兵隊・抑留記(56) このゲンコ預かった
抑留 - その6
10月中旬か下旬の初め頃には、兵舎も形態を整え、天幕生活から兵舎生活に移り、暖房の恩恵を受けることができた。
しかし、ここで第2中隊長Tと衝突してしまった。何が原因だったのだろう、“俺”にはよくわからないが、彼は彼なりに鬱積した何かがあったのだろう、多くの兵の中でいきなり“お前みたいな曹長は使い道がない”と、頬を殴られた。
多分、“俺”の意見具申や何かで日頃からの鬱積したものが重なり、カンにさわっての爆発だろう。(活字にすると意見具申だが、彼、T中隊長にすれば“文句”の多い奴位のところか)。他所から転属して来た早々から、大きな顔をしやがって。とでも思ったか、とにかく、事毎に面白くなかったのかも知れない。
2回目、殴りかかってきたから、一歩踏み込んで、彼の右手首をぐっと押さえ込んだ。“このゲンコ預かった”彼、青くなり震えていたっけ。どう見ても“ヤクザ”ぽい。
抑留の身でありながら、このザマだ。チョッピリ反省するが、性格なんてそうそう簡単には、直らないものだ。それにしても、殴られ損である。
どうも面白くない。“こんな奴のところにいつまでも居られるか”と思う。
つづく