兵隊・抑留記(44) 空襲!命中か?
初年兵教育 - その6
「臥竜崗」付近の地雷掃討を終え更に南下、尹河左岸の部落「大盆陽」に至る。「大盆陽」は支那大陸での作戦行動で“俺”が到達した最南端ということになる。「大盆陽」での任務は尹河に架かる橋梁の補修・監視であった。
ここでは昼間空襲に遭う。その日は、作業の合間に蛸壺を掘る訓練をしていた。と、微かに爆音がする。尹河の南の空に黒点が二つ、みるみる大きくなってくる。〈空襲〉だ。林の中に全員〈待避〉!。確認したら一名足りぬ。〈N〉だ。林の反対側部落の土塀の辺りからのろのろこちらに向かおうとしている。――伏せろ――敵機は双発の爆撃機二機だ。すでに爆撃態勢に入り尹河の上空に差し掛かったところで、なにやら黒いものをパラパラ落とすのが見えた。
〈N〉が土塀に沿ったところで伏せるのを確認。
低空で飛行機が通過して間も置かず《ダダーン ダダーン》と数発部落直撃である。〈N〉の伏せたあたりの土塀が土煙で一瞬見えなくなった。
てっきり、〈N〉がやられたと思う。
ところが〈N〉は映画の中のスローモーションの如く、ゆっくり起き上がり土塀の中を覗くではないか。 助かったァ。
犠牲者なし、ホッとした一瞬である。
その後、南方に展開していた友軍は戦線を縮小し、逐次北上して来るようになった。われわれも最後の友軍が通過後、7月下旬、作戦が変更され、奥地前線より撤退してきた歩兵部隊の通過を最後にして橋(舟端)を撤収し、第2中隊・主力の集結して居る河南省・鄭州(ていしゅう )まで撤退・合流した。
つづく