兵隊・抑留記(32)  地下住居ヤオトンとは | SAPPERの兵隊・抑留記

兵隊・抑留記(32)  地下住居ヤオトンとは

 
独立工兵聯隊 Ⅱ - その1
 
 
 
☆ 《窰洞(ヤオトン)》について触れておこう。
 
 《窰洞》とは黄河流域に広がる黄土高原において、黄土を切りとり、掘ってつくられた生土の洞穴居住空間をいう。この地下住居《窰洞》には、主に崖面に横穴を堀込んだ靠山(カオサン)式あるいは山懸(ヤマカケ)式と呼ばれる形式と、平坦な大地に矩形の縦穴を掘り下げることでできた中庭《院子(インズ)・坑院》の四面の崖に横穴を掘り込んだ下沈(カチン)式と呼ばれる二つの形式がある。
 
 氾水→コロウカン→黒石関→白馬寺→東十里舗→洛陽とこの辺り一帯、延々と続く広大な麦畑の中に、突如、長期間の浸食によるものか大地が裂け、地面がすとんと落ちている箇所がある。落差10mはあるだろう。住民はこの崖地に横穴を堀り、居住している。靠山式(山懸式)窰洞である。
 
 このような自然の崖地を利用したものの外に、麦畑の中に麦の穂と同じくらいの高さの土塀を回した一郭がある。四角に回した土塀の中、矩形の縦穴を掘り下げ、この崖面(東・西・北面)三面の横穴を住居と貯蔵庫としている。深さはやはり7~8米はあったろう。残りの南面には階段を設けてあった。下沈式窰洞である。
 
 村あれども村見えず。一般の建物が地表面から凸型であるのに対して、窰洞は凹型の居住空間といえる。霾(つちふ)る大地における生活の知恵というわけである。
 
 黒石関に駐留していた時など、この《カオサン式ヤオトン》住居を利用したものである 半円筒形の曲面天井は案外高く(入口面を高くしてなるべく奥まで外光を取り入れる効果もある)夏涼しく(外は暑くてもヤオトンの中は寝苦しいということはなかった)、また、住民の話によると冬は逆に暖かいとのことである。
 
 黒石関のヤオトンは前面の広場に上面平らな寝台位の大きさの石が置いてあった。これは現地住民の説明によると、日中、太陽熱で熱くなった石の上にアンペラを敷き裸に布団一枚かぶり、満天の星を子守歌にして寝るのだそうだ(朝まで十分冷めないとのことである)。
 
 
つづく