兵隊・抑留記(46) 敵機襲来
敗戦 - その2
北上するダイヤが中々組めないのか、奉天・操車場に小半日は居ただろう。奉天駅頭を散見する。付近の道路には満人らしき死体がころがっている。治安当局者自体、このような状態の中では、事態が混乱して手が回らぬのが実状だろう。土色の壁、埃ぽい街との印象だ。
ようやく北上である。先々の駅では、邦人婦女子満載の貨車とすれ違う。
いやが上にも緊迫感が漲ってくる。
北上中、列車が急停車し、空襲警報が発令された。我々工兵隊の行動は迅速だ。《下車、散開》の号令で、直ちに貨車から100m位離れて散開した。河南戦線で敵のP51の機銃掃射など実戦の経験から、先ず列車から離れることだ。
同じ列車の歩兵部隊は列車から待避せず、将校が《さっさと逃げる工兵の腰抜け共‥‥‥》と、軍刀を振り回してわめいている。相手は飛行機だ。軍刀振り回して何となる。実戦の経験がない部隊とはこんなものか、我々からすれば阿呆集団に見えた。
敵機にすれば、列車は格好な獲物である。特に機関車を狙う、あと列車には兵員の外なにが載っているか分からない。たとえば、爆薬が積載されており、これが爆発したら、その付近の兵員の損害は計り知れない。
幸い、敵機は他方面に向かい、ことなきを得た。
つづく