兵隊・抑留記(63) 坑道で丸太を引きずる
ブカチャチャ炭鉱 - その5
☆ 坑内での《木材運搬(レサノース)》は主に木材を上部坑道から切羽まで運ぶ作業である。木材(丸太と丸太を割いた半月型のもの)は地上から上部坑道まで、手押しトロッコにより運ばれている。木材はすべて手頃(スリムで軽い)なものだけではない。どうしても運びやすいものから手がつけられる。したがって、根株に近い部分がやたらと太い材とか、必要以上に太い(当然重い)材などは運搬されずに残されていく。
木材を引きずって運搬するため、道具《細いワイヤーロープの一端の小さな環〔蛇口(へびぐち)〕に他端を通して輪を作る。他端には棒切れなどをつけて引きやすいようする》を使う。
先ず、木材の端にロープの輪を通して引き締める。次にロープの他端を引くことにより木材は坑道を引きずられていく。
ところが、地上からの木材補給が順調な時はいいが、補給に齟齬(そご)があったりすると、根株付きや、やたらと重い木材も運ばねばならない。この運搬が簡単ではない。
マイナス30度以上の地上からプラス4度位の坑内に入った木材の表面は坑内の湿度(水分)が凍り、最初はうっすら白くキラキラ光っているが、日にちが経つに従い、湿度は次々と木材全面に凍りついて成長し、まるで雪の花が咲いたようになってくる。
重いので、引きずろうにもビクともしない、雪の花を払う、数人で抱える、。服はびしょ濡れとなる。 横に寝て手送りする三角横穴は、ただでさえ狭い空間であるのに、太い丸太や、根株に近い丸太などを通すのは、人と丸太が中々交(かわ)らなくなったりして、ひと苦労することになる。“労多くして、効率悪し”である。
つづく