクリートの運搬に蜜柑箱様の箱の両側に棒を一本ずつ、二本取りつけたもの、この運搬用具を〈ナシンキ〉という。前後2人で一組で使用する。
・ だが、同じ容量では、骨材単体とコンクリートでは、コンクリートの方が、遥かに重い。
・ 平地での〈ナシンキ〉による材料運搬は、前後の重さが平均しているが、当たり前のことだが、登り桟橋では前は軽く、後を支持する者に重量が片寄る。且つ、液状のコンクリートは、箱が傾くため容量が少なくなる。
そこで考えたのが、可傾式コンクリートミキサーに付属する《骨材(石炭殻・砂・セメント)投入用鍋》を利用して《コンクリート受け鍋》とし、ミキサーの巻き上げ装置を使って、《鍋に入ったコンクリート》を足場上のホッパーまで巻上げ運搬することとし、これに必要なレール2本(溝形鋼)をソ聯側に要求・提案したところ、いとも簡単に要求は却下されてしまった。
そこで、次案として登場したのが可傾式コンクリートミキサーを足場上に揚げてしまう方法である。
・ 骨材を足場上まで人力で運ぶ労力は残るが、液状のコンクリート運搬(重い・零れる)より遥かに労力の消耗は少くなる。
・ コンクリートはミキサーより直に木樋に移され所定位置に運ばれるので、作業効率は遥かに向上する。
この方法は、ソ聯側に対しての要求項目がないので、直ちに実行することにした。
つづく
《用語解説》
コンクリートミキサー
骨材・セメント・水などを所定配合割合に練り混ぜて均質なコンクリートを作る機械、ここでのミキサーは、《可傾式コンクリトミキサー》であった。
神楽桟(hand winch)
木材・石・建物など重量物を牽引、揚上させるための道具、2本の土台、2本の冠木(かぶりき)および4本の柱で構成された枠を地面に固定し、上地板(うわじいた)と下地板(したじいた)の中心にあたる轆轤(ろくろ)という心棒を2本の手木(てぎ)で回転させ、物に掛けてある縄を巻き寄せる。「神楽桟」「神楽」「おかぐら」「車知」ともいい、特に近世初期には「南蛮轆轤」(なんばんろくろ)ともいった。
ホッパー(hopper)
セメント・骨材・コンクリートなどを受け入れて流下させるための漏斗状の装置。