行軍(つづき)
支那大陸の北部やモンゴルで強風のため吹き上げられた多量の砂塵が、偏西風に乗って日本に飛来する現象を、歳時記(春)に、霾(つちふる)、霾(バイ)、霾(よな)ぐもり、霾風(バイフウ)、霾天(バイテン)、黄砂などとある。
この『黄砂』の本拠地での行軍のこと。横殴りというより吹き上がるような強風は大粒の砂塵も巻き上げ、頬に痛い。眉毛、まつ毛、鼻、口回りなど埃で白く、太陽はかすみ、まるでおぼろ月のようだ。
行軍に先立ち兵の携行する銃は、敵襲に備え弾丸を装填、安全装置を確認する。当然、銃はどんなに悪天候でも常にむきだしである。
そこで銃内部に塵埃雨水などの侵入防止として、銃口に手製の紙キャップ(古葉書などで作製)で覆い、他の隙間などは鬢(ビン)付け油で密封する。
「道は一本真っ直ぐがいい」とは、何かの格言で見た記憶があるが、平坦で道幅もありしっかりした道ばかりなら『4キロ行軍』も楽にこなせる。
大陸の作戦地では舗装された道などなかなかお目にかかれない。道幅が広かったり、狭かったり、小川に架かる狭い橋、泥濘、片側崖片側谷などの幅の狭い山道もある。
当然、前が詰まれば、後方は渋滞である。それもいつ出発か分からないので、銃を担ったまま待機である。
「隘路をようやく通過。気がつけば本隊は遥か前方、急追。」では、休む暇が中々取れない。
『4キロ行軍』も条件により苦労することもある。
2008.03.05記
【鬢付け油】(びんつけあぶら)
日本髪で鬢を張らせたり、髪を固めて形づくるのに用いる固く練った油。
生蝋を植物油で練って香料を混ぜたもの。