兵隊・抑留記(59) 未体験の炭鉱に入る
ブカチャチャ炭鉱 - その1
☆ 抑留初期、兵隊は色々なことを経験しているが、炭坑については殆ど知識がなく、無条件に怖がったり、ビビッテいた時期である。〔Tより炭坑へ〕を選択した“俺”にしても、全てが未経験であり、見ること聞くことみな新しい体験であった。
★ I隊隊員・S氏 (奈良・奈良 昭和21年5月没 発疹チフス)(戦友会名簿)
Sさんとは炭坑の《三尺層》で一緒だった。三尺層とは、厚み90cm位の炭層のことである。
シベリア・ブカチャチャ・第2炭坑での話である。
先ず、話に入る前に、一枚のダンボール紙をイメージしてください。
・ 紙の四隅を時計回りに夫々ABCDとする。
・ 紙を横から見ると、直線AD(向こう側は直線BC)となります。
・ それからAB線を上に、DC線を下に斜めに傾けたダンボール紙をイメ
ージしてください。
・ このダンボール紙が《炭層》です。
ブカチャチャ炭坑では、私の記憶によれば、ダンボール紙《炭層》二枚の間に別の紙《岩盤》を挟んだ形、すなわち炭層は上層・1m50cm厚、そして5~60cm厚の岩盤を挟んで、下層・90cm厚の炭層2層が傾斜角約19度位か、地下に存在しているのである。
先ず、地表から炭層(A~D線)に沿って地中深く斜めに坑道(トンネル)を造る。次に、この主坑道に直角(A~B・D~C)方向、炭層の上部と下部に坑道を造る。
この3本〔コの字型〕の坑道はこの炭坑の中核をなす存在である。
・ A~D線は、作業員の出入り口であり、産出された石炭を地上に運び出
す坑道。
・ A~B線は、炭層の上部にあり、主に坑内で使用される木材の運搬用ト
ロッコ(手押し)通路である。
・ 炭層の下部にあるD~C線は、電気機関車(十数台の石炭満載のワゴン
を牽引する)により石炭をD点に集め、又、作業員の主要な通路でもあっ
た。
われわれ抑留者(日本人)が働いていた当時は、このD~C線より下部の炭層には手が着けられていなかったと記憶する。
さて,この上下の坑道(A~B,D~C)を結ぶもう一本の坑道(E~F)を、主坑道A~Dに並行して造る。
つづく