ネパールの「赤ひげ」は語る (岩波ブックレット)/岩村 昇
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先日行った講演会で、この先生の話が出ていた。

今度ネパールへ行くこともあってちょっくら読んでみた。

ネパールの山奥の村で結核対策で巡回をしていた先生のお話。



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ぼくがいっしょうけんめい訪ねてきても、ああ、きたかという調子で、

村人たちはボケっとしているのです。

どろ小屋のなかで、あるいは木陰で昼寝しているのです。


「あんたら、そうやってなまけているからいつまでも貧乏なんだ、

 日本人をみい、がんばれ」


というと、彼らは、

「フンチャ、フンチャ(ハイ、ハイ)」

とこういうのです。


(中略)


ところが、1976年に、私は原爆症の再発で出血がとまらないようになって、ぶっ倒れてしまいました。

そうしたら、やおら村の人がいいはじめたのです。


「ドクターな、あんたはわしらの2倍、3倍働いて、

 わしらの2倍、3倍腹をへらして、わしらの2倍、3倍めし食うている。

 わしらがやっとこさ栽培して収穫した穀物を、

 わしらはできるだけ消耗せんように、

 農閑期には昼寝をして腹をへらさんように、残しておいた、


 それなのに、来年まかないかん籾の種まで、おまえさんは食いつぶしてしもうたぞ。」


(中略)


草の根の人たちが、生き延びるために身につけてきた生活の知恵を、

主として衣食住の生活の知恵を文化というならば、

どこの文化がすぐれている、

どこの文化がおくれているというのではなくて、

そこにあるべくしてあるのが文化である。

このことに、ぼくははじめて気がついた。


(中略)


いまのいままで、日本からきた医師として、

ネパールの人たちを救ってやろう、教えてやろうとばかり思っていた。


しかし、この国で、この国の人たちの医療にたずさわるからには、

その土地へ行って、その土地の人びとの生活のなかに入って、

その土地の生活の言葉で学ばないかぎり、

いつまでたっても医療はできないということに気がついたのです。



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冬眠する哺乳類は冬眠中に体温が数度まで下がっているらしい。

この状態で動物は、細菌や発ガン物質から守られており、

脳や心臓もエネルギーをほとんど消費せずに眠っているそうだ。


生きていくために一番良い方法を

誰から教わるでもなく、動物は、人は、見つけ出すことができる。


人体も、きっと動物の体も

人間の文明がいくら進歩しても及ばないくらい

ものすごくよくできている。


4日間瓦礫の中に埋まっていた方が今日救出されたというニュースを聞いた。

きっと4日間、エネルギー消費を冬眠状態くらいまで最小限にして

助けを待ち続けたのだろう。


その生命力に感動する。


ひとりでも多くの命が助かりますように。