行軍 | SAPPERの兵隊・抑留記

行軍

 

 工兵部隊の移動は、目的地近くまでなるべく鉄道を利用する。無論客車ではない貨車(有蓋貨車・無蓋貨車)である。貨車を降りた後はひたすら徒歩である。
 
 「4キロ・6キロ行軍」という。1時間に4キロメ-トル又は6キロメ-トル歩くことだ。1時間(60分)のうち45分で歩き、あと15分休憩というわけである。
 
 午前中4時間、昼食休み1時間、午後2~3時間行軍である。宿営地では、天幕を張る。水を確保する。水は川の水(流水)を使う。茶色に濁った水である(池の水など溜り水は使わない)。川の水でも生水は絶対飲んではいけない。赤痢菌など病原菌がうようよしているそうだ。
 
 必ず煮沸して利用する。
 
 濁った水で炊飯する。多少ジャリジャリするがしかたない。
 
 翌朝、食後水筒を煮沸水で満たし、昼食を携行、天幕を畳み出発準備完了である。
 
 
 軍靴〔編上靴(へんじょうか)〕と読む。
 
 初年兵時代、班付の古兵から「足を靴に合わせろ」なんて無茶なことをいわれたものだ。「馬鹿の大足、間抜けの小足、中途半端のろくでなし」の足だ。『ピッタリ』なんてあるわけがない。それでもなんとか合わせている軍靴だ。半日も歩けば足の裏は「マメ」(水疱)だらけだ。
 
 休憩後の第一歩が痛い。それを我慢して最初に2~3回飛び跳ねる。と、痛さがぼやけてきて安定する。
 
 そうだ「子供の頃、転んだり、薄の葉などで切ったりして生傷は絶えたことなどない。風呂の湯がしみて実に痛い。思い切ってドブン。「アッ」しみて痛いが瞬間的なものだ。後はマヒして痛くない」‥‥あれと同じだろう。
 
 兵隊はひたすら歩くのみ
 
 
                                    2008.2.14記
 
 
【行軍】(こうぐん)軍隊が徒歩で長距離を移動すること
【有蓋貨車】(ゆうがいかしゃ)扉のある貨車
【無蓋貨車】(むがいかしゃ)屋根の無い貨車  砂利・石炭等用