東京に出てからは 世田谷のH自転車さんに顔を出していました 先輩からも聞いていたのでしたが 結構怖い感じの人でした 自転車 サイクリングはあくまでマイナーで 人気がなかったのです ショップのおやじさんもどこも一風変わった人が多かったと思います ほとんどの学生は就職してしまえば もう 自転車に乗らずに車を買ってしまう 家族がいるのに サイクリングを楽しむという人も少ないわけで 社会人もお店に来ないし 経営はどこも大変そうでした 本格的なスポーツ車というのはとても売れなかったのです 高度経済成長の最後の頃でしょうか 会社は休日は日曜日だけでした ショップのおやじさんは自転車の面白さ 素晴らしさ 世界でどれほど愛好者がいるのか 知り抜いているのですが
日本では全く汗臭い あほらしい 貧乏くさくて間抜けな趣味のように思われているので そのへんにも鬱屈したものがあったと思います
先輩でものすごくバイトをしてお金を貯めて 自転車をオーダーした人がいました サンプレックスのSLJをセットで買ったときは いくらなんで突っ込みすぎだと思ったそうですが、、、フレームのオーダーではT社を選びました 最高のものということですから まあ当然の選択でした
ところが打ち合わせの段になるとT社から フレームにつけるキャリアのダボ穴が多すぎると言ってきたのです サイクルキャンピングは専用の
キャリアが必要です 重いバッグを4つつけるのですから取り付けるためにはダボ穴が必要です T社はそんな恰好の悪いものは作れませんと断ってきたのです 当時カンティブレーキの台座につける前キャリヤのパイプで軽いものがすっきりしていて 好まれていました キャンピング車とは言え 普通はキャリアなしで走っているのでそうなるとダボ穴が無駄に見える T社があんなもの作ったのかといわれるのがいやで断ったのでしょうが 本当にびっくりしました 昨今のブームの前まで経営は本当に苦しかったと聞いていますから、、、まあそんなこだわりの世界がランドナーにはありました 深みにはまると抜けられない どうにも奥深く 不条理で魅力的な、、、それもまたサイクリングの世界だったのです