心理学理論と心理的支援

 

心理学理論と心理的支援の最後の問題です。

 

 

問14 カウンセリングや心理療法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選べ。

 

1 認知行動療法では、クライアントの発言を修正せず全面的に受容することがクライアントの行動変容を引き起こすと考える。

 

2 社会生活技能訓練(SST)では、ロールプレイなどの技法を用い、対人関係で必要なスキル習得を図る。

 

3 ブリーフセラピーでは、即興劇において、クライアントが役割を演じることによって、課題の解決を図る。

 

4 来談者中心カウンセリングでは、クライアントが事実と違うことを発言した場合、その都度修正しながら話を聞いていく。

 

5 動機付け面接では、クライアントの変わりたくないという理由を深く掘り下げていくことが行動変容につながると考える。

 

 

 

一つ一つ確認していきましょう。

 

 

認知行動療法は、簡単にいううと、「物事の捉え方と行動を変えていく」 こと

 

認知行動療法

  • 行動療法の理論や技法を用いるとともに、認知にも働きかけることによって、問題の改善を図ろうとする治療法です。
  • 認知行動療法では、学習( S )と生体の反応( R )の連合の媒介変数として、内的過程である「認知」を仮定し、その認知に働きかけることで行動変容を導くという認知行動的アプローチを用います。
  • 不適応の問題や精神疾患を抱えるクライエントに対し、まずは問題点を整理することでクライエントの自己理解を促進します。
  • さらに、その後も、問題をセルフコントロールしながら合理的に解決できるようにすることが目標となります。
  • 行動療法を基盤とするため、「認知」という生体の内的過程も客観的な測定データとして数量化し、科学的実証的方法を用いて検証することを重視するのが特徴です。
  • 実証されたアプローチを提供しようという「エビデンス・ベースド・アプローチ」が重視される中、認知行動療法は注目されている心理療法の1つです。
     

認知とは何か。

  • 考え方や価値観、イメージなどと捉えるとわかりやすいかもしれません。
  • 認知行動療法は、これらに問題や歪みを抱えるクライエントに、特に有効な治療法といえるのです。
  • 具体的には、気分障害、抑うつ、全般性不安障害、恐怖性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、外傷後ストレス障害、摂食障害、アルコール依存といった、さまざまな疾患・障害に有効と考えられています。
  • 認知行動療法といえば、認知的介入の効果の是非が論じられがちなのですが、認知的技法単独での適用は必ずしも効果的な症状の改善をもたらさないことがあります
  • そして、効果的な認知の変容には、適切な行動の変容や、目に見える症状の改善が必ず伴ってきます。
  • そのため、認知行動療法における行動的技法と認知的技法は、決して独立した技法ではなく、相補的に機能する技法群と捉えられていることを覚えておきましょう。
  • さて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、論理療法、認知療法、ストレス免疫訓練、自己教示訓練、モデリング療法などは、この認知行動療法に含まれます。
 

選択肢1の、修正せず全面的に受容、これとは違いますね。

 

 

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

  • 社会的スキル訓練や生活技能訓練と訳されます。
  • 解決しようとする治療技法です。積極的に学習させることで、対人関係などの問題を不適切な行動を修正し、効果的な対人行動や社会的スキルを
  • 行動療法の諸理論、オペラント条件づけや社会的学習理論、また、認知行動理論を背景に発展をとげてきたもので、認知行動療法の技法の1つに分類されることもあります。
  • 基本的な進め方は、まず、目標となる社会的スキルを段階的に習得可能なようにプログラムし、教示します。
  • そして、モデリングによって、それを学習した上で、実際にロールプレイをおこない練習、即座に強化します。
  • さらに般化のために、日常生活における課題を定め、それを実行します。
  • 具体的には、"あいさつの仕方・話し方・状況や文脈の理解・相手の気持ちの推測・場面に適した服装と動作・お礼の仕方・相手の話の上手な聴き方・相手の表情や態度からの感情の推測"など、SSTの学習課題やテーマ設定には、膨大な数バリエーションを想定することができます。​​​​​​​

 

選択肢2の、ロールプレイなどの技法を用い、これは良いですね。

 

 

ブリーフセラピー

  • エリクソン,M.の理論による、短時間で問題の解決を図る心理療法で、「短期療法」とも訳されます。
  • 不適応などの問題や、その解決行動に対し、クライエントが用いている特定のコミュニケーションパターンに戦略的に焦点化し、それを変容させることを治療目的としています。
  • ブリーフセラピーは、コミュニケーションパターンのどの部分に焦点化するかで問題焦点型(MRIモデル)と解決焦点型(BFTCモデル)とに分けられます。
  • 「問題焦点型」は、問題を問題として見なすコミュニケーションパターンを変化させることで、問題解決を図る方法です。
  • 「解決焦点型」は、考えられる解決方法をクライエントが自発的に導き出す手助けをすることで問題を解決を図る方法です。
  • もともと、家族療法のコミュニケーション派から発展していきましたが、家族に限らず、さまざまな社会集団に応用され、また、問題や解決行動に関する特定のコミュニケーションのみを扱うという点において、それらとは異なっています。

 

選択肢3の、即興劇、とは違いますね。

 

 

来談者中心療法

  • ロジャーズ,C.Rにより提唱された心理療法で「クライエント中心療法」とも呼ばれます。
  • 人間は誰しも、潜在能力や自己成長能力としての実現化傾向を持っていると考えがベースにあります。
  • それらを阻害する外的圧力を取り除きさえすれば、人は自然とよい状態に成長できるというのです。
  • つまり、不適応や精神疾患は、クライエント自身の評価やイメージのまとまりである自己概念の中に経験的自己をうまく取り込めず、否認や抑圧、または歪曲するといった自己不一致の状態に置かれることで生じると考えます。
  • したがって、来談者中心療法の目的は、症状の消去ではなく、自己概念と経験的自己「自己一致」となります。
  • 具体的には、「無条件の肯定的関心」をクライエントに寄せ、クライエントの感情的表現に対して「共感的に理解」し、表現された感情的内容をそのまま、もしくは要約して返すことによって伝えていきます。
  • これを「感情の反射」といいますが、これにより、明確には理解していなかった真の感情状態への気付きが可能となるのです。 ​​​​​​​

 

選択肢4の、事実と違うことを発言した場合、その都度修正しながら話を聞く、とは違います。

 

 

動機づけ面接

  • 行動を発現し維持することで、一定の方向へと導いていく過程を表すものである。
  • 動機づけは大きく分けると動因と誘因がある。
  • 動因とは人の内部にある要因によって行動が引き起こされるもので、欲求や要求とも呼ばれる。
  • 動因の中でも生存に不可欠な食事や睡眠、排泄などは生理的欲求と呼ばれる。
  • 誘因とは外部からの要因によって行動が引き起こされるもので、このとき動因がそれほど強くなくても行動は引き起こされる。
  • 例えば、食欲が満たされているにもかかわらず、食後にデザートを見せられると食べたくなるのも誘因の1つといえる。
動機付け面接
  • 来談者中心療法的にクライエント自身が現状をどのように把握しているかどの方向に向かいたいと感じているのか感情や価値観を協働探索する中で、対象者自身の矛盾を拡大し、両価性を探り明らかにしそれを解消する方向にクライエントが向かうようにしていく。
 

選択肢5の、理由を深く掘り下げていく、とは似ているような気がするけど、少し違うような。

 

 

 

以上を踏まえて、解答は、選択肢2、とします。