物語の冒頭語り手は、 

家名の汚点となるゆえ、本名は名乗れない。

仮に“ウィリアム・ウィルソン”と名乗ります。

彼の実家が名家なのが伺えます。


彼曰く、家系の性格的特徴を色濃く受け継いだのと、

間違いなく両親に甘やかされて育った為に、

両親が気がついて、性格を矯正し、

躾直そうとした時には手遅れの状態でした。


主人公は、イギリスのとある村の寄宿学校で

学生生活を送っていました。

傲岸不遜な性格から、級友たちの間で

権威を振るっていましたが、

ただ一人、同姓同名、姿形もよく似た、

入学日も生年月日も同じ、

周囲からは兄弟ではないかと噂される男だけは、

けして彼の意に沿うことはありませんでした。


もう一人のウィルソンは、語り手のウィルソンが、

なにか宜しくないことを目論むたびに

さりげなく、しかも周りには気づかれることなく、

語り手だけにはわかる方法で、ことごとく邪魔をしてきます。


とある事がきっかけで、語り手は寄宿学校を自主退学します。

その後、イートン校、さらにオックスフォード大学へと進学しますが、もう一人のウィルソンも、

語り手の行く先々に必ず姿を現します。



「ウィリアム・ウィルソン」はドッペルゲンガーを

扱った有名な作品ですが、

もう一人のウィルソンは語り手の良心の具現化でも

あると解説されています。


「ウィリアム・ウィルソン」

エドガー・アラン・ポー作

巽 孝之訳

新潮文庫