兵隊・抑留記(60) 切羽(きりは)
ブカチャチャ炭鉱 - その2
石炭はこの坑道(E~F)の壁(炭層)を横(C~D方向)に払うことによって産出される、というわけだ。無論、この主要坑道(トンネル)の横壁を上から下まで全部払ってしまうと、上下の横のトンネルが潰れてしまうので、上下夫々10m位は炭層を残して掘削していくわけである。
炭層を払ったあとの空間(裏山を大きな天井と見れば《支柱》は割り箸みたいなものであろう)は、急激な大崩壊を回避するため、石炭を払った後に残った用済み支柱を取り除き大自然の土圧でゆっくりと潰していくのである。
この石炭を払う空間を《切羽(きりは)》という。切羽は、長さ2m位の半割材(桁)と2本の支柱で天井部分を支える。支柱の間隔は2~3米位である。
切羽はこの《クリピーチク(支保工)》により作業空間が確保されるというわけである。見方のよって石炭産業とは、少量の木材と大量の石炭との交換作業ともいえる。
《クリピーチク(支保工)》が使う丸太材などは、上のトンネルから搬入する。ところが、切羽はどんどんと横に(B~C方向)移動しているため上のトンネルから10m進むと炭層を払った跡の裏山にぶつかる。ここから横に炭層と潰れた裏山との間、僅かな三角形の空間が切羽に向かって残っている。
この空間が木材など運び入れる大切な要路なのである。切羽が横に進行しするに従い、裏山は一日一日と大自然の圧力で潰れが進行し、三角空間も益々狭小となり、やがて使用出来なくなってしまう。
したがって、三角空間が使用できなくなる前に予測した位置に上のトンネルから10m掘削して切羽の到着を待つというわけである。
下のトンネルと裏山の関係は、“上”を逆にした形になるが、“上”の三角形になる部分は、“下”ではコンベア(石炭運搬用)の盛り替え作業があるので潰れ速度を遅らせるため、支柱間隔を狭くしてあるが、これもやがては大自然の中に埋没してしまう。
切羽には上方から下方に向けて樋型のコンベアがある。樋に載った石炭は下方にゆっくり上方に速く動く。これで石炭は下方にザッザッと送られる様になっている。このコンベアを動かすモーターは相当強力であった。と記憶する。
つづく
