兵隊・抑留記(33)  洛陽で杜子春を想う | SAPPERの兵隊・抑留記

兵隊・抑留記(33)  洛陽で杜子春を想う

 
 
独立工兵聯隊 Ⅱ - その2
 
 
 
☆ 《黒石関の橋梁架設を終わり、七里河に駐留す》――(戦友S氏 資料)
 
その後、中隊は黒石関を後にして白馬寺を過ぎ洛陽西郊外の七里河に進駐、付近の警備に就く。
 
 氾水・コロウカン・黒石関・白馬寺と洛陽の東側は麦畑が多かったが、七里河付近は高粱(コーリャン)畑が目につく。これは麦の取り入れが済んだためかもしれない。駐屯地のすぐ側に小川が流れている。幅4~5m、深さ臍(へそ)位か、水は濁っているが、午後になると川に入り水浴びだ。汗を流す。底は泥でぬるぬるしているが、あまり濁さないように静かに入る。こんな小川でも大陸の川は延々と流れているためか、太陽熱を十分吸収して上面から30~40cmはまるでお湯であった。膝から下は冷たい。しゃがむと尻が冷たい。

☆ 伝奇小説「杜子春伝」は中国・晩唐の李復言(りふくげん )編『続玄怪録』中にあるものだが、要約すると、
 
《杜子春という若者が現世をを離れ、入仙(にゅうせん )を志す。
  道士の課す試練に耐えるが、最後に戒律を破り宿願を果たせない。》
 
 “俺”が読んだのは無論、芥川竜之介翻案の『杜子春』である。
 
 《或春の日暮れです。唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる‥‥》で始まる。
 
 その、洛陽の西門に立ち、しみじみとあの怪奇小説・杜子春とその時代を想う。
 
 
 
つづく