発達と老化の理解
問69 生理的老化の学説に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 エラー破局説では、加齢によって臓器や器官が機能低下することで老化が生じると考える。
2 消耗説では、活性酸素による細胞の損傷で老化が生じると考える。
3 フリーラジカル説では、加齢による臓器や器官の萎縮や縮小に対して、それを補う再生機能が低下することで老化が生じると考える。
4 機能衰退説では、細胞内のDNAが損傷することで老化が生じると考える。
5 老化プログラム説では、人の細胞分裂の回数があらかじめ決まっていることで老化が生じると考える。
老化について
老化の原因には、遺伝子学上の原因と、環境による原因があります。
遺伝子学上の原因としては、「プログラム説」、「エラー説」があり、環境による原因として、「活性酸素」、「成長ホルモンの減少」、「ストレス」があります。
プログラム説
- 遺伝子DNAに老化プログラムが組み込まれていて、そのプログラムに従い老化が進行するという説で、根拠となるのは、細胞の寿命にあります。
- 遺伝子の末端には、細胞分裂の回数をカウントする部分があり、細胞は決められた回数分裂すると、それ以上の分裂を停止し、寿命を迎えます。これが生命の寿命に関係しているのではないかといわれます。
エラー説
- 紫外線や放射線、化学物質によってDNAが傷つけられ、遺伝子が突然変異を起こしたり、タンパク質の構造にエラーを蓄積し、老化を招くという説です。
活性酸素
- 体内に侵入した細菌やウィルスを撃退するために白血球から放出される物質ですが、細胞の細胞膜を作る不飽和脂肪酸と結びつくことで酸化し、過酸化脂質となります。この過酸化脂質が体の組織や細胞を壊すことで老化の原因となります。
- また、活性酸素は、動脈硬化や心筋梗塞、リウマチ、糖尿病などの原因になるといわれます。
成長ホルモン
- 体を成長させ、組織を再編成する働きを持ちます。古い細胞を除去し、新しい細胞を生み出すために、成長ホルモンは必要となりますが、年齢を重ねることにより、成長ホルモンの分泌量は減少するため、新しい細胞が生まれず、体の組織や器官の機能低下が起こります。
ストレス
- 「ストレス」によって免疫力が低下すると、体の抵抗力が弱くなり、病気にかかりやすくなります。また、ストレスによって免疫力が低下することにより、活性酸素に対する抵抗力も弱くなるため、老化が進行します。
消耗説
- 本来、細胞が生きていくために必要なものが、長年にわたって徐々に消耗し、量的あるいは質的にある一定の限度を下回ったところで、細胞が機能を失ったり死んだりすることが細胞の老化であり、これによって個体の生命が維持できなくなるというもの。
ラジカル説
- エラー破局説の1つに、フリーラジカルによって遺伝子に変化が起こるというラジカル説がある。
- ラジカル(フリーラジカル)は一般に、分子または原子団に不対電子を持つ化学種を指し、その代表に活性酸素がある。
機能衰退説
- 加齢に伴って活力や生体能力が低下する傾向をいう。
- 老化による身体変化は成熟期に達したあと,40歳くらいから始り,皮膚のシワ,頭髪や歯の脱落,視力や聴力の低下,運動機能の低下などがみられる。
- また外見からはわからなくても,脳や消化器,呼吸器,心臓と血管,さらには泌尿器や内分泌系など,内臓のあらゆる機能の低下や予備能力の減退となって現れ,加齢とともに直線的に低下していく。
- このほか,精神の硬直化,記憶力,判断力なども低下してくる。
- 活力の低下が始る時期は臓器によってまちまちである。視力や聴力は 10歳,感染に対する抵抗力は 15歳,知的能力は 20歳,筋力と協調運動は 25歳でそれぞれピークに達するといわれ,その後は徐々に低下する。
➡ 間違い。加齢によって臓器や器官が機能低下する←消耗説の説明でしょう。
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- 「エラー説」は、紫外線や放射線、化学物質によってDNAが傷つけられ、遺伝子が突然変異を起こしたり、タンパク質の構造にエラーを蓄積し、老化を招くという説です。
- 細胞が生きていくために必要なものが、長年にわたって徐々に消耗し、量的あるいは質的にある一定の限度を下回ったところで、細胞が機能を失ったり死んだりすること←消耗説
選択肢2 消耗説では、活性酸素による細胞の損傷で老化が生じると考える。
➡ 間違い。活性酸素による細胞の損傷で老化が生じる←活性酸素の説明でしょう。消耗説は選択肢1の内容。
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体内に侵入した細菌やウィルスを撃退するために白血球から放出される物質ですが、細胞の細胞膜を作る不飽和脂肪酸と結びつくことで酸化し、過酸化脂質となります。この過酸化脂質が体の組織や細胞を壊すことで老化の原因となります。←活性酸素
選択肢3 フリーラジカル説では、加齢による臓器や器官の萎縮や縮小に対して、それを補う再生機能が低下することで老化が生じると考える。
➡ 間違い。
エラー破局説の1つに、フリーラジカルによって遺伝子に変化が起こるというラジカル説がある。
ラジカル(フリーラジカル)は一般に、分子または原子団に不対電子を持つ化学種を指し、その代表に活性酸素がある。
選択肢4 機能衰退説では、細胞内のDNAが損傷することで老化が生じると考える。
➡ 間違い。DNAの損傷はエラー説です。機能衰退説は下記を参照。
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加齢に伴って活力や生体能力が低下する傾向をいう。
老化による身体変化は成熟期に達したあと,40歳くらいから始り,皮膚のシワ,頭髪や歯の脱落,視力や聴力の低下,運動機能の低下などがみられる。
また外見からはわからなくても,脳や消化器,呼吸器,心臓と血管,さらには泌尿器や内分泌系など,内臓のあらゆる機能の低下や予備能力の減退となって現れ,加齢とともに直線的に低下していく。
このほか,精神の硬直化,記憶力,判断力なども低下してくる。
活力の低下が始る時期は臓器によってまちまちである。視力や聴力は 10歳,感染に対する抵抗力は 15歳,知的能力は 20歳,筋力と協調運動は 25歳でそれぞれピークに達するといわれ,その後は徐々に低下する。
選択肢5 老化プログラム説では、人の細胞分裂の回数があらかじめ決まっていることで老化が生じると考える。
➡ 正しい。下記を参照。
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遺伝子DNAに老化プログラムが組み込まれていて、そのプログラムに従い老化が進行するという説で、根拠となるのは、細胞の寿命にあります。
遺伝子の末端には、細胞分裂の回数をカウントする部分があり、細胞は決められた回数分裂すると、それ以上の分裂を停止し、寿命を迎えます。これが生命の寿命に関係しているのではないかといわれます。
正答は選択肢5でしょう。