数ヶ月前。

育児に疲れ果てたので、
ベビーシッター体験コースをお願いしてみた時のことです。

最初からベビーシッターさんに子どもを預けてどこかへ出かけるのは少し不安なので、

子どもを見ていただいている間に隣でパソコン仕事をさせてもらう感じでお願いできればなと思い、

まずはいくつかのベビーシッターサービスで
体験コースみたいなのを申し込ませてもらいました。


しかしながらコロナ禍でベビーシッター業界はてんやわんやの時期。

私が申込みした翌々日に、
ニュースでベビーシッターの会社の方が
「一日千件の申し込みがあって…」
と疲れた様子でインタビューに答えていらっしゃいました。

なのでベビーシッター業界の皆様がとても忙しい時にベビーシッターをお願いしてみた。

これはそんな体験記です。



各会社からなかなか返信がこない中、
すぐにレスポンスをくれたA社。

会社で選んだベビーシッターさんを派遣してくれる会社です。

希望の日にちに空いてる人が見つからなかったと連絡があり、

別日で何日か候補を送ったら、
この日にこの方が行けますと、プロフィールを送ってくださいました。


田中マリエルさん。


フィリピンの方だけど日本語ができるとのこと。


今言葉をなかなか発しないたいちゃんには、
日本語だけを教えたいなと思っていましたが、
日本語ができるなら大丈夫だな。

名字が田中だから日本の方と結婚されてるんだろうな。

保育園での英語講師の経験があるそう。

フォトグラファーやクリエイターの仕事をされていて、
フィリピンではクリエイターとして数々の受賞歴があるそう。

すごい。どんな作品作るのかお話聞いてみたいな。








当日。
約束の時間の5分前にベビーシッターさんが来てくれました。

しっかりとマスクをつけ、洗面所で手を洗うなどコロナ禍を意識したちゃんとした対応。

でもどこか疲れてらっしゃる様子。
笑顔の写真と印象が違う感じもしますが、お疲れなのでしょう。

最初に私たちの名前の呼び方を確認してくれました。

「えと……コオリさん…?」

「あ、小織って書いてサオリって読むんです。サオリです」

「サオリさん。えと…だい…」

「たいちゃんです」

「たい…ちゃん…」

「こちらからはなんてお呼びしたらいいですか?」

「マリさんで…」

「マリさんですね。お名前たしかマリエルさんですよね」

「…? マリ…マリエです」


あれ。マリエルさんじゃなくてマリエさんか。
記憶違いだったかな。まあいいや。
呼び方はマリさん。


特に子どもの扱いになれた風ではなく、
たいちゃんは事あるごとに仕事中の私の方に来るけれど、
一生懸命見てくれているマリさん。

晴れていたら一緒に公園にも行ってみたいと思っていましたが、
雨なのでずっと家で見ていただくことに。


マリさんと打ち解けたいなと思って質問してみました。


「マリさんは、クリエイターなんですよね」


「……?」


「フォトグラファーもしてらっしゃるって」


「……?」


あれ。
私の発音がおかしいから伝わらなかったのかな。

「フォトグラフ…」

と言いながらカメラを撮るジェスチャーをする私。



「私、公立学校で英語の教師してます」

「あ、そうなんですね」


そういえばプロフィールに英語の教師的なこと書いてあったかも。



「旦那さんは日本の方なんですよね」

「(少し笑って)結婚してません」

……。


「あれ。お名前って、田中マリエルさんですよね」

「違います。(完全にフィリピンの名前)です。」




……誰?




え、いや、いいんだけど。
良い方だからいいんだけど。




でも誰?



会社からもらったマリさんのプロフィールを見せてみました。

自分ではないと首を振るマリさん。




ベビーシッター業界の多忙と混乱ぶりが伺えました。


その後もマリさんは一生懸命見てくれました。

たいちゃんを持ち上げてスーパーマンみたいにブーンとやってくれて、

「スーパーダイキ―」など。


名前ずっと間違っとるけどまあええか。


途中でなんかうんこ臭いなと思って、
たいちゃんのオムツチェックしたんですけどうんこが見えなかったので
気のせいかなと思いながら仕事してまして、


なんというか、
マリさんにいていただいた2時間、

私にとっても、たいちゃんにとっても、マリさんにとっても、



恐ろしく長く感じる2時間でした。




マリさんが帰られたあと、
やっぱりうんこ臭いなと思ってたいちゃんのオムツの奥まで見てみたら
うんこがあったので、

ああ、マリさんずっとうんこ臭かっただろうな。
申し訳なかったなと思いました。



ベビーシッター体験コース、
2時間で5000円弱。



体験コースから先にはまだ進めていません。