12月1日より実施している「2017年 冬の募金キャンペーン」。

 

募金のテーマは、

 

ホームレス状態から住まいを得ても、

ひとり旅立つことは避けられないかもしれない現実。

だからこそ、孤独さを分かち合える””と”居場所”を。

 

です。

 

山友会は無料診療、生活相談などをはじめ様々な活動を通して、ホームレス状態という社会的に最も孤立した状態にある方々と絆を築くことを積み重ね、ともに居場所をつくってきました。

 

しかしその一方で、活動を通して出会ってきた方との別れも、多く経験してきたのも現実です。

今年経験した大切な「仲間」との別れを、相談室長 薗部が綴ります。

 

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井口さん(仮名)との待ち合わせの日。井口さんは現れませんでした。

心配になって、井口さんのアパートに向かいました。

 

 

カギがかかったままのドア。

 

裏口に回ると、わずかに開いていた窓から横になった井口さんの姿がありました。

 

酒好きでお酒を飲むとすぐに眠ってしまう井口さん。

とても素敵な笑顔を見せてくれる方でした。

 

きっと酔いつぶれて眠っているだけで、目を覚ましたらまた笑いかけてくれるんじゃないかと思っていました。

 

 

ところが、何度声をかけても返事がありません。

 

 

まさかと思い、救急車を呼びました。

救急隊と警察の方がカギを壊して部屋に入り、井口さんに声を掛けましたが、目を開けることはありませんでした。

 

 

しばらくして、井口さんが亡くなっているのが確認されました。

 

 

※写真はイメージです。記事中の登場人物とは無関係です。

 

亡くなった現実を受け入れられない中で、警察の方の質問に答えながら、

 

「じゃあ、また。」

 

とつぶやき、寂しそうに手を振るいつもの別れ際の姿が頭をよぎりました。

 

気付いてあげられなかった悔しさがこみ上げてきました。

 

 

こうしてまた一人、大切な仲間がひとりで旅立ちました。

 

 

 

大切な仲間だった井口さん。こうした亡くなり方でよかったのかと考えてしまいました…。

 

 

 

井口さんとの出会いは5年前。

 

当時、アルコール依存症患者の回復施設に入所していた井口さんは、施設のスタッフの方と一緒に山友会にやってきました。

 

 

回復プログラムを無事に終了した井口さん。

 

スタッフの方からは、一人暮らしが心配なので生活の見守りをお願いしたいとのご相談をいただいたことで、関わりが始まりました。

 

井口さんは、とても穏やかな印象の方でした。

 

小さな声で恥ずかしそうに「お願いします。」と話してくれたときの、はにかんだような笑顔が忘れられません。

 

たまにお節介なときもあるけれど、世話好きなおじさん達が集まる山友会は、井口さんにとっても居心地のよい場所になるのではないかと思いました。

 

※おじさん・・・山友会を訪れる年配の路上生活者の方や元ホームレスの方のことを、親しみを込めて「おじさん」と呼んでいます。

 

※山友会の事務所前で代表のジャンとおじさん達が談笑する光景。

 

その日から井口さんとの関わりが始まりました。

井口さんには、「毎日でも顔を見せてね」と伝えました。

 

 

「おはようございます。」

 

山友会に顔を出した井口さん。幸せそうなニコニコ顔です。

その顔を見ると、私も心が和みました。

 

たまにお酒を飲んで来ては、事務所前に並べられた椅子に座ったまま寝入ってしまっていた井口さん。

 

アルコール依存症のリハビリも経験した方だったので、このままの状態でよいのかどうか、とても迷いました。

 

しかし、そんな井口さんを、注意したり治療を強制したりするようなことは私にはできませんでした。

 

もちろん、体調を心配してはいました。

 

たまに数日、山友会に顔を出さなくて、とても心配になることもありました。

 

 

それでも、大声を出して騒いだり、他の人に迷惑をかけるわけでもなく、心地よさそうな寝顔でいる井口さんを、治療の名のもとに管理したり束縛したりすることはできませんでした。

 

 

何よりも、何があっても井口さんと最期まで付き合ってあげたかったし、信じていたかった。

 

 

私は、井口さんらしく過ごしてもらえるように見守っていこうと決心していました。

 

体調を崩して二度ほど入院をしてしまった井口さん。

 

※写真はイメージです。

 

 

しかし、入院中はお酒もたばこもやらずに優等生でした。

 

 

退院後は普段の通りの生活に戻ってしまいましたが、山友会に集まるおじさん達が温かく見守ってくれていました。

 

井口さんが顔を出せば、声をかけてくれたり、ときに厳しいことを言いながらも心配してくれていました。

 

 

引っ込み思案で恥ずかしがり屋の井口さんにとっては、人とのつながりや居場所を感じられる場所だったのかもしれません。

 

 

 

他界された後の井口さん。

 

ご親族の方はすでにお亡くなりになられていて、ご遺骨を引き取る方がいらっしゃらなかったので、山友会と関わりのあった方のためのお墓にご遺骨をお納めすることになりました。

 

 

山友会で出会った仲間たちとスタッフ、そして山友会に来る前にいた施設の職員さん、多くの人たちに見守られながら納骨されました。

 

亡くなった時は、残念ながら一人だったけれども、生前このように多くの方たちが深く関わっていました。

 

 

山友会の活動を通して出会ってきたおじさん達の多くは、一人一人いろいろな事情で、家族との縁が途絶えてしまっています。

ホームレス状態からやっとの思いでアパートやドヤでの暮らしに移ることができても、一人暮らしの方がほとんどなので、孤立死は避けられないのかもしれません。

 

だからこそ、孤立死を防ぐことのできるような取り組みに力を入れていかなければならないと、そして、生前の関わりをより豊かなものにしていけるようにしていきたいと、井口さんとの別れを通して思いを強くしています。

 

山友会に集う仲間たちが、お互いを大切な存在と感じられるように。

そして、山友会の日常に広がる居場所が、多くの人達にとっても当たり前のように身近にあるように。

 

そして、すべての孤立死が不幸なものでなかったとしても、経済的に豊かでなかったとしても、人とのつながりは豊かであるようにと、山友会をきっかけに出会ってきた方々との関わりを通して、切に願っています。

 

 

 

(相談室 室長 薗部)

 

 

 

【2017年 冬の募金へのご協力のお願い】

ホームレス状態にある人々が、孤独さに凍える冬の夜を越えて、あたたかな人のつながりの中で春を迎えられるように。あなたのやさしさをわたしたちに託してもらえませんか。

(募金受付期間:~平成30年1月31日)

 

 

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