兵隊・抑留記(66)  息ができない - ワゴンに挟まれる | SAPPERの兵隊・抑留記

兵隊・抑留記(66)  息ができない - ワゴンに挟まれる

 
ブカチャチャ炭鉱 - その8
 
 
☆ 《リカボーイ》(ワゴン押し)の話
 
 切羽より送られてくる石炭は、下の坑道にあるワゴン(鋼鉄製・容量2トン位か)に積込み、所定の場所に集積する作業である。
 
 入坑当初は、リカボーイは二人で行なっていたが、馴れるに従い一人になっていた。
 
 その日も、順調に作業は進んでいた。何台か溜まった石炭入りワゴンの連結が終わったところで、電気牽引車が来た。
 
 牽引されるワゴンの後について集積場まで行く。これは、集積場がゆるい上り勾配になっているため、牽引車がワゴンを切り離した時、後戻りしないよう最後尾ワゴンの車輪に楔(くさび)を支(か)うためだ。
 
 ところが、この日の集積場は満杯状態で、線路の分岐点近くまでワゴンがある。狭い坑内だ。隣のワゴンと線路の間のわずかな空間に半分寝たような状態で思い切り手を伸ばし、楔(くさび)は車輪まで、あと少しとなったところで、牽引車はワゴンを切り離したのである。
 
 《ガクン》‥‥緩やかな下り勾配を楔のないワゴンは後退する。伸び切った体は後退するワゴンと隣のワゴンに挟まれ、《グググー》息は詰まり、背骨はくの字だ。ところが、背骨が折れる寸前にワゴンは停止したのである。線路上の《“俺”の楔》がようやく外れず利いたのである。背骨はクタクタだが‥‥‥《助かったァー》。
 
 復員後、度々腰が痛むのは、これが原因の一つかもしれない。
 
 
つづく