能楽の舞台の下には、現在でいうスピーカーの役割を果たすある仕掛けがされている。これによって能楽をより楽しむことができる。

「能楽(のうがく)」とは、「能(のう)」と「狂言(きょうげん)」の総称で、共に「猿楽(さるがく)」から発展した日本の伝統芸能である。これらを演じるための舞台を「能舞台(のうぶたい)」という。

能楽の代表的な型の一つに「足拍子」というものがある。その名前の通り、足を踏んでとる拍子で、舞台を足の裏全体で強く踏んで音を立てる型である。能舞台にはこの足拍子をより効果的に魅せるある仕掛けがある。

古くからある能舞台の床下には共鳴装置として「大きな甕(かめ)」がたくさん埋まっている。この陶器の「甕」を埋めることでお客さんに足拍子のよい音が響くようになっている。

これらの「甕」はその角度まで微調整されており、縦向きや斜め向きなどそれぞれ向きがバラバラに設置されている。これによりスピーカーのような働きをして、能楽堂全体に音が反響する仕組みになっている。