まずは私ごとですが、
僭越ながら私、
髪をショートカットにするたびに、
傷ついてきた過去を持っています。
最初にショートにしたのは中学生か高校生の時。
私は洗顔のＣＭやdocomoのポケベルのＣМで光り輝いていた
広末涼子に憧れていました。
当然広末と同じポケベル買いましたし、
花屋でチューリップ一輪買いましたし（ＣＭで広末が買ってた）、
髪も広末ヘアにしたいと思いました。
美容院ですごくすごく勇気を出して、
蚊の鳴くような声で、
「広末涼子さんみたいな髪型に……」
って言ったら、
美容師さんが「あー、はいはい」みたいな顔で、
「末広さんですね」
って謎に間違えてたあの夏まだ覚えてる。
髪を切って鏡に映った私は、
広末でも末広でもなく、
キノコの王みたいで、
鏡の中をどんなに探しても、
広末涼子はいなくて、どこにもいなくて、
帰ったら父に「猿みたいだね」と言われ、
思春期の心は傷ついて、
家の廊下の片隅で泣きました。
そして誓いました。
もう二度とショートカットにはしない――
でも数年経って、
私はその誓いを忘れていました。
社会人になって間もなく、
私は髪をショートに切りました。
たぶんまだ、広末涼子になりたかったんだと思います。
メイクも覚えたし、
広末涼子になれるって思ったんだと思います。
当時、大企業から左遷されてきた、
穏やかでいい人ばかりが集まる小さな会社で、
「粗品」と書かれた袋にボールペンを詰める仕事を
課長と部長と共にしていたのですが、
課長が
「髪切ったんだね」
と話しかけてくれて、
「あれに似てるね、矢田亜希子」
と言ってくれて、
え、矢田亜希子ってショートだっけ？
でも矢田ちゃんに似てるの嬉しい！
と思っていたら、
「間違えた。和田アキ子」
と言い直されて、
雑居ビルの階段の片隅で泣きました。
二度とショートにはすまいと、
人生二度目の誓いをしたのでした。
それからは誓いを守り続け、
私の髪はロングをキープ。
子どもが生まれるのに備えて
髪を短く切る人も多いですが、
hitomiが第四子出産に備えて髪を切ったのを見て、
私も切ろうかなとふと思ったのですが、
いかんいかんと。
ショートにした自分に泣いてきた黒歴史を忘るることなかれと。
それに髪にクセがあって、
肩より上にすると右側の髪がはねるので、
長いので結んでる方がむしろ楽だしと。
子どもが生まれてからもロングをキープ。
でもついに、切ってしまいました。
育児に疲れ、髪乾かすのがもう面倒で。
産後から髪質も変わってきたし、
40才過ぎたら綺麗なロングヘアとか無理なんじゃと思い。
ストレートパーマとかかけたから、
もしかして右側の髪がはねるクセとかなくなってるかもだし、
切っちゃえと。
そして今、
二度と髪は短くしないと三度目の誓いをしました――
私がなんでこんなに短い髪が似合わないかというと、
顔とかもそうなのですが、
頭の形が悪いからなんです。
頭の形が良くないと、短い髪って似合わない。
頭の形が良いと、なんか何してもスタイリッシュ。
なので、我が子は頭の形良く育ててあげたいなと思い、
妊娠中、育児グッズを揃える時に一番最初に買ったのは、
ドーナツ型の枕でした。
ドーナツ枕に寝てる新生児時代の我が子可愛い！！
帝王切開だったので、
生まれてきたときのたいちゃんの頭の形はとても綺麗で、
ドーナツ枕でこれをキープしていかねばと思っていたのですが、
ある時どういうわけか、頭の下にあるはずの枕が、
頭の上に乗ってたんですね。
なぜ…？
新生児で手もまともに動かせないのに、
どういう状況から頭の上に…？
これが顔の上だったら窒息しちゃう……。
と思って怖くなってドーナツ枕を取ったのですが、
たいちゃん右向きで寝るクセがあって、
そうすると頭の右側が凹んでいくんです。
なのでしばらくしてまたドーナツ枕に寝かせたのですが、
ある日またこうなっていて、
原因がわからないのが怖すぎるので、
枕を完全にやめることにしました。
右側を向かないように、
まいたタオルを右側においたんですけど、
やっぱり右側を向いてしまって、
タオルをおさえる形でひよこも置いて左側に向けたんですけど、
しばらくするとやっぱり右側を向いていて、
ああ！また右側向いてる！
と、右側に向いてるのを発見するたび、
頭の形曲がっちゃう！
と発狂しそうになっていて、
生後三カ月経つ頃には、
右側の頭がしっかり斜めになってしまった絶望。
ここからたいちゃんの頭の形と格闘する日々が始まります。
つづく