兵隊・抑留記(74)  尋問を受ける | SAPPERの兵隊・抑留記

兵隊・抑留記(74)  尋問を受ける

 
抑留中期 - その5
 
 
 部屋の中、前面の机に制服のソ聯将校、3、4名、脇に通訳の女性が一人。将校連中の前に椅子が一つ。その椅子に腰掛けろという。何だか様子がおかしい。これでは犯人扱いか、訊問の始まる前に『ソ聯憲法第○△条により‥‥で始まり、真実のみをはなし‥‥嘘と分かったら監獄行きだ‥‥』と、書かれた紙切れに署名しろとのことだ。“俺”はロシア語は分からん。『紙切れの内容が分からんのに署名しない』(もし、ソ聯が気に入ったので帰化したい‥‥)などと書かれた紙切れだったら、取り返しがつかないと思ったのである。
 
 しかし、『お前が、どうこう』というのではなく、他のことを聞きたいのだというので仕方なく署名した。
 
 先ず、人定訊問である。この女性通訳、満洲のどこかの三業地あたりで働いていた人かもしれない。言葉が乱暴・粗雑である。

 

 『生まれた、何処』   まあ分かることは分かる。
 『歳いくら』      こんな通訳で本当に大丈夫なのか? はなはだ頼りない。

 

 訊問内容を要約すると

 

 問 『お前は、鉱山管理局で働いているが、給料は幾ら貰っているか』

 俺 『一銭も貰っていない』

 

 結局、鉱山管理局で払った給料(報酬)が、“俺”の手には渡らず、途中でネコババした者がいるということだ。
 
 無論、“俺”に対する給料が出ていたなんて、はじめて聞くことで、全然知らないことであった。調査・訊問は『給料』の件だけであり、終わったのである。わけが分からず呼び出され、不安だっただけにホッとしたことを覚えている。
 
 しかし、この事件以降、鉱山管理局に再び呼ばれることはなかった。
 
 
つづく