兵隊・抑留記(28) 不気味な霊廟を通過する
独立工兵聯隊 Ⅰ - その3
昼下がり、丘のはずれで休憩している通信隊を見つけた。やれやれ一安心と、ロバの背の荷物を下ろし、荷車を牛から外して、われわれも昼食だ。
この台地から右手に洛陽の城壁が見える。後で聞くところによると、通信隊自身が司令部を見失い城壁に近寄り過ぎたとのことであった。
と、間もなく通信隊は休憩を終り、荷車にサッと馬をつけ出発してしまった。又、取り残されてしまった。心細いが仕方ない。あせってもどうにもならない。覚悟を決めて、十分な昼食時間をとり、ゆっくり、確実に荷をつけて、通信線を頼りにして超スローペースの進軍であった。
しばらく行くと、左手の麦畑の中に砲弾が散乱している。見ると麦の茎が或る直径範囲すり鉢状にない。砲弾の集積場だったのだろうか、土は殆ど掘れていない。薬莢内の火薬の誘発だろう薬莢内は空であった。見事である。
途中、右手に廟(祖先の霊をまつる建物)があった、何となく静かである。これを不気味というのだろう。あとで分かったことだが、ここに相当数の敵兵が隠れていたそうだ。7名位で通過したのだから、危ない危ない。
廟を通過して1時間以上は歩いたろう。と、道路の中央付近に地雷が付設してあった。この地雷には強く踏まれた跡[軍馬の蹄(ひづめ)跡]がある。付近を注意して見るがこれ一個で、他には見当たらない。
《地雷は爆薬を直径30~40cm・厚さ6cm位の円板状鋳鉄製箱に収め、中央に雷管・信管を装着し、信管には安全ピンがある。このピンを踏み切ると起爆する仕掛けである。信管の上面を緖型鉄板で覆う。この緖型鉄板と爆薬箱を4ヵ所ボルトで結ぶ。 これは鉄板の何処を踏んでも信管のピンを踏み切り起爆するように細工してある。次に地面を掘り、地雷を入れる。上面の緖型鉄板の上に薄い木板を敷き土で覆う。これで地雷の付設完了である》。
つづく