先日の日曜日にNHKで放送された大林宣彦監督の追悼番組を見ました。3年前にガンの宣告を受けて以来、命を削りながら映画製作に向かう監督の鬼気迫る姿に胸を打たれました。

 

 

私が最初に見た大林監督の作品は恐らく「HOUSE」だったと思います。テレビで見たのですが、その当時ですら、ちょっと安っぽい作りに感じてしまったことは否めません。「スターウォーズ」や「未知との遭遇」など、海外ではリアルなSF映画が作られていましたから。でも大林作品の独特な世界観は、とにかくインパクト抜群でした。

 

 

尾道三部作の第一作「転校生」で、私は完全に魅了されてしまいました。尾道の風景とクラシック音楽との融合。特にチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」の美しすぎる旋律が心に刺さりました。

 

 

「時をかける少女」も大好きな映画です。薬師丸ひろ子主演の「探偵物語」と同時上映(バーター)にせざるを得ないほど、人気薄だった原田知世。でも公開後には圧倒的に「時かけ」の方が評判になり、原田知世は一躍スターダムにのし上がることになりました。確かにこの映画での原田知世は神々しいくらいにチャーミングでした。当時の私は高校2年。今と違って純粋だったので、単純に心を奪われてしまいました。

 

 

考えてみると高校時代に好きになったものは、今でも好きが続いているものが多いような気がします。恐らく自己が確立して価値観が固まっていくのが、高校時代だったのでしょう。

 

 

1980年代は映画も歌謡曲も大変充実している時代でした。たとえば「時かけ」の翌年には宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」が公開されています。映画はもちろん、主題歌を歌った安田成美も好きになったことは言うまでもありません。

 

 

実写の大林、アニメの宮崎は今でも私の中では日本映画の二大巨頭です。感受性の強い高校時代にこのような映画監督に出会えたことは、とても意義深いことだと思います。大林監督は宮崎監督の3歳年上。ともに幼い時に戦争を経験されていて、反戦映画的な作品も作られています。

 

 

監督が作りだした映画はもちろん、監督の語り口も大変好きでした。温かみがあるとともに説得力のある話し方は、私の憧れです。

 

 

大人になってから、尾道、竹原といったロケ地巡りをしたほどの大林映画ファンだった私ですが、90年代後半以降の作品は一切見ていません。これから改めて見直していきたいと思っています。

 

 

遺作となった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は410日に公開予定だったそうですが、新型コロナの影響で延期されてしまいました。奇しくもその410日が大林監督の命日になってしまったというのは、とてもドラマティックです。監督は亡くなりましたが、監督の魂は、この映画に生き続けます。

 

 

「映画で歴史は変えられないが、未来は変えられるかもしれない。」

 

 これが映画の中で監督が伝えたかったことだそうです。

 

 

ところで、大林監督は、黒澤明監督の「夢」という映画のメイキングを作られています。巨匠クロサワの遺志を継いだのがオオバヤシだったのでしょう。ではオオバヤシの魂を継いでいくのは誰なのでしょうか。