兵隊・抑留記(45)  ソ聯軍、満洲に侵攻 | SAPPERの兵隊・抑留記

兵隊・抑留記(45)  ソ聯軍、満洲に侵攻

 
敗戦 - その1

 
☆ 独工○○聯隊の主力(聯隊本部と第1、3中隊)も南支方面より北上中とのこと、あと一週間もすれば、われわれと合流する。との情報もあり、いよいよ《第2中隊の寄生虫的存在》から解放される日も近い。と、大いに期待していたのである。
 
 そんな最中に軍命令は発令された。
 
 曰く。《直ちに、先発隊として、満洲・通化・防衛陣地構築のため出発》と。
 
 8月1日、原隊(第3中隊)復帰を目前にして、第2中隊(先発隊)と共に、支那・河南省・鄭州を出発、開封・徐州・濟南・天津・唐山を経て、8月9日山海関通過・満洲国に入る。この日、8月9日は日ソ中立条約(1942年4月に締結された、日本・ソ聯間の領土不可侵・中立維持を約した条約)を一方的に破棄したソ聯は不法にも《日本弱し、やるなら今》とばかり満洲に攻め込んできた日である。

 ソ聯軍の満洲侵攻により、国境付近はもとより、停車駅毎に刻々と入ってくる情報は深刻である。列車ダイヤの混乱した中で、わが工兵隊を乗せた輸送列車は錦州――奉天(瀋陽)を過ぎて、満洲・南東部の通化方面に向かっていた。
 
 ところが、奉天――吉林の中間点の〈梅河口(バイカコウ)〉まで行った列車は停車した儘、通化に向けなかなか発車しない。
 
 混沌とした中で命令変更があった。機関車は後部に付け替えられ、元来た道をバックし、奉天(瀋陽)の操車場に入り、北上待ちである。
 
 奉天・操車場は、何編成もの客車・有蓋貨車・無蓋貨車で一杯であり、北満の戦禍をのがれて南下する邦人婦女子でひしめきあっていた。暫時の停車時間に降り立った婦女子は先ずトイレである。いつ発車するかわからない列車からあまり離れられない。操車場全体がトイレと化している。若い娘が母親だろうか袖を広げた人の向こうで用を足している。白いお尻が印象的だ。機関車は水・石炭など又、邦人は食料などの補給がついたのだろう。慌ただしく一編成毎に出発していった。《兵隊さん頑張ってください》の声をのこして。気持ちの引き締まる一瞬である。
 
 
 
つづく