突然の声

 

 山の尾根伝いに道が走り、その両脇に張り付くように家が立ち並んでいる様を、山の上の仏塔からぼーっと眺めていた。もっと山奥の尾根伝いの道をバイクで走っていると、まるで空に投げ出されるような感覚を味わえる。特別な何かがある村ではない。不便なことなど山ほどある。けど、この村での日々は気に入っていた。

 

 あと10日ほどでこの2回目のタイ滞在も終了する。この村での生活はあと数日を残すのみだ…

 

「タイに移住するか」

 

そんな声が頭の中に響いた。そんなことは今まで一度も考えたことはなかった。現にこの2回目のタイ旅行を終えたら、日本で就職活動する気満々でいくつかの転職エージェントに問い合わせメールを出してあった。日本で働いて、年に1〜2回海外旅行できたらOKと考えていた。だからこそ、自分でも移住なんてことが頭に浮かんだことに驚いた。驚きはしたが、そのあとが早かった。移住の可否を検討することなく、何が必要か、どうしたらいいかを考えていた。幸い日本に縛られる必要はほぼなかった。結婚していたわけでもなければ、そんな対象の人すらいなかった。まぁ、いたら仕事も辞めていなかっただろうが。その上、絶賛無職中の身。長男ではあったがそんな事気にするような人間でもない。実家にいる父母はそれぞれにまだまだ元気。表だった健康に関する不安も皆無。

 

 できるかどうかを検討するより、実現に向けて最短距離を考えてそこをひた走ることのほうが性に合っていた。言葉は住みながらなんとでもなる、住むところも同様。食事も全く問題ない。仕事をどうするかはおいおい考えればいい(ざっと調べて仕事がないわけではないことは確認済み)。

 

1.とりあえずの移住資金として100万円貯める

2.滞在に必要なVISAについて調べる

 

ここまでVISA取得は一切していなかった。30日以内であれば日本人はVISAはいらない。30日以上であっても、今回の訪タイのように、30日経過する前に一旦タイを出国して、再入国すれば再び30日の滞在許可が与えられる(当時のレギュレーション)。取り合えず移住直後しばらくは山奥の村に住もうと思っていたが、それがいつまでかも不明。山奥のこの村からなら3時間もあれば、その手間が十分こなせる。タイで仕事をするようになったら、そうやすやすとはいかないだろうことはすぐに思い立った。タイ移住情報を漁っていけば、そのあたりのことはなんとかなるであろうと軽く見ていた。

 

 つまり、目下一番考えて実行すべきことは、できるだけ短期間に当面の移住資金100万円をいかに作るか、そしてそれを実現させるかということだった。考えがそこに至ると、もう頭の中は近い将来に自分がタイ移住を完了させることだけになっていた。

 

 

 

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